2009年公開。クエンティン・タランティーノ監督による6作目。
ブラッド・ピットとの初タッグという事もあり、興行収入的にはタランティーノ作品史上過去最高を叩き出しています。
完全フィクションのエンターテイメント作品ですが、第二次世界大戦中のユダヤとナチスを描いているので、ヒトラーやゲッベルスなどが出てきますよ。なんていうか、プロパガンダ映画を小馬鹿にしたようなプロパガンダ映画ですw
本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想、視聴方法なども記載しています。
もくじ
作品情報
アカデミー賞ではノミネート8部門ですね、受賞したクリストフ・ヴァルツは他の映画賞でも数多に評価されました。
- 助演男優賞 – クリストフ・ヴァルツ[受賞]
- 作品賞
- 監督賞 – クエンティン・タランティーノ
- 脚本賞 – クエンティン・タランティーノ
- 撮影賞 – ロバート・リチャードソン
- 編集賞 – サリー・メンケ
- 録音賞 – マイケル・ミンクラー、トニー・ランベルティ、マーク・ウラノ
- 音響編集賞 – ウィリー・ステイトマン
ちなみにタランティーノ作品一覧はこちら↓
- レザボア・ドッグス
- パルプ・フィクション
- ジャッキー・ブラウン
- キル・ビル Vol.1
- キル・ビル Vol.2
- デス・プルーフ in グラインドハウス
- イングロリアス・バスターズ
- ジャンゴ 繋がれざる者
- ヘイトフル・エイト
- ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
あらすじ
1941年、第二次世界大戦中・・・ユダヤ・ハンターと呼ばれるナチス親衛隊のランダ大佐は、あるユダヤ人一家をマシンガンで皆殺しにするが、娘のショシャナだけは何とか逃げ出す事に成功した。1944年、ショシャナはエマニュエルと名前を変え、パリで若き女性映画館主をしていた。彼女に好意を寄せるドイツ軍の英雄フレデリックは、彼女の映画館でプロパガンダ映画「国家の誇り」のプレミア上映会をすると決めてしまう。一方で日々ドイツ人を血祭りにあげていたレイン米陸軍中尉は、ナチスの要人が集まるプレミア上映会で、皆殺しの計画を進行するが果たして・・・。
キャスト、スタッフ
監督・脚本 – クエンティン・タランティーノ
製作 – ローレンス・ベンダー
撮影 – ロバート・リチャードソン
編集 – サリー・メンケ
VFXデザイナー – ジョン・ダイクストラ
特殊効果メイク – グレゴリー・ニコテロ
ショシャナ・ドレフュス(エマニュエル・ミミュー) – メラニー・ロラン
ハンス・ランダ親衛隊大佐 – クリストフ・ヴァルツ
フレデリック・ツォラー国防軍一等兵 – ダニエル・ブリュール
ヘルシュトローム親衛隊少佐 – アウグスト・ディール
ヨーゼフ・ゲッベルス宣伝大臣 – シルヴェスター・グロート
アドルフ・ヒトラー総統 – マルティン・ヴトケ
アルド・レイン中尉 – ブラッド・ピット
ドニー・ドノウィッツ – イーライ・ロス
ヒューゴ・スティーグリッツ – ティル・シュヴァイガー
ブリジット・フォン・ハマーシュマルク – ダイアン・クルーガー
マルセル – ジャッキー・イド
地下酒場の主人 – クリスチャン・ベルケル
無線の声(司令部) – ハーヴェイ・カイテル
ナレーション – サミュエル・L・ジャクソン
ハーヴェイ・カイテルとサミュエル・L・ジャクソンには気づきませんでしたw
今作品では何と言ってもクリストフ・ヴァルツです!この人が実質主役と言っても過言ではありません。当初、タランティーノ監督に「自分には荷が重い」みたいな事を言ったらしいですが、むしろ適役だったと思います。素晴らしい怪演でしたね・・・。
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 冒頭のシーンの緊張感は異常!
- クリストフ・ヴァルツが作り出す品の中の狂気
- 消化不良はあれど、やはり面白いタランティーノ
一気に観客を飲み込む素晴らしいフック
クリストフ・ヴァルツが怖すぎる!
つかみとなる冒頭のフックが失敗している映画は名作になりにくいと僕は思っているが、今作品の冒頭20分は非常に素晴らしいものになっている。あらすじにも書いたあるユダヤ人一家をマシンガンで皆殺しにするシーンがまさにこの冒頭なんだけど、それはまるで首元にナイフをつきつけられているかのような恐怖を観客にすりこんできた。
その一部始終を掌握しているのがクリストフ・ヴァルツ演じるハンス・ランダ大佐・・・口から出てくる言葉の数々はどれも上品なのに異常に怖い雰囲気をまとっている。
タランティーノ作品では、映画の本筋と全く関係ない無駄話が多く、それが面白いので変なセリフが印象に残ったりするが、今作品ではその無駄話がほぼない。その代わり、クリストフ・ヴァルツによる怖い会話で緊張感が常に最後まで続いている。ある意味タランティーノらしくない映画だ。
今作品は同監督のヘイトフル・エイトやキューブリックのシャイニングのような、ずーっとハラハラするサスペンス感があるんだけど、この映画の・・・いや、クリストフ・ヴァルツのすごい所はハラハラしすぎて逆に笑えてきてしまうのだ。
中盤のショシャナとデザートを食べるシーンも、ただ会話してるだけなのに胃がキリキリするような感覚になるし、終盤のアルド・レイン中尉との会話シーンも狂人と話してるようで本当に面白い。
が、何よりも冒頭のフック20分・・・これは映画史に残るレベルだと僕は思ったよ。
消化不良になってしまう原因
こんな素晴らしい冒頭から始まるんだから、相当面白いだろ!
と思って観ていたが、正直なところ・・・僕は若干の消化不良だった。多分そういう人多かったんじゃないかな?生粋のタランティーノファンでも「つまらなくはないけど・・・うーんw」と苦笑いした人が多いようだ。理由はタイトルがイングロリアス・バスターズだから。
プロモーションの予告動画を観ればわかるけど、ヒトラー率いるナチスとブラピ率いるチンピラ軍人?みたいな人達が戦うのか??と思わせる作りになっている。そこに主人公であるショシャナの復讐が絡み合うような雰囲気・・・確かにストーリーはあながち間違っていないんだよね。だけどいざ観てみると、イングロリアス・バスターズとショシャナの交わりは皆無で完全に独立した2つのストーリーだし、その部分の説明が端折られてるせいで、違和感を感じてしまうんだと思う。
具体的な個所をあげると、終盤映画館で火の手があがった時・・・これを仕掛けたのはショシャナ達だったけど、それを知らないはずのバスターズの2人が何も疑問に持たず銃をぶっ放しているシーンだ。かなり雑に感じてしまった。
タランティーノ監督は今作品の脚本を8年くらい練りに練っていたらしく、その為かなり膨大なストーリーになっていたそうだ。自身でもこれは映画に収まらないかもしれないといった発言もしてるらしく、ドラマにする企画さえあったくらい。つまり今作品のストーリーは完全な状態ではなく、本来メインに描くはずのイングロリアス・バスターズが脇に回ってしまっているのが消化不良の原因と言えるだろう。
でもやっぱりタランティーノすごいと思えるのは・・・シンプルにそこらの映画より全然面白いんだよね。
クリストフ・ヴァルツを楽しむ映画
確かに今作品はダメ出しをしたくなる部分もあるが、それでも面白いのは間違いない。
その理由はクリストフ・ヴァルツの怪演のおかげと言っていい。この人の表情というか顔つきって、どんなキャラクターでもいけちゃいそうだよねwまさにヒール!って顔でラスボスにおきたくなる感じなんだけど、どこか雑魚キャラ感もあるというか・・・失礼になるかもしれないけど顔が漫画的というか・・・ハリウッドだとケヴィン・ベーコンのような感じ!かなり抽象的な表現を並べ立てたけど伝わっただろうかw
後半の「ビンゴ~!」の言い方とかムカつくでしょ?でも真似したくなっちゃう感じ・・・うまく伝えられそうもないから観て!w
今作品は観客にクリストフ・ヴァルツ演じるハンス・ランダ大佐への苛立ちを積み重ねていって、ラストシーンでカタルシスを感じるように作ったんだと思うけど、それは正直失敗していると思う。ただ、そのラストシーンを含めクリストフ・ヴァルツがキレッキレの演技をしてくれているからちゃんと面白いし絶対観た方がいい。
誤解してほしくないのはタランティーノ監督の他作品と比較すると見劣りするだけで、映画全体で言えば全然面白いからね。ちなみにタランティーノ作品でアカデミー賞を受賞した事がある俳優は・・・クリストフ・ヴァルツ、この人だけ!って、これはこれでちょっと納得いかないけどねw
とにかく今作品はクリストフ・ヴァルツを観る映画だよ!
評価、視聴方法
シネフィルがタランティーノを愛する理由
ネタバレをできる限りしないように書いたのでラストについてはあまり触れませんでしたが、タランティーノ監督は今作品で史実を基にして、史実とは全く違うストーリーを描いています。これってまさにプロパガンダ映画なんですよねw
特に戦争を題材とした映画は、どうしても賛否を呼ぶものになってしまいます。例えばフォレスト・ガンプなんて普通に観ればよくできたヒューマンドラマですが、アメリカでは当時結構叩かれました。理由はベトナム戦争を含めアメリカを美化しているからです。ドニー・イェンのイップマンなんかも僕は大好きですが、あれも反日プロパガンダじゃないか?なんて言われましたね。
僕自身は政治は政治で面白いと思いますが、エンターテイメントで政治を語る気はなくて、特に映画はエンタメの頂上に君臨する文化だと思っています。つまりプロパガンダだろうが何だろうが、面白ければ正義なんです。
タランティーノ監督は悪ふざけのようなプロパガンダを今作品で実現していますが、僕には民族差別でワーキャー言ってる世界中の人達のケツを蹴とばしたように見えました。「とりあえず笑っとけよw」という精神性を持つタランティーノ監督の事が、僕は大好きですね!
長生きして、これからも沢山の名作を撮ってください^q^
「イングロリアス・バスターズ」の視聴方法
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ブラッド・ピットが気になったなら出世作のセブンなんていかがでしょう?こうしたハラハラする映画が観たいならサスペンスのジャンルをオススメしますよ!
では、良き映画の時間をお過ごしください。