映画「ヘイトフル・エイト」あらすじ、感想【伏線も曲も秀逸!傑作ミステリー】

ヘイトフル・エイト

2015年に公開。奇才クエンティン・タランティーノ監督の8本目となる密室系ミステリー作品。

渋いタランティーノ節がさく裂していて映画好きにはたまらない作品となっています。相変わらずの音楽センスに緩急の巧さ、さらに今作品はタランティーノ作品でも一番と言っていい程の重厚さがあったように思います。

本記事ではあらすじや感想の他に視聴方法も書いているので、すぐに鑑賞したい方は目次でジャンプしちゃってください。

ジャンル:クライムミステリー
作品時間:168分

作品情報

  • 作曲賞 – エンニオ・モリコーネ[受賞]
  • 助演女優賞 – ジェニファー・ジェイソン・リー
  • 撮影賞 – ロバート・リチャードソン

もっと受賞してもおかしくない良作だと思うんですけどね。

本作品は撮影は65mmフィルムで撮られており、公開にあたっては70mm映写機の導入支援も行われましたが、残念ながら日本では現状70mmフィルムを公開できる映画館がなく編集版で上映される事となりました。ちなみに70mmフィルムや65mmフィルムとは昔映画撮影に使われていたフィルムのサイズの事で、縦横の比率が違いワイドスクリーン規格なので、よりダイナミックに感じる映像になります。

タランティーノ監督も日本で70mmが上映不可という事にかなり失望したらしく、今作品では日本でのプロモーション来日はしていません。なんと残念な・・・

70mm作品だと途中でリール交換をするので15分程のインターバル(休憩)が入り、その間に観客がトイレにいったり「この後どうなるんだろう?」なんて雑談したりするそうです。残念ながら僕も世代ではないので経験がありません。ですが、いつか人生で1度は映画館で70mm作品を観てみたいものです。

あらすじ

猛吹雪の夜、ロッジに閉じ込められた7人の男とひとりの女。全員がワケありで見るからに怪しげだが、特に目を引くのは手錠で腕をつなぎあった男女。男は賞金稼ぎで、1万ドルの懸賞金のかけられた重罪犯でお尋ね者の女を連行する途中だった。ロッジに流れる不穏な空気から男は、この中に女の仲間がいるのではないかと警戒する。やがて偶然集まったかに見えた8人の過去が重なりはじめ、互いの疑心暗鬼が頂点に達したとき最初の死体が出る。しかしそれは予測不能な密室殺人事件のはじまりに過ぎなかった・・・。

キャスト、スタッフ

監督・脚本 – クエンティン・タランティーノ
製作 – リチャード・N・グラッドスタイン、ステイシー・シェア、シャノン・マッキントッシュ
製作総指揮 – ジョージア・カカンデス
音楽 – エンニオ・モリコーネ

マーキス・ウォーレン – サミュエル・L・ジャクソン
ジョン・ルース – カート・ラッセル
デイジー・ドメルグ – ジェニファー・ジェイソン・リー
クリス・マニックス – ウォルトン・ゴギンズ
ボブ – デミアン・ビチル
オズワルド・モブレー – ティム・ロス
ジョー・ゲージ – マイケル・マドセン
サンディ・スミザーズ – ブルース・ダーン

ティム・ロス、マイケル・マドセンと並ぶとどうしてもタランティーノ伝説の1作目であるレザボア・ドッグスがよぎりますね!

ちなみに美術監督にはキル・ビル以降、世界で引っ張りだこの種田陽平が手掛けています。

※ここからはネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • セリフがいちいちかっこいい
  • 圧倒的な不安感を演出したエンニオ・モリコーネ
  • 中盤以降の畳みかけはやっぱりタランティーノ

もはや小説、役者陣の会話だけで楽しめる

映画好きでタランティーノ作品を1本も観た事がないという人はまずいないだろう。

一般的にはどうなんだろう?逆にタランティーノ自体いまいち知らないとかまであるのかな。意外にサラっと観れるし映画を趣味にしようと悩んでる人にはオススメの入り口なんだけどね。ただ、どの作品も古典のような手法が使われたり、セリフ回しも過去のレジェンド作品のオマージュが散りばめられていたりと、映画好きにも嬉しい作風なのがまたいい。

今回のヘイトフル・エイトも極上の密室系ミステリーとしてシンプルに面白い作品だった。

序盤からサミュエル・L・ジャクソンを中心に落語のようなセリフ回しが展開し、登場人物の紹介と状況、背景を綺麗に描いていく。そして気が付けば絶対あかん事が起きるなコレ・・・と思わせる不安感が広がる。この嵐の前の静けさみたいな感じが退屈に感じてしまう人もいるかもしれないが、どうか騙されたと思ってジックリ観て欲しい。

はっきり言ってセリフ回しだけでこんなにも楽しませる監督ってそうそういないからだ。

しかも中盤からは映画のテンポ、空気をガラっと変えてきて一気にギアをあげてくる。しっかりと積み上げてきた綺麗な土壌(序盤)があるからこそなんだけど、とうとうきたか!!始まるのか!!と観客のテンションをゴリゴリに引き上げる流れはさすがの一言。もちろんセリフの一つ一つは全て中盤以降に紐づいているし、加えてカート・ラッセルの存在感やジェニファー・ジェイソン・リーの表情など、役者陣の面白い掛け合いは映画史屈指といっても過言ではない。

この綿密な布石や設定を積み上げていくセリフ回しが、ストーリーの根幹に触れ始めた時・・・恐ろしいほど重厚で面白いストーリーが浮き上がってくる。

会話だけでボルテージをあげるとか、やっぱりタランティーノは世界一の映画バカであり天才だ。

エンニオ・モリコーネの作る音

エンニオ・モリコーネは西部劇映画の音楽を数多く手がけてきたレジェンドだ。

映画ではたまに挿入歌やBGMがあまりにも映像にフィットしすぎていて、観客が意識もせず聞き流している時がある。このエンニオ・モリコーネは今作品においてかなり”丁度良い“音を作っていて、それが時に自然すぎて気付かない時もあれば、物語を盛り上げる一役を担っている時もある。特に映画の冒頭から流れているBGMは映像なんかなくても不安になるくらいエグい。ワクワク感とハラハラ感が同時に押し寄せてくる素晴らしい音源だ。

あと個人的には中盤のサミュエル・L・ジャクソン演じるマーキスが、ブルース・ダーン演じるサンディ・スミザーズ将軍を煽り散らかすシーンは何回も観たくなるね。もちろん役者の演技や薄暗い映像など全てが絡み合って完璧だが、中でも挿入されているBGMは下手な小手先のテクニックなど一切なし、静かな会話シーンにも関わらず今作品の大きな見せ場の1つとなっている。

面白いのは、2013年・・・つまりこの映画公開より3年位前にエンニオ・モリコーネは、タランティーノにイングロリアス・バスターズジャンゴ 繋がれざる者などで楽曲使用を許可してきたが、もう一緒に仕事をしたくないと告白していて、しかも「一貫性を欠いた方法で映画の中で楽曲を使う。作曲家にとって、あるまじき扱いだ」と、タランティーノの映画音楽の使用の仕方にも文句言っているんだ。

ちなみにこれまでは既にある楽曲を提供してきただけだが、今回はモリコーネとタランティーノが正式にタッグを組んだ!一体どうやって口説き落としたんだかw

そんな嫌っていたのに、今作品では圧倒的な不安感を演出する音を作ってきたエンニオ・モリコーネ・・・恐ろしいお爺ちゃんだね。(1928年生まれwww)

70mmフィルムで観たらどんなに圧巻か

前述した通り、今作品は本来65mmフィルムで撮影され70mmでプリントされて上映された。

ちなみに差分の5mmは音、サウンドトラックだね。今作品はウルトラ・バナビジョン70という撮影方式が使われていて、なんと50年ぶりだそうな・・・タランティーノ監督の映画愛がすごすぎるよね。で、これの何がすごいのかって話なんだけど、実は僕も人生で1度もこの撮影方式の作品を映画館で観た事がないんだ。

でも想像したらすっごくワクワクしてしまう。

ただ横長に長いわけじゃなくて、人間の網膜と同じ146°の角度に設定されたスクリーンに映し出される映像・・・。今作品ではコテージ内のセットや美術、そして冒頭に出てくる6頭立ての馬車など、ワイドスクリーンで映える為の仕掛けがふんだんに散りばめられている。中盤の雪景色のシーンなんて圧巻なんだろうな・・・。

画像って大きくすればするほど、つまり引き延ばせば引き延ばすほど画素次第で荒くなるよね?ウルトラ・バナビジョン70だと画質そのままでワイドスクリーンになると思えばいい。つまり恐ろしいほどリアルな映像になるわけだ。と、説明したって「そんだけ?」となる人も多いかもしれないけど・・・。

でもさ、現存する映像エンターテイメントでこんな体験ができるものって他にある?映画館ならではじゃない?

タランティーノ監督も本来映画とは映画館のでっかいスクリーンで胸をワクワクさせながら観る・・・いや、体感するエンターテイメントなんだ!と世に言いたかったんじゃないかなと僕は思う。が、日本では70mmフィルムで上映できる映画館がもう存在しない為、今作品はデジタル映像での上映となってしまった・・・。すごく残念ではあるけど、わざわざこんな古き手法で撮影したタランティーノ監督の映画愛は嘘偽りないというのはわかるでしょ?

というわけで70mm映像で鑑賞はできないけど、それでも今作品が内容自体が最高の傑作ミステリーだという事は間違いないよ。

評価、視聴方法

タランティーノ作品は全部面白い

クエンティン・タランティーノという名前は映画好きじゃなくても聞いたことはあると思います。

日本だと栗山千明が売れるキッカケとなったキル・ビルがやはり一番有名なんでしょうかね。はっきり言ってどれも面白い作品なんですが、タランティーノ作品は映画好きの中でも一番の傑作は?と聞かれると意見がわかれます。もはや好みなんですよね。個人的にはどれだろ・・・結局パルプ・フィクションかな?うーんwかなり迷います。ジャッキー・ブラウンもかなり好きなんですよね。とにかく好みはあれど、全作品面白いのは保証します!

1作目のレザボア・ドッグスなんて冒頭から10分だけでも観てみてください。映画史上屈指のオープニングなので。

「ヘイトフル・エイト」の視聴方法

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ちなみに2019年8月30日、ディカプリオ x ブラッド・ピットが共演する新作ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドが公開しましたよ!

是非これを機にタランティーノ作品を観直してみるのは如何でしょう?

では、良き映画の時間をお過ごしください。