2007年公開。クエンティン・タランティーノ監督による5作目です。正式名称「デス・プルーフinグラインドハウス」
グラインドハウスとはB級映画やポルノ的なエクスプロイテーション映画などを、深夜に2,3本上映する映画館の事で、昔は日本にも似たような所があってチープなポルノ作品などが垂れ流されていました。僕は生まれも育ちも池袋なんですが、北口出てすぐのところにありましたねw
今作品はクエンティン・タランティーノ監督が仲良しのロバート・ロドリゲス監督と一緒に、そんな昔の映画を体感できたら面白いんじゃないかってコンセプトで作られました。(ちなみにロバート・ロドリゲス監督作品はプラネット・テラーというホラー映画)これら本編とは別に、わざわざグラインドハウスで昔流れていたような架空の映画の予告編まで作って一緒に上映しました。
細かい事を抜いて説明すると、タランティーノ作品の中で1番尖った映画・・・ですかねwめちゃくちゃ面白いアクションコメディになっています。
本記事ではあらすじ、キャスト情報の他に個人的な感想、視聴方法なども記載しています。
もくじ
作品情報
B級映画的なものをあえて狙って作っているので、そもそも高尚な映画賞など狙ってなかったでしょうけど、一応カンヌでは選考作品として上映されました。僕は個人的評価としておすすめ度を★3つけましたが、クライマックスの面白さは★10じゃ足らない位笑える映画ですw
ちなみにタランティーノ作品一覧はこちら↓
- レザボア・ドッグス
- パルプ・フィクション
- ジャッキー・ブラウン
- キル・ビル Vol.1
- キル・ビル Vol.2
- デス・プルーフ in グラインドハウス
- イングロリアス・バスターズ
- ジャンゴ 繋がれざる者
- ヘイトフル・エイト
- ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
あらすじ
テキサス州オースティンでラジオDJをしているジャングル・ジュリアは女友達のジャナ、アーリーンらとテキサス・チリ・パーラーというバーで夜な夜な飲み明かしていた。そこにスタントマン・マイクという男が現れ、3人はマイクと談笑していたが、帰路の途中でマイクの運転する耐死仕様(デス・プルーフ)の車と正面衝突し、事故に見せかけて殺されてしまう。凄惨な事件から14か月後・・・テネシー州レバノンでマイクは、またもある3人組の女達に目を付ける。
キャスト、スタッフ
監督・脚本・制作 – クエンティン・タランティーノ
スタントマン・マイク・マッケイ – カート・ラッセル
ジャングル・ジュリア・ルカイ(ラジオDJ) – シドニー・ターミア・ポワチエ
シャナ・バナナ(ジュリアの親友) – ジョーダン・ラッド
アーリーン(バタフライ) – ヴァネッサ・フェルリト
パム(ジュリアの昔馴染み) – ローズ・マッゴーワン
ウォーレン(テキサス・チリ・パーラー店主) – クエンティン・タランティーノ
ゾーイ・ベル(スタントウーマン、本人役) – ゾーイ・ベル
キム(スタントウーマン) – トレイシー・トムズ
アバナシー(メイク係) – ロザリオ・ドーソン
リー(女優) – メアリー・エリザベス・ウィンステッド
ゾーイ・ベルはキル・ビルでユマ・サーマンのスタントを務めた本物のスタントウーマン女優です。どことなく眼力や表情が似てますよね!
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- タランティーノ節”無駄話”がてんこもり
- 粗雑なB級映画風の巧妙な構成
- ラスト20分のカーチェイスは映画史上最高峰!
タランティーノ作品の中でも随一を誇る無駄会話シーン
もはやタランティーノ作品の代名詞ともいえる無駄話シーン
今作品では女達の本当にしょうもない会話が延々と垂れ流される。やれ最高のSEXしただのキスが興奮しただの・・・ほとんど本筋に関係がない、お下劣極まりない低俗な会話だ。シネフィルはタランティーノ作品に慣れてるから楽しめるものの、あまり映画を観ない人には前半30分を耐えられないかもしれない・・・ぶっちゃけつまらないと判断されても仕方ないレベルである。その上、今作品はグラインドハウス映画をオマージュして作られている為、わざとシーンの繋ぎが変だったり、粗雑なフィルム映像っぽく撮られていたりするから、余計ライト層には辛いかもしれない。
でもどうかタランティーノ監督を許してあげてほしい・・・。もし途中で観るのをやめてしまった人がいたら、どうかどうか!最後まで観てあげて欲しい。
この監督は本当に映画が好きな方で、中でもこうしたB級モノが好物らしく、よく自身の作品でもオマージュしていたりする。恐ろしい事に世の中のシネフィルでさえ・・・いや、映画評論で食っている人達でさえ「元ネタ知らんわ」って事があるレベル・・・本当に頭のおかしい監督なんだ。
あえて雑に作られた映像も、悪い意味で印象的な無駄会話シーンも慣れてないと本当にきついと思うが、それでも何故最後まで観て欲しいかというと・・・その全てがクライマックスを楽しむ為のエッセンスになっているからなんだ。
最後は腹抱えて爆笑できるはずだから、世界一映画バカなタランティーノ監督にどうかつきあって観てあげて欲しい。
あえて雑に作られた巧妙な展開
はっきり言って今作品はクライマックス20分を楽しむ映画だ。
それまでの約1時間半は、B級映画風に作られた主人公スタントマン・マイクを中心とするキャラクター紹介と言っていい。例えば1つ目の山場になっている交通事故を装った殺人シーンはスタントマン・マイクの異常性の紹介に過ぎない。それ以外はB級映画あるあるをやっているだけ、粗雑なお色気シーンなんかがまさにそれ。あと単なる交通事故を、実はマイクによる計画された殺人事件なんじゃないかと、かなり的を射た推理を展開してた警察官がいたけど、この説明しすぎ感もあえてやっており、まさにB級映画なのだ。
ざっくり言えばクソ映画をわざと作っているわけだけど、タランティーノ監督のすごいところは、クソ映画のはずなのに全然観る事ができてしまうんだ。特に音楽・SEの使い方は相変わらずお上手で、何なら観てられるどころか引き込まれてしまう。
特に感心したのは、後半の楽しく談笑しているゾーイやキム達の無駄な会話の内容が、あまり耳に入ってこなくなる点・・・彼女たちもこれからマイクに惨殺されてしまうんじゃないかという不安感が常にあり、そわそわしながら観てしまったwそしてクライマックス20分・・・やりすぎに思える程のカタルシスが襲ってくる。
確かに大半のシーンはB級映画的に作られてるけど、構成は超一級品である。
映画史に残るカーチェイスシーン
ラスト20分まで辿り着いた方は誰もが笑ったんじゃないかな?
あまり映画を観ないライト層でも、気付かない内に笑顔になってなかった?今作品のカーチェイスシーンは、あえて粗雑に作られていた前半のおかげでリアリティが増幅されていて、異常なまでにハラハラできてしまう。
どういう事かというと、CGを駆使したアクションやカーチェイスシーンは他の映画でも沢山あるよね?でも今作品は1時間半もの間、観客に「これはB級映画です!」と刷り込んでいる為、カーチェイスもCGではなく本当にやってる感が出まくっているんだ。確かにゾーイ・ベル自体本物のスタントウーマンなんだけど、ワイヤーなどの命綱はあるだろうし、それら全ては最新技術で消されていると思われるけど、観ている観客にはそんな事を思わせないよね。これが素晴らしい。
加えてカーチェイスシーンの中の後半部分・・・攻守が入れ替わってからは極上のコメディだ。今作品のタイトルは「デス・プルーフ(耐死仕様)」であり、マイクが乗っている車はカースタント仕様で事故っても運転手が死なない位、頑丈で安全なんだよね・・・。
そんなマイクがめちゃくちゃ大声で必死に「ごめんなさい!」って叫んだ時はどうしたって笑ってしまうw運転しながらキムが煽るシーンなんか、キューブリック監督のフルメタル・ジャケットに出てくるハートマン軍曹にも負けないほどイカれてるし、セリフだけでそこらのアクションよりも痛快感がある。
確かに僕はおすすめ度★3にしたけど、ライト層にはきついかもしれないと思ったからだ。はっきり言って、これ程面白いクライマックスの映画はそうそう出会えるものじゃない。
映画にハマってきた自覚があるなら、迷わず観るべき一作である。
評価、視聴方法
音楽も最高!期待を裏切らないタランティーノ監督
数年ぶりに観直しましたが、何回観ても爆笑しますねw
カート・ラッセルのにじみ出るB級感はなんなんでしょう・・・演技は文句ないし存在感も抜群なのに、大作じゃなくこういう泥臭い映画で見たくなるというか・・・素晴らしい役者だと思います!それと改めて観て思ったのは、ゾーイ・ベルの身体能力含めた演技力ですね。昔観た時はカート・ラッセル以外あまり意識して観ていなかったのもあるんですけど、最高の女優だと思いました。
あと特筆すべきはやはり音楽・・・エンディング曲であるAPRIL MARCHの「CHICK HABIT」は耳に残りますよねwちなみに原曲は夢見るシャンソン人形で有名なフランス・ギャルの「娘たちにかまわないで (Laisse Tomber Les Filles)」です。
個人的にはエンディング前のカーチェイスシーンの曲が大好きで、観た事はないんですが1976年のイタリア映画Italia a mano armataのメインテーマだそうです。
最高にテンションのあがる曲ですよねw
タランティーノはいつも選曲センスが素晴らしい大好きな監督の1人ですが、映画を10本作ったら引退するみたいな事を言っているそうで・・・おふざけでもいいから、いつまでもくだらない映画を作っていて欲しいですね!
「デス・プルーフ in グラインドハウス」の視聴方法
Amazonプライムなら年間プラン4,900円(税込)または月間プラン500円(税込)で映画の他にも松本人志のドキュメンタルやアニメ、primeオリジナル作品なんかも見放題なのでお得ですよ!
「デス・プルーフ in グラインドハウス」をamazonで観る
タランティーノ映画にハマったら、まずはレザボア・ドッグスとパルプ・フィクションをオススメします。B級的な映画を観たいならフレディvsジェイソンなんか最高ですよ!
では、良き映画の時間をお過ごしください。