篠田正浩監督のえげつない名作「少年時代」
何度観ても素晴らしい・・・!と胸打つ映画です。僕が初めて映画館で観た作品で、小学生の頃なのに今でもかなり強い印象が残っています。
ちなみに有名な井上陽水の曲「少年時代」はこの映画の主題歌。というか今作品は、この名曲を聴く為に観ると言っても過言ではありませんw
観終わったら笑顔なのに涙が出る感じ、古き良き邦画。
[ジャンル]戦争、ヒューマンドラマ[作品時間]117分
[公開日]1990年8月11日
- キャスト情報が知りたい!
- どんな映画なのか知りたい!
- 視聴方法を知りたい!
もくじ
作品情報
受賞歴
- 作品賞
- 最優秀監督賞 – 篠田正浩
- 最優秀脚本賞 – 山田太一
- 最優秀音楽賞 – 池辺晋一郎
- 最優秀美術賞 – 木村威夫
- 最優秀録音賞 – 西崎英雄
- 優秀主演女優賞 – 岩下志麻
- 新人俳優賞 – 藤田哲也
- 優秀撮影賞 – 鈴木達夫
- 優秀照明賞 – 水野研一
- 日本映画大賞
- 脚本賞 – 山田太一
- 音楽賞 – 池辺晋一郎
- 録音賞 – 西崎英雄
1990年の夏公開、当時は興行的に決してよくなかったそうですね。しかし日本アカデミー賞では主要部門から根こそぎ受賞し、その他の映画賞でも30部門以上を受賞したモンスター作品です。
あらすじ
昭和19年の秋、東京に住む小学5年生の風間進二は太平洋戦争の戦局の悪化に伴い、富山県の田舎に縁故疎開することになった。そこで進二は子どもたちのリーダー格である大原武と親しくなるが、彼は学校では性格が変わったように進二に辛くあたるのだった・・・。終戦間際、友情を育んだ2人の関係は果たしてどうなっていくのか?
スタッフ・キャスト
[製作] 藤子不二雄Ⓐ
[監督] 篠田正浩
[脚本] 山田太一
[音楽] 池辺晋一郎
[撮影] 鈴木達夫
[編集] 長田千鶴子
[主題歌] 井上陽水「少年時代」
[風間進二] 藤田哲也
[大原武] 堀岡裕二
[風間修作] 細川俊之
[風間静江] 岩下志麻
[風間秀一] 鈴木武次郎
[風間まさ] 鈴木光枝
[風間辰男] 河原崎長一郎
[風間しげ] 三田和代
[武の祖父] 伊達三郎
[美那子の母] 高畑淳子
[修作の運転手] 田村錦人
[校長先生] 芦田伸介
[増田先生] 津村鷹志
[写真館の主人] 大橋巨泉
[写真館の妻] 三好美智子
[風泊の駅長] 大滝秀治
[銭湯の老人] 浜村純
エイガスキー
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 戦時に生きた子供達の目線を描く
- 不器用で歯がゆい友情の美しさ
- 井上陽水に泣かされるラストシーン
心情描写がよくできた青春ヒューマンドラマ
時代背景は戦時中・・・なんだけど、中身はまるで違う!
疎開してきた都会っ子の主人公「風間進二」と疎開先のガキ大将「大原武」の純朴な友情が軸で、それはまるで恋愛のようにも見える。
冒頭、進二は母に連れられ疎開先である富山の親戚宅へと向かうのだが、どことなく遠足気分。でも富山に到着すると見たこともないような田舎町に少し不貞腐れるあたり、まさに子供だ。一方、ガキ大将の大原君・・・家は貧乏で弟たちの世話から家事までこなし、常に裸足か草履で駆け回り、喧嘩も強く勉強もでき、学校では級長(今でいう学級委員長)をやっている。しかし、反面プライドが高く理不尽に子分を殴ったりする・・・こちらもまさに子供なのだ。
そんな大原君は都会から来た優等生の進二に学校だとイジめてきて、2人きりになるとめちゃくちゃ優しくなる・・・例えば、子分らがいる時は進二に歌う事を強制して泣かせたりするのに、進二が不良数人にからまれた時には一人で助けにいったりする。これは大原君がサイコパスなのではなく不器用だから。仕方ないんだ・・・ガキ大将だからね。
かなり不思議な関係性だけど、進二は戸惑いつつも仲良くなっていき、気が付けばガキ大将グループのNo.2に。
人によっては大原君に「なんだこいつは!!」とむかつく事もあるかもしれないけど、貧乏で苦労してるからこそ、都会から出てきた裕福な進二への嫉妬があるからこそ・・・彼の中では葛藤がすごかったんだろうね。学校のガキ大将としてNo.1の座は渡せなかったし、でも仲良くなりたいし・・・。
このあたりまでが映画の前半部分になるんだけど、とてつもなく丁寧に描いてくれるから、まだ何も起きてないのにのめりこむように見入ってしまう。
監督の篠田正浩、おそるべし。
戦時中の話ではなく、戦時中の子供の話
この映画の素晴らしいところは、登場する子供たちにとって戦争はあくまでも他人事のように描いている点なのだ。
そりゃそうだ、子供たちからしたら戦争なんて知ったこっちゃない。途中、戦争を色濃く映すシーンもちらほら入るけど、それらは全て子供視点で描かれ、むしろ大人の世界との対比として見せてくれる。
一方で物語は折り返し、後半から病気で休んでいた須藤という子が復学する。頭のきれる須藤はクラスの皆を説得し、ガキ大将の大原君に対し下克上を仕掛ける。それにより大原君は完全に孤立、今まで従っていた子分たちも襲い掛かってくる始末。
実はこの須藤の下克上に進二も行動を共にしていたのだ。彼もどこかで理不尽な大原君の横暴には思うところがあったんだけど、それよりも須藤に「仲間にならないか?」と誘われた時・・・同調圧力に負け、その場のノリで返事しちゃったんだ。ああ・・・なんとくすぐったい感情だろう。
げのちゃん
エイガスキー
でも、これでよくわかってもらえたと思う。
今作品は確かに太平洋戦争の時代を描いているんだけど、登場する子供達の誰もが戦争などに興味を持っておらず、それよりも自分たちの学校という社会、友達関係に視線がいっている。戦時中の映画なのに、ここまで戦争をそっちのけにした作品って他にあるだろうか・・・。でも、これこそがリアルな少年時代であり、リアルな当時の心情描写だと思う。
戦時中のリアルを映した記録映像であると同時に、素晴らしい青春映画だ。
全てはラストシーンへ、淡いエモい物語
さて、物語は終盤へ。
子供たちが遊んだり喧嘩したりとワーキャーしてる中、太平洋戦争がとうとう終戦したと一報が入る。ある者は敗戦を悲しみ、ある者は想う人の帰還を喜んでいるけど、騒いでるのは全て大人・・・この皮肉の効いた対比は最高だったよ。
その騒ぐ大人たちを横目に進二はそれどころじゃない。須藤たちと一緒に大原君を裏切ってしまった事への後悔で気が気じゃない。しかし無常にもそんな進二のもとに東京から岩下志麻の演じる母親が迎えに来てしまう。とうとう東京に帰る事になった進二は別れの挨拶をしに大原君の家に行くのよ・・・。
でもいないんだよ!会えないんだよ。すれ違っちゃうんだよ・・・。
進二はある大切な物を大原君の家の玄関に置き、駅へと向かう。駅のホームでは進二の為にクラスメイトの皆が別れの軍歌を大合唱していた。しかしそこにも大原君の姿はない。もう映画も残り数分・・・
この映画の真骨頂はまさかのここから
とうとう大原君と最後の言葉を交わせないまま汽車は出発してしまう。進二は窓を開け外を見渡す。いない、いるわけないと思いながらも・・・それでも探す。母親に怒られながらも窓の外に向かって進二は叫ぶ「大原君!!」
だめだ、書いてるだけで涙がこぼれてくる。何とも言えないもどかしさがあるのに、観て良かったと心から思えるラストシーン、半端じゃない。マジで半端ではない。
評価・視聴方法
日本人全員に1度は観てほしい傑作
建物や小道具、風景と全てにおいてクオリティが高く、本当に終戦前後の日本かのように感じさせてくれる全編よくできた傑作です!
今なら友達が遠くに引っ越しても簡単に会えますよね。連絡を取ることなんてもっと簡単です。しかし彼らの世界は終戦直後ですから、ここから激動の戦後がくるわけです。つまり進二と大原君が会う事は二度と叶わない・・・のかもしれないんですよね。
誤解してほしくないのは、決して戦争という悲劇を歪曲して描いてる作品ではないという事。あくまでも終戦前後に、ある疎開先で起きた小さなヒューマンドラマですので、意外と気軽に楽しめます。
本記事ではあえて書きませんが、エンドロールに出てくる重要なある1枚の写真・・・たまらなくエモいので、是非ご自身で体感してみてはいかがでしょうか?
「少年時代」の視聴方法
現在ネットで視聴する方法はありません。
ブルーレイも無し・・・VODサイトで観る事ができるようになる日まで待てない人はDVDの購入、もしくはレンタルをオススメします。
(※2020/5/15調べ)
げのちゃん
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げのちゃん
エイガスキー
(C)1990「少年時代」製作委員会