現在、日本で1番映画を撮っているであろう三池崇史監督による作品です。
これで何本目になるんでしょうかwVシネマから考えたら本当に数えきれませんが、バイオレンスなヤクザ任侠系から、ホラー、コメディなどジャンルを問わず、何でもやってのけてくれる素晴らしい映画監督です。今作品は「初恋」という青春ラブストーリーにしか思えないタイトルですが、ほぼヤクザ映画ですのでお気を付けくださいw
個人的にはかなり面白かったです!
[ジャンル]ヤクザ・ギャング系、コメディ[作品時間]115分
[公開日]アメリカ:2019/9/27|日本:2020/2/28
- 予告動画やキャスト情報
- ネタバレありの感想
- 評価と他オススメ作品
もくじ
作品情報
今作品は異例の全米先行公開となり、なんと100館ほどで公開されました。三池崇史監督はエグい描写が多いからなのか、なぜか日本では賛否がわかれますが世界の映画ファンからの支持は高い方です。
ちなみにオースティンファンタスティック映画祭では日本人初となる特別栄誉賞を受賞しました!
あらすじ
親に捨てられた孤独なボクサー葛城レオ・・・彼はある日、負けるはずのない相手にラッキーパンチをくらい失神してしまう。病院の検査を受けた結果は脳腫瘍・・・余命宣告を受けた。絶望の中、歌舞伎町を徘徊していたレオはある男に追われていた少女を助ける。少女はモニカと名乗り、親の虐待を受けていた事やヤクザに囚われていた事をレオに打ち明かす。残り短い人生のレオは成り行きで彼女と行動を共にするが、気が付けばヤクザと中国マフィアの抗争に巻き込まれていく。果たして2人の運命は・・・?
スタッフ・キャスト
監督 – 三池崇史
脚本 – 中村雅
葛城レオ – 窪田正孝
モニカ/桜井ユリ – 小西桜子
加瀬 – 染谷将太
大伴 – 大森南朋
ジュリ – ベッキー
市川 – 村上淳
ヤス – 三浦貴大
チアチー – 藤岡麻美
イェン – 顔正國
トゥアン – 段釣豪
権藤 – 内野聖陽
組長代行 – 塩見三省
やっぱりベッキーのインパクトはすごかったですね!ただ他の俳優陣も全員最高でしたw中国語が流暢だったチアチーを演じた藤岡麻美はディーン・フジオカの妹さんだそうです。
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 痛快で笑える素晴らしい喜劇
- ぶっ飛んでるベッキーに注目!
- 気持ちの良い綺麗なラスト
ヤクザを使った痛快コメディ!
映画の世界には様々なヤクザが存在する。
まずは深作欣二の仁義なき戦いや北野武のアウトレイジなど、仁義を微塵も感じさせない怖すぎるシリアスなヤクザ・・・現実世界では絶対に関わりたくないけど、どこか憧れてしまうカッコよさがあるよね。一方で映画の世界には鮫肌男と桃尻女や、伊丹十三作品に出てくるようなマヌケでポップなヤクザもいる。
三池崇史監督も様々なヤクザを描いてきたけど、今作品は実にコミカルでエンタメ的・・・でもちゃんと怖くてカッコイイ!というハイブリッド型!まさに映画の中にだけ存在するヤクザだったw
塩見三省「短気を起こすんじゃねえぞぅ!?」
内野聖陽「ヤクザが売られた喧嘩買うのに、上の意見もへったくれもねぇでしょ!」
村上淳「今度は俺が首飛ばしてやりますよ」
日本が誇る最高の俳優陣に、ここまで小っ恥ずかしいセリフを言わせて観客を笑わせてきた三池監督の遊び心は本当に素晴らしい。あるシーンで加瀬を演じた染谷将太が「いつの時代のヤクザだよ」みたいなツッコミを入れた時は声出して笑っちゃったよw
別にコメディ要素を全面に出してふざけてるわけじゃないし、ストーリーはむしろシリアスでバイオレンスな雰囲気やシーンも飛び交ってるのに、終始ちゃんと笑える作品に仕上がってるのはさすが三池監督だ。
というのも今作品のストーリーは色々な事が何一つうまくいかない。ちょっとしたミスや勘違い、偶然などが絡み合って行き着いた結果がホームセンターでの壮絶な殺し合いという超展開・・・まるでガイ・リッチー監督のロックストック&トゥースモーキングバレルズやスナッチといった初期の名作を彷彿とさせたよ。つまり今作品はシリアスなヤクザ映画や、バイオレンスなアクション映画の要素も入ってるけど、結局のところ僕の大好物である痛快なコメディなのだ。
三池監督に好きなように撮らせた東映の判断は間違いなかった。漫画・アニメ原作が飛び交うこの時代に、こんな面白い完全オリジナルの脚本をありがとう!
ベッキー!このまま女優業でいこう!
お茶の間の人気者だったベッキーはスクリーンでも映えた!
今作品は脇役が超豪華だ。しかもアクの強いのが集まってるよね。こんなメンツの中でヒロインに抜擢された新人・小西桜子も素晴らしかったし今後も注目したいんだけど、何よりもベッキーの存在感はエグかった。
発狂しながらストンピングするわ、血だらけで走ってくるわ、バールで窓ガラス割るわ・・・絶対にテレビでは見る事が出来なかったベッキーの大立ち回りは必見だ。全てのシーンで存在感があったし後半に至っては、もはや「早く出てこないかな~」と求めてた自分がいたよw
はっきり言って演技力はまだまだ厳しいと思うけど、白石和彌監督の麻雀放浪記2020でも独特な存在感があったし、三池監督は最高純度の狂ったベッキーをしっかりと捉えてたと思う。
これを機に女優としてのベッキーに興味を持った人はたくさんいるんじゃないかな?
この圧倒的な存在感をテレビタレントで消費していくのは勿体ないよ。もっと言えばテレビドラマでも持て余す。是非スクリーンの女優として今後も頑張ってくれないだろうかw
今作品で1番面白かったキャスティングだったと断言するよ。
初恋というタイトルの意味は?
一体どういうつもりでこのタイトルをつけたのか・・・
今作品はタイトルの真意なんかどうでもよくなるようなハチャメチャヤクザムービーなのに、不思議なものでレオとモニカの純愛は確かに浮き上がってくる。それにしたって初恋というタイトルはないだろって?
僕は支持するよ、あのラスト。
三池監督は巧妙だった。今作品はただの痛快コメディのくせしやがってテーマはシリアスなのだ。昨今薬物で人生を棒にふる役者や、地に潜った作品が数多にあるよね。作中で権藤を演じた内野聖陽が放ったセリフには強いパンチラインがあった。
「建前通り御法度にしときゃいいんだ、あんなもん」
本当にその通りだ。薬物に溺れた人間はまわりに心配させて呆れさせて、多方面に迷惑をかけるよね。そして何よりも1番の問題は人間をやめちゃう事だ。
今作品の主人公レオとモニカも同じで真っ当な人間の人生ではない。ヤク中のモニカはもちろんだけど、レオも生きているとは到底言えない後ろ向きな人生を歩んできた。そんな2人が逃避行した先で、レオは他人の為に生きる事の素晴らしさを知り、モニカは依存していた過去の幻想に終止符を打つ。
ラストでやっと2人は前を向き、ちゃんと「生きる」事を選ぶのだ。
三池監督らしくない実に素晴らしい大団円だったw歳とったせいか知らないけど、良い意味で丸くなったよな!痛快なヤクザアクションコメディという下品な風呂敷で、こんな綺麗なもん包みやがってw
こういうのまた頼むよ!
評価・他のオススメ映画
やっぱり大好き!三池崇史作品
序盤はキャラクター紹介や三池監督がよくやる雑なホラーテイストなど、スローテンポでちょっと退屈に感じるかもしれませんが、いわゆるプロローグが終わって全ての起爆剤がセットされてからの展開はまさにジェットコースターでした。伏線も細かいところまで全てしっかり回収していてお見事の一言です。
やっぱり三池崇史という人は素晴らしいですね!グロい描写も当たり前のように使ってきますが、気持ち悪いと思う前に「馬鹿じゃねえの、この監督w」と笑わせてくれます。
またこういう三池節全開の映画を作ってほしいですね!あー面白かったw
「初恋」が好きな人はこんな映画がオススメ!
痛快コメディで且つ、バイオレンスなクライムムービーといえば・・・やっぱりタランティーノ監督やガイ・リッチー監督じゃないでしょうか。この「初恋」という映画を観て楽しめた人は、映画沼にハマりやすいと思いますwそんな人達には是非チェックしておくべき2作品オススメしておきますね!
どちらも超傑作、バカ面白いですよ!
では、良き映画の時間をお過ごしください。
(C)2020「初恋」製作委員会