2018年公開。監督はファレリー兄弟の兄・ピーター・ファレリー監督による事実を基にした作品です。
人種差別を扱っているので、ある方面からは批判的な意見もありますが、全編笑えて泣けてしまう心温まる名作に仕上がっていて、非常に観やすい1本となっております。観て良かったと思える映画ランキングなんてものがあったら今作品は堂々1位をとるんじゃないでしょうか。絶対に観て損しないと保証しますよ!
本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想、視聴方法も記載しています。
もくじ
作品情報
- 作品賞[受賞]
- 助演男優賞 – マハーシャラ・アリ[受賞]
- 脚本賞 – ニック・ヴァレロンガ、ブライアン・クリー、ピーター・ファレリー[受賞]
- 主演男優賞 – ヴィゴ・モーテンセン[ノミネート]
- 編集賞 – ポール・J・ドン・ヴィトー[ノミネート]
祝!オスカー受賞!同年のアカデミー賞で同じく作品賞にノミネートしたブラック・クランズマンの監督であるスパイク・リーがやけに今作品を批判していますが、元々この人は人種差別について非常に敏感な方なので、あまり気にしなくていいと思いますw
それとマハーシャラ・アリも主役では?と思いますが、もはやどうでもいいです。2人とも素晴らしかったですね!
あらすじ
1962年ニューヨーク・・・コパカバーナというナイトクラブで用心棒をしていたイタリア系アメリカ人のトニーは、ある日ナイトクラブが改装工事となり職を失ってしまう。新しい仕事を探していたトニーはある面接を受けに行くと、アフリカ系アメリカ人のピアニストであるドン・シャーリーのツアー運転手をしろという。黒人の為の旅行ガイドであるグリーンブックを手渡されたトニーはドンを乗せてコンサートツアーに出発するが果たして・・・
キャスト、スタッフ
監督 – ピーター・ファレリー
脚本 – ニック・ヴァレロンガ、ブライアン・ヘインズ・カリー、ピーター・ファレリー
トニー・リップ・ヴァレロンガ – ヴィゴ・モーテンセン
ドクター・ドン・シャーリー – マハーシャラ・アリ
ドロレス・ヴァレロンガ – リンダ・カーデリーニ
ルディ – フランク・ヴァレロンガ
オレグ – ディミテル・D・マリノフ
ジョージ – マイク・ハットン
キンデル – ブライアン・ステパニック
ロスクード – ジョー・コーテス
アミット – イクバル・セバ
ジョニー・ヴェネス
チャーリー – ピーター・ガブ
モーガン – トム・ヴァーチュー
ボビー・ライデル – ファン・ルイス
プロデューサー – P・J・バーン
アンソニー – ルイ・ベネレ
ニコラ – ロドルフォ・ヴァレロンガ
フラン – ジェナ・ローレンゾ
ヴァレロンガと名のつく人が何人かキャスティングされてますが、ニック・ヴァレロンガの親戚なんでしょうかね。調べてみてもいまいちわかりませんでしたが、今作品はトニーとドン、そして奥さんドロレスの3人に注目していればOKだと思いますw
ちなみに序盤ナイトクラブで歌っているボビー・ライデルという登場人物は、60年代に売れっ子だった実在のアメリカの歌手です。
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 人種差別を軽く表現した傑作
- 最高に心地よい2時間
- 音楽の素晴らしさを感じられる
人種差別がテーマなはずなのに
高貴で世間知らずの黒人ピアニストと、下賤で腕と口がたつ白人イタ公。
ドン・シャーリーは黒人だが育ちが良い為、他の黒人たちの友達がおらず文化も知らない。コンサートとして招待されている立場でも、黒人だからという理由だけでレストランでの食事さえ許されない。にもかかわらず、それを我慢して最高の演奏を終えた後に笑顔で立ち去る。一方、イタリア系アメリカ人のトニーは貧しいながらも素敵な家族と仲の良い仲間たちに囲まれていた。黒人差別の意識も仲間たちとの会話にありふれているが、差別意識が強いというより当たり前のジョークとして日常化してしまっている。
この映画はそんな真逆の2人が旅を共にして段々と仲良くなっていくというロードムービーってだけなんだけど、これが何とも心地よい。この旅が・・・いや、この映画がずっと続けばいいのに・・・と思ってしまうほど素晴らしい会話劇とエピソードが満載だ。
舞台となる1962年はまだまだ人種差別の全盛期と言っていい。黒人が歌っている目の前で白人が座ってお酒を飲みながら関係のない話をしているのが当たり前の時代だ。そんな異常な世界で、実際に音楽で人の心と世界の常識を変えようとしたのが今作品の主人公であるドン・シャーリーという実際にいたピアニストである。作中では差別全開ですっごくむかつく描写もされていた。
「当レストランでは黒人は食事ができないのです。伝統でして」
ドンを招待した当人がこんなふざけた事を言う。これが実話っていうんだから腹が立つ。「伝統?たかが数十年程度の歴史で何を言ってるんだ?お前はw」と皮肉の1つでも投げて蹴とばしたくなるよwそもそもタイトルになっているグリーンブックというのは黒人がアメリカを安全に旅する為のガイドブック・・・もはやこのガイドブックの存在自体がアメリカ史の恥と言えるんだよね。と、まあ今作品の描いている部分はアメリカの歴史において本来アンタッチャブルなんだ。
そんな重い人種差別を描いているはずなのに、これがドンとトニーのやり取りを観ているとどうでもよくなってくる。人種や民族が違ったり、生きてきた過程や考え方が違っても一切関係ない。相手の良いところには敬意を持って、悪いところは指摘し正す・・・あとは一緒に笑えれば、それが素晴らしき人生であり素晴らしい友人関係なのだ。
この映画は確かに人種差別という触れにくいものを描いているけど「人種差別をするな!」という強いメッセージではなく「それより大切なのは一緒に笑う事だ」と言っているように感じた。
僕はここまで心地よい時間が続く映画を他に知らないよ。
ケンタッキーのエピソードは映画史屈指の名シーン
今作品は素敵な小話がたくさん入っている。
ピーター・ファレリー監督は、これまで超絶くだらないオバカコメディ映画を散々作ってきて観客を爆笑ばかりさせてきた。今作品もトニーを軸に下品でくだらない笑いがいっぱいあるんだけど、ドンの存在のおかげなのか上品に感じるというか・・・ウィットに富んだジョークになっている。
この映画を観た人は誰もが口を揃えて言うはずだ・・・ケンタッキーのシーンは最高だ!と。
車中でドンがケンタッキーを食べた事ないというからトニーが強引に食べさせるんだけど、この時のやり取りが滑稽でケラケラと笑えてしまう。ドンが骨を優雅に窓から捨てたあたりなんて腹抱えて笑ってしまった。細かく言うとこのシーンのもう少し手前、トニーが翡翠石をパクった事をドンが怒るシーンあたりからピーター・ファレリー監督の巧妙な笑いの罠が仕掛けてられている。僕はあの時ドンが「私が石を買ってやろう」と言った時から笑いが止まらなかった。しかもただ笑えるだけじゃなくて、なんていうか2人の優しいやりとりが嬉しくなって泣けてきてしまうのだ。その上で爆笑してしまう・・・。
なんだ、このやばい脚本は!さらに驚くのが今作品の色々なエピソードが基本的に全て事実という・・・w
他にも奥さんのドロレスに向けて書かれた手紙や、クライマックスであるオレンジ・バードという場末のバーでのシーンなど、今作品はとにかく心地よくて面白いシーンが盛りだくさんとなっているし、小さなセリフの伏線などもしっかり丁寧に回収している。帰ってきたMr.ダマー バカMAX!のレビューの時も書いたけど、本当にこの監督はオバカコメディ映画の人となめちゃいけない。
映画作るの上手すぎ。
クリスマスに観たい映画No.1
なんて後味の良い映画だろうか。
あまりにも心地よい時間が過ぎた今作品の最後はクリスマス・イブの夜に幕を閉じる。友人も招いた家族団らんのパーティーの中に帰ってくるトニーと、誰もいない広い部屋で座るドン・・・素晴らしい対比だったけど、観客は誰もがラストは素敵なハッピーエンドだと気付いたはずだ。むしろ、この映画を「バットエンドにできるならやってみろ!」と言いたくなるくらい、終始心地よい時間が続いたんだから。
寂しい時は自分から先に手を打たなきゃ
このトニーのセリフを綺麗に回収したラストシーンは完璧だった。トニーの自慢げだけど上品な笑顔、奥さんドロレスのお礼の言葉、そこから流れる極上の音楽と極上のエンドロール。確かに今作品は人種差別がテーマとなっている。だけど本質は2人の友情であり、人のあるべき姿を描いた傑作だ。
ある一部からは「クラッシュ以来の最悪のオスカー作品賞」と批判もあるけど、僕から言わせれば差別意識が強い人の戯言としか聞こえない。中盤でトニーが「イタ公」と差別的な発言をしたある男を平手打ちする。その直後に流れたドンの演奏曲はハッピー・トークという。南太平洋というミュージカルで使われたもので「楽しく生きていこう」という意味合いを持つ曲だ。
誰が何と言おうと僕はピーター・ファレリー監督のこうした優しいメッセージを支持するよ。素晴らしい映画をありがとう。
評価、視聴方法
ヴィゴ・モーテンセンって誰??
日本の女性たちを一時期虜にしたんですが、今作品は役作りの為に相当太っているので気付いてない人も多いようですね。
ロード・オブ・ザ・リングの剣士・アラゴルンを演じた方でございます。
悪役だったり、厳格な性格のキャラクターが似合いそうなダンディなおじさんですが、今作品ではイタリア系アメリカ人・・・笑い方や話し方のガサツな感じが似合っていて素晴らしい名演でしたね。マハーシャラ・アリとは元々「いつか共演できたらいいね」と話していたらしくプライベートでも仲がいいようです。作中でも観ていてホッコリするやり取りで最高でしたが、そんな2人がW主演でこんな感動名作が出来てしまったんですから、また何かで共演してくれたらと思います。
素晴らしいストーリーにキャストとスタッフ、そして音楽・・・オスカー受賞は文句なし。こういう映画が溢れかえれば世界も少しは平和になるんじゃないかと思わせてくれる名作でした。
かなり癒される映画だと思うので疲れた時なんか超オススメですよ!
「グリーンブック」の視聴方法
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観ていて心地よい映画だとフォレスト・ガンプも1度は観るべき傑作ですね。邦画だとWOOD JOB!なんかも終始ホッコリできるのでオススメです。
では、良き映画の時間をお過ごしください。