映画「万引き家族」あらすじ、感想【世界的にも評価が高い理由を解説】

万引き家族

パンクなメッセージを盛り込んだ是枝裕和監督によるヒューマンドラマの傑作です。

今作のような家族愛や人間関係を描かせたら右に出る者はいないんじゃないでしょうか。しかし、ネット上のレビューを見ていると感想が真っ二つ・・・「何が面白いのかまったくわからない」「つまんない!何で評価が高いの??」といった否定的意見も結構ありました。

というわけで、本記事では何故今作品が日本国内ではもちろん、カンヌでもパルム・ドールを獲得したりなど世界的にも評価が高かったのかを含め解説していきます。

作品情報

是枝監督は親の死亡届を出さずに年金を不正に貰い続けていたという実際の事件をもとに構想10年近くをかけて作ったそうです。

第42回日本アカデミー賞
最優秀作品賞
最優秀監督賞 – 是枝裕和
最優秀脚本賞 – 是枝裕和
最優秀主演女優賞 – 安藤サクラ
最優秀助演女優賞 – 樹木希林
最優秀音楽賞 – 細野晴臣
最優秀撮影賞 – 近藤龍人
最優秀照明賞 – 藤井勇

アカデミー賞過去最多8冠!その他にもリリー・フランキーや松岡茉優も沢山ノミネートしましたね。是枝監督は三度目の殺人に続き、二年連続・・・ちなみに2016年には海街diaryで作品賞を獲得しています。無双しすぎw

あらすじ

東京の下町で今にも壊れそうな平屋に暮らす貧しい家族がいた。柴田治と妻・信代を中心に祥太、亜紀、そして初枝。彼ら5人は実は血が繋がっていないが、治と信代の給料に加え初枝の年金と、治と祥太が親子で手がける万引きで生計を立てており、まさに底辺の暮らしながらも常に笑顔が絶えなかった。ある冬の夜、治は近所の団地の1階にあるバルコニー状の外廊下で、ゆりという1人の幼い女の子が震えているのを見つけ、見かねて連れて帰る。しかし本当の家族ではない6人はある事件をきっかけにバラバラになってしまい、彼らの本来の姿が明らかになっていく・・・。

万引き家族

キャスト、スタッフ

監督・脚本・原案 – 是枝裕和

治 – リリー・フランキー
信代 – 安藤サクラ
亜紀 – 松岡茉優
祥太 – 城桧吏
ゆり – 佐々木みゆ
初枝 – 樹木希林

この他に少しだけ池松壮亮だったり、緒形直人、柄本明、高良健吾、池脇千鶴なども出演しています。
特に池松壮亮の出し方は面白かったですね。というかズルイですよねw

 

ここからはネタバレ有りの感想になるのでご注意くださいな。

 

 

 

 

感想(ネタバレ有)

  • ドキュメンタリー畑出身である是枝監督の怒り
  • 役者たちの演技が自然体すぎぃ!
  • まるで古典落語のような雰囲気

是枝監督はパンクだ

誰も知らないという映画をご存知だろうか。

2004年に公開した柳楽優弥のデビュー作で、今作品と同じように社会からはみ出ている家族の現実を描いた是枝監督の衝撃作である。この他にも是枝監督は日本人のリアルな生活をまるでドキュメンタリー番組かのように深く掘り下げて描写する事が多い。

今回の万引き家族もまさにその路線で、映画を通して社会に怒りをぶつけているように感じた。事実、僕を含めこの映画を観る人は映画館だったり暖かい自宅の部屋で鑑賞しているけど、実際の社会ではパチンコ屋の駐車場に子供を放置して死なせてしまうバカな親だったり、ペットのように我が子を捨てるクズまでいる。しかし、こういう事件は「別に自分の事じゃないし、現実味がないからなー」と、大半の人は他人事で済ませてしまっているよね。是枝監督は昔からこの社会問題を許せなくてやるせなくて、映画を通しどうにかして社会を少しでも変えようとしているのかな?と僕は思う。こうした背景の根本には是枝監督が元々ドキュメンタリー出身の人というのがまずあるのだろう。

何が言いたいのかというと、是枝監督ほどパンクな映画監督は他にいないという事である。そしてこの作風だからこそ、作品全体にズシッと重いリアリティが浸透していたように感じたね。

と、前置きが長くなったけど、そんなパンクな是枝監督の万引き家族・・・何故全然響かずつまらないという人と絶賛の声に二極化するのかを書いていこうと思う。

映画に求めるものが違うと全然面白く感じない

あるレビューに「万引きのシーンが全然なくてつまらなかった」という意見がチラホラあった。

ミスリードって言えばミスリードなんだけど、今作品のタイトルは万引き家族。そして予告もやはり万引きを稼業とする家族という事を前に出した作りだったので仕方のない意見だと思う。つまり、軽犯罪とはいえ”万引き“という非現実的な行為でひっぱっておいて、映画に出てくるのはかなり現実的な底辺家族のお話なわけで、ようはラーメンを食べに行ったら出てきたのがケーキだったみたいなもんだ。そりゃそこに温度差は生まれる。

反対に世界的にも絶賛されている理由は是枝監督を知っているかどうか、映画をよく観ている人かどうかだと思われる。

僕自身、是枝作品は大変好物なんだけど、メッセージ性が強い事も知っている上でいつも鑑賞させてもらっているので、タイトルが万引き家族だろうが何だろうが、その奥の本当に描きたい事はなんだったのか?が楽しみだったりする。その上で是枝監督は毎回予想を上回る純度の高い作品を提示してくるから絶賛!となるわけだ。

海街diaryと同じく、今作品も相変わらず山場という山場を配置してないのに2時間通して面白かった。もう少し掘り下げて言えば山場はあるんだけど、山場と思わせない作りなんだよね。ハリウッドの大作映画なんてラスト40分はとりあえず何かが爆発してればいいと思ってるんだろうかという位、どんちゃん騒ぎしてるでしょ?(そういうのも大好きだけどもw)

そんな目に見えるでかい花火ではなく、線香花火のような風情を持った映画なので、つまらないと思った人はどうかもう1度だけ!これは万引きを軸としたものではなく、ある底辺の疑似家族の絆と日常に軸をおいた作品だという前提をもって観てほしい。

そんなに言うなら今作品の山場ってどこだったのよ?ってなる?というわけで映画自体の話をしていこう。

安心感がすごかったキャスティング

浜辺の樹木希林はやばかった。

今作品の山場はどこ?と言われたら、僕は間違いなくこのシーンだと答える。作中にそのプロローグが描かれているわけではないが、この疑似家族6人の底辺生活はそもそも独居老人だった樹木希林演じる初枝が寂しい日常を避ける為にスタートしたものだ。確かに治や信代は初枝の年金が目当てだったのも間違いないが、初枝にとってはお婆ちゃんとしていさせてくれる家族なんだよね。DVをしてくる元夫を殺した過去を持つ治や信代だとか、亜紀の仕事が風俗だとか、祥太を筆頭に万引きで生活品を手にしてる事だとか、ゆりを誘拐してきてしまった事など・・・社会的に悪とされていたり、世間的に下賤だと思われていようが、初枝にとっては間違いなく家族。

そんな初枝が6人で海に行った際、浜辺で口をパクパクして何かを言っているシーン

この時、初枝が何と言っていたのか?とネットのレビューでも気になっていた人がいたけど、僕は「(家族でいてくれて)ありがとうございました」と言ったのだと思う。今作品は安藤サクラが怪演だと評判いいが、あの浜辺の時の樹木希林こそ怪演だと言いたい。(いや、安藤サクラもやばかったんだけども)

というか、この樹木希林を筆頭に全役者がとてつもない自然体の演技で素晴らしいんだよね。

だからこそ平坦なテンポなのに2時間見入ってしまうというのもあると思う。中でもリリー・フランキーは近年、凄まじいくらい名役者になってきたと思っている。ワルから異常者、今回の普通にいそうなおじさんまで何でもこなすカメレオン俳優。演技力がすごいというのは言うまでもないんだけど、それよりも僕がいつもすごいと感じるのはリリー・フランキーの確かにこういう人いそう感wこれはマキタスポーツにも感じるんだけど、リアルにいそうで平凡なのに凄まじい存在感を放ってくるんだ。リリー・フランキーはバイプレイヤーとしてはもちろんだけど、主役にきても光るかなり稀な役者だと思うね。今回もすごかったな・・・下町情緒のあるべらんめえ口調で最高にチンケなおじちゃんだったw

というわけでリリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林という三本柱がしっかり土台を作っている為、これだけでも安心感がただようんだけど、これに加えて松岡茉優、祥太&ゆりの子役たちもかなり良い。是枝監督は子役にセリフ感が強くならないよう台本を渡さない時があるらしいが、いつも現場でどうやって声かけているんだろうか。毎回名子役なイメージがあるよ。

評価

こんなのアカデミー賞獲るに決まってますね。

内容が面白かったのは言うまでもないんですけど、何よりも社会に一投を投じるどころか、ハンマーで殴り掛かってきたかのようなメッセージ性の強さ。素晴らしい作品だと思います。

パチンコ屋の駐車場で車内に放置されていた祥太、家出をした亜紀、教育放棄して暴力を振るわれ寒い冬の中、捜索願いを出したとはいえ、外で放置されていたゆり・・・

これ全て現実でよく起きてる事案ですよね。果たして彼らの実の両親は子供にとって本当に必要不可欠な親なんだろうか?終盤、池脇千鶴演じる警官が「子供には母親が必要なんですよ」と言ったら安藤サクラ演じる信代が「母親がそう思いたいだけでしょ」と返してました。加えて「産んだら皆母親になるの?」と・・・。ラストはゆりも児童施設に入っていれば穏便に終わっていた事でしょう。ですが、今作品のラストはマンションの廊下で10までしか数えられない中、一人で遊ぶゆりの姿ですからね。

まるで古典落語かのような下町の風情を挟みつつ、リアルな底辺家族の絆を描き、最後・・・社会に対して胸倉を掴んだような是枝監督の怒りはまさにパンク、最高のバットエンドであり、最高の映画だと思いました。

ああ、あかん・・・もう1回浜辺の樹木希林観てきますw

では、良き映画の時間をお過ごしください。