映画「万引き家族」あらすじ、感想【世界で評価が高い理由を解説!】

万引き家族

2018年公開。是枝裕和監督作品です。

今作品は世界で大絶賛されていますが、日本国内の一部では「何が面白いのかわからなかった」「何で評価が高いの??」といった否定的意見も結構ありました。是枝作品は他の映画と比べて淡々と描く事が多いので、退屈に感じてしまう人もいたかもしれませんね。ですが過剰ではないリアルな演出と、是枝作品の真骨頂である家族というテーマを通して、社会への強いメッセージが詰まった素晴らしい映画ですよ!

本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想、視聴方法も記載しています。

ジャンル:クライムヒューマンドラマ
作品時間:120分

作品情報

  • 最優秀作品賞[受賞]
  • 最優秀監督賞 – 是枝裕和[受賞]
  • 最優秀脚本賞 – 是枝裕和[受賞]
  • 最優秀主演女優賞 – 安藤サクラ[受賞]
  • 最優秀助演女優賞 – 樹木希林[受賞]
  • 最優秀音楽賞 – 細野晴臣[受賞]
  • 最優秀撮影賞 – 近藤龍人[受賞]
  • 最優秀照明賞 – 藤井勇[受賞]
  • 優秀主演男優賞 – リリー・フランキー[ノミネート]
  • 優秀助演女優賞 – 松岡茉優[ノミネート]
  • 優秀美術賞 – 三ツ松けいこ[ノミネート]
  • 優秀録音賞 – 冨田和彦[ノミネート]
  • 優秀編集賞 – 是枝裕和[ノミネート]

アカデミー賞過去最多8冠!是枝監督は三度目の殺人に続き2年連続・・・ちなみに2016年にも海街diaryで作品賞を獲得しています。カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞し、他にも数多の映画祭で絶賛されております。

あらすじ

東京の下町で今にも壊れそうな平屋に暮らす貧しい家族がいた。治、信代、祥太、亜紀、初枝・・・彼らは治と信代の給料に加え初枝の年金、そして治と祥太の万引きで生計を立てており、まさに底辺の暮らしながらも常に笑顔が絶えなかった。ある冬の夜、治は近所の団地で、ゆりという1人の幼い女の子が震えているのを見つけ連れて帰る事にする。不思議な絆で繋がっている6人の家族が行き着く先とは・・・。

キャスト、スタッフ

監督・脚本・原案 – 是枝裕和

治 – リリー・フランキー
信代 – 安藤サクラ
亜紀 – 松岡茉優
祥太 – 城桧吏
ゆり – 佐々木みゆ
初枝 – 樹木希林

4番さん – 池松壮亮

柴田譲 – 緒形直人
柴田葉子 – 森口瑤子
柴田さやか – 蒔田彩珠

前園巧 – 高良健吾
宮部希衣 – 池脇千鶴

山戸頼次 – 柄本明

主要6人は子役も含め素晴らしかったですが、脇も固い布陣が敷かれていて安心して観ていられました。中でも池松壮亮の出し方は面白かったですね。

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • 是枝監督の怒りを感じた
  • 演技と思えない樹木希林
  • 社会へのアンチテーゼ

世界に自慢できる映画監督

誰も知らないという映画をご存知だろうか。

2004年に公開した柳楽優弥のデビュー作で、今作品と同じように社会からはみ出ている家族の現実を描いた是枝監督の衝撃作である。この他にも是枝監督は家族愛というフィルターを通して、強いメッセージをのせた映画を作る事が多い。今作品もまさにその路線で、まるで社会に対しての怒りをぶちまけているように感じた。

世の中ではパチンコ屋の駐車場で車内に子供を放置する親だったり、ペットのように我が子を捨てる人までいる・・・。情けない事に、僕も含め大半の人はこういう事案をどこかで他人事として済ませてしまっているけど、是枝監督は昔から映画を通して、少しでも社会を変えたいと思っているんじゃないかと思う。こうした背景の根本には是枝監督が元々ドキュメンタリー畑出身というのがあるのかもしれない。

今までも疑似家族を描いてきた是枝監督だけど、今作品はより強く、そしてより明確に家族の本質を描いたと感じた。ゆりを放置した本当の両親と、ゆりを連れて帰って優しく接した治たち・・・果たして本当に人間らしいのはどちらなのか?ゆりにとって必要なのは誰なのか?

「それでも本当の親が必要だ」

今作品を観た人の中で、何人がこの言葉を言えるだろう。ここまで重いテーマで鋭く社会をえぐっているのに、映画として面白いストーリーを持たせてきたのは、さすがの一言だ。是枝監督はいつも手厳しいが、世界に自慢できる素晴らしい映画監督なのは間違いない。

世界で評価された理由

  • 「万引きのシーンが全然なくてつまらなかった」
  • 「犯罪を助長してるんじゃないか」
  • 「世界に誤解を与えてしまわないか」

日本国内で散見された今作品の感想だ。

確かにタイトルは万引き家族・・・ミスリードと言えばミスリードだし、予告もやはり万引きを稼業とする家族といった雰囲気を前に出した作りだったから仕方ない・・・のかなwそれとも、あの手この手で登場人物たちが万引きするコミカルな映画だと思われたのだろうか。それならまだわかるよ。実際に観てみたら貧しい家族がかなりリアルに描かれてるんだから、そりゃ温度差も生まれるよねwラーメン屋に入ってケーキ出されたようなもんだ。何にしても映画の感想なんて十人十色だから、人の感想にあまりネガティブな事は言いたくないけど、犯罪を助長しているだとか世界の人達に恥ずかしいという意見にはハッキリと皮肉を言いたい。

本当にこの映画を観た?

反対に世界での評価は異常に高い。是枝監督お得意の疑似家族という設定や、本来の家族とは何なのか?という永遠の命題に対しての向き合い方の巧みさだったり、演出面や俳優陣への評価が目立った。

  • 「人間味と子供への思いやりに溢れた、とても美しい映画だった」
  • 「家族と親子についての素晴らしいポートレイトだ」
  • 「家族についての物語、実に平和的な傑作」

海外での感想はこんな感じ。

悲しいけど、僕は世界の評価に賛同だ。万引きの描写はあくまでもサブであり、本質は家族愛人間のあり方を描いている事は、ちゃんと観ていれば理解できると思うんだけどね・・・。ただ海外だと養子をとる人も多いし、そういう人を評価する風潮もあるから、こうした疑似家族というテーマに日本より理解があったのかもしれない。

何にしても僕は日本国内の批判的な感想には少し情けなくなった。

浜辺で樹木希林(初枝)が言った言葉

浜辺シーンの樹木希林はやばかった。

今作品の山場はどこ?と聞かれたら、僕は間違いなくこのシーンだと答える。作中に描かれているわけではないけど、6人の底辺生活はそもそも独居老人だった樹木希林の演じる初枝が寂しい日常を避ける為にスタートしたものだ。確かに治や信代が初枝の年金目当てだったのは間違いないが、初枝にとってはお婆ちゃんでいられる家族である事も間違いないんだよね。そんな初枝が皆で海に行った時に、浜辺で何かを呟くシーン・・・

僕は「(家族でいてくれて)ありがとうございました」と言ったのだと思う。

こっちのセリフだ。なんて素晴らしい名シーンを生み出してくれたんだ。ちなみにこれ・・・樹木希林のアドリブだったと言われている。今作品は安藤サクラリリー・フランキーを筆頭に出てくる俳優全員が怪演の域で「本当にこれはセリフなのか・・・」と疑うシーンの連続だったけど、何よりもあの浜辺のシーンの樹木希林はピカイチだった。

アカデミー作品賞を筆頭に8部門もかっさらい、世界でも大絶賛された理由・・・それはストーリーやメッセージ性、演出など素晴らしい点を挙げればきりがないけど、僕はこの樹木希林という女優の存在を1番の理由に挙げたいね。

ハッキリ言って邦画屈指の名シーンと言っても過言ではない。

評価

直視すべき社会へのアンチテーゼ

非常に考えさせられてしまう作品でした。

文句なく面白いんですけど、それよりも社会に一投を投じるどころか、ハンマーで殴り掛かってきたかのような強いメッセージ性・・・素晴らしい映画だと思います。治たち6人はリアルの世界なら、ただの犯罪者社会悪としてメディアに取り上げられていたでしょうけど、中身は間違いなくちゃんと愛に溢れた家族でした。少なくともパチンコ屋の駐車場で車内に子供を放置したり、育児放棄して遊び惚けている人達よりも治と信代は親をやってましたよね。

ラストシーンは静かな映像と音楽でぼかしていましたが、僕には激しく惨いものに見えました。まるで古典落語のような下町の風情を挟みつつ、愛に溢れた素晴らしい家族の絆を描き、最後は世間の胸倉を掴んできた是枝監督・・・皮肉を超えた怒りとも言える今作品のテーマは観ていて辛くなる人も多いかもしれませんが、1度は観るべき傑作である事は間違いありません。

是非万引きではなく、家族に注目してご覧ください。

「万引き家族」の視聴方法

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同じく家族を描いた重い映画なら葛城事件は如何でしょう?実際に起きた殺人事件をモデルにしていてかなり考えさせられますよ!

では、良き映画の時間をお過ごしください。