映画「霊幻道士」あらすじ、感想【キョンシーブームの火付け役!】

霊幻道士

1986年公開。原題は「僵尸先生」香港のゴールデン・ハーベスト制作の映画です。

今作品は80年代に日本でも大旋風を巻き起こしたキョンシーブームの火付け役で、映画以外にもドラマやゲームなど様々な物が作られました。日本公開版ではキョンシーの跳ねる時に独自の効果音が付け足されていたり、日本語吹き替え版では役名も違っていたりします。今観たら色々と粗雑なところもありますが、そんな細かい事は気にせず笑って絶叫できるホラーコメディですよ!

本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想、視聴方法も記載しています。

ジャンル:ホラーコメディ
作品時間:97分

作品情報

そもそもキョンシーとは中国の有名な妖怪で、中国語では僵尸と書きジアンシーと読みます。

元々はサモ・ハン・キンポーが監督・主演した妖術秘伝・鬼打鬼という香港映画から今作品は生まれました。よく混同されますが、テンテンやスイカ頭などが出てくるシリーズは幽幻道士来来!キョンシーズといって台湾の亜流キョンシー作品となります。

あらすじ

ある日、ガウ道士は街の富豪ヤンから父親である先代のお墓を移したいと相談される。しかし墓を掘り起こしてみると20年間も埋葬されていたはずの遺体は、風水的に誤った方法で埋葬されていた為、既にキョンシーになりかけていた。危険と判断したガウ道士は遺体を引き取り処置を施すが、弟子のセンとモンのミスによりとうとう完全なキョンシーとなってしまう・・・。

キャスト、スタッフ

監督 – リッキー・ラウ
脚本 – シートゥ・チャホン
製作 – サモ・ハン・キンポー

ガウ道士 – ラム・チェンイン
セン – チン・シュウホウ
モン – リッキー・ホイ

ティン(ヤンの娘) – ムーン・リー
ウェイ隊長 – ビリー・ラウ

ヨッ(女幽霊) – ポーリン・ウォン
ヤン – ウォン・ハー
道長 – アンソニー・チェン

先代キョンシー – ユン・ワー

ユン・ワーはブルース・リーから直々に指名されてスタントをしていました。カンフー・ハッスルの大家(夫)役の人と言えば思い出す人も多いんじゃないでしょうか?

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • 道教の文化が観ていて楽しい
  • カンフーとキョンシーの相性は最高!
  • 道士といえばラム・チェンイン

キョンシー映画というジャンル

この映画は今の世代が観ても面白いんだろうか?

はっきり言って今の映画に比べたら出来はよくない。画質は言うまでもないし、無駄にセリフで状況や心情を説明しまくってたり、ストーリーもご都合主義な点がちらほらあるし強引なドリブルをかましまくっている。「所詮あの時だけのブームだったんじゃないの?」と質問されたら、僕は聞こえないフリをするかもしれない。

大体プロット自体がニッチすぎる。まずホラーの時点で怖いのが苦手な人は敬遠するだろうし、コメディ要素も特段笑い転げるわけではない。そして何よりも・・・古いwもはや古典の向こう側だ。何だったらキョンシーというキャラクター自体、今の日本では知らない人の方が多くなってきてる可能性まである。

でも間違いなく日本中が夢中になった時代があるのだ。

信じられないかもしれないけど嘘じゃない。当時の子供達はキョンシーごっこをして手のひらに文字かいて「はっ!」とか叫びながら遊んでいたんだよ。道士役を巡ってガチ喧嘩して泣き叫んでいた子だっている。お面などのグッズもバカ売れだったんだ。正直言うと、当時は今作品ではなくて台湾の亜流キョンシー作品である幽幻道士来来!キョンシーズの人気がすごかったんだけど・・・ただ、この霊幻道士が原点なのは間違いない。

そもそもキャラクターがそのままジャンル化したのなんてゾンビキョンシーくらいじゃないか?それだけでも映画史に残る伝説的アイコンである事は紛れもない事実だ!

で、結局この映画は面白いのか?

出来がよくないだの、ご都合主義だの、散々言いたい放題言ったけど・・・これがめっちゃくちゃ面白い。もう人生で定期的に観たくなるくらい面白いんだw

面白い理由は妙な説得力がある設定

出来がよくないと言ってるのに何故面白いのか?

雑なシーンも満載だし、特にコメディターンは笑いの質も古臭いから観ていて恥ずかしくなるレベル・・・個人的には好みだけど、世間一般的には結構きついものがあるかもしれない。でもホラーターンは意外としっかりできている。ただキョンシーが怖いというだけじゃなく、シンプルだけど筋の通ったストーリーだし、道教の風習や風水による易(占い)といった中国古来の価値観が作品全体に浸透していて、独特の雰囲気が作られている。

そして何よりも、道士という生業がかっこよくて実に面白い。

今作品はラム・チェンイン演じるガウ道士が道教の様々な文化や作法を見せてくれる。月の光をあてた銅銭が剣になったり、鳥の血やヘビの肝を使った呪術感のある調合だったりw日本人には馴染みがないんだけど、だからこそ魅力的な異世界のお話に感じられるんだ。

ちなみにキョンシーの額に張られているお札には勅命と書かれている。正確には[勅命「〇〇せよ」急急如律令]と記載されていて、簡単に言えば勅命とは皇帝の命令という意味で、急急如律令とは「急いでやれ!」という意味。その中に書かれている事を絶対に守らなければいけない力を持つお札なんだ。多分キョンシーのお札には「動くな!」みたいな事が書かれてるんじゃないかなw

少し話が逸れたけど、とにかく今作品にはこうした中国の古き良き文化を沢山列挙してくれるおかげで、非現実的なファンタジーのはずなのに「なるほど!」と思わせる妙な説得力があるんだ。だからキョンシー化を防ぐ為にもち米が効くとかいう冷静に考えたら意味不明な設定も、何故か当たり前のように「そういうものなんだろな・・・」と納得してしまうんだよねw

大味の展開のくせに、プロットは意外と細かい・・・だからこそキョンシーとの対峙が面白くなっているんだ。

コミカルなのにハードなカンフーシーンは最高!

カンフー殺陣シーンは本当に楽しい。

今ではジャッキー・チェンジェット・リーの大躍進で中国的カンフーアクションは世界標準となったけど、出発点は間違いなく今作品も制作したゴールデン・ハーベストからだ。もちろん普通のカンフー映画も十分に楽しいし見応えがあるんだけど、個人的にキョンシー映画のカンフーはより好きかもしれない。なんていうかジャッキー映画のようなコミカルなアクションが満載なんだよねw

今作品のクライマックスも圧巻で、キョンシーから逃げながら試行錯誤したり、物を使った面白い攻防は相変わらずの安定力wただただ観ていて楽しい。最後はシリアスなアクションになっていって、2階から普通に落ちたり、心配になるくらいのファイアースタントもある。こうした独特な緊張感や高揚感のあるカンフーシーンは最高だね。終わらせ方が雑なのはご愛敬wこういうのでいいんだよ!と言いたくなる素晴らしいエンターテインメントだ。

確かに今作品は前述したように粗雑なシーンも多いし大味な映画だ。でもちゃんと怖くて笑えて見応えもあるのは間違いない。不思議な魅力と中毒性を持っているキョンシー映画の原点を評価しないわけがないよ!誰に何て言われようと名作だと僕は思うね。

眉毛が繋がってるのにかっこいいラム・チェンインを是非ご堪能あれ!

評価、視聴方法

ラム・チェンインよ、永遠に

97年に肝臓癌で44歳という若さで逝ってしまいました。

この人は元々ブルース・リーから絶大な信頼を得ていた優秀なスタントマンで、サモ・ハン・キンポーのチームに入ってから俳優業をスタートしました。一見真面目そうに見えるけど、コミカルな演技もしちゃうお茶目で素晴らしい映画スターの1人だったと思います。

ラム・チェンインのアクションって派手さはなくても品があるというか、観ていて綺麗なんですよね。今作品では白髪のお爺ちゃんに見えて貫禄がありますが、この時まだ30代前半というwもし今も生きていたら本当の老師的な役をしていたんでしょうか。是非スクリーンで見てみたかったものです。

キョンシー映画は霊幻道士派幽幻道士派でどちらが好きか分かれるんですけど、僕はこのラム・チェンインがいるので霊幻道士の方が好きですねwただ両方面白いですから、どちらから観てもいいと思いますよ!

「霊幻道士」の視聴方法

Amazonプライムなら年間プラン4,900円(税込)または月間プラン500円(税込)で映画の他にも松本人志のドキュメンタルアニメprimeオリジナル作品なんかも見放題なのでお得ですよ!

「霊幻道士」をamazonで観る

他のカンフー映画が観てみたくなったならドニー・イェン主演のカンフー・ジャングルなんていかがでしょう?すごいアクションが堪能できますよ!

では、良き映画の時間をお過ごしください。