日本では2014年に公開された中国・香港の合作映画。
天竺へと旅する有名な西遊記・・・その前日譚をチャウ・シンチーが描いたハートフルコメディ。
日本でも話題になった少林サッカーやカンフーハッスルを撮った監督さんでドラゴンボールの熱烈なファン、今作品も相当影響を受けたと語っています。ちなみに今作品を絶賛した鳥山明がポスターを書き下ろしました!すごいコラボですねw
笑いのツボがかなり日本に近いので、チャウ・シンチー監督作品はどの映画もオススメ!映画を日ごろ観ない人でも全然楽しめちゃう、ゆる~い極上のコメディ作品ですよ!
本記事ではキャスト情報や映画の視聴方法、そして監督チャウ・シンチーの解説を含めて感想も書いてます。
もくじ
作品情報
特に賞は獲ってないんですが、今作品は一本の映画として非常に面白く仕上がっていますよ。
監督のチャウ・シンチーは日本だと少林サッカー(2001年)で有名になりましたが、90年代は中国でブームが起こる程の大人気俳優さんで数多の映画に出ていました。ここ数年はのんびりとした活動になってますが、監督作品はどれもコメディタッチで笑えるものが多いです。
チャウ・シンチーの主な監督作品
- 食神
- 喜劇王
- 少林サッカー
- カンフーハッスル
- ミラクル7号
- 西遊記~はじまりのはじまり~ ← 今作品
- 人魚姫
過去にハリウッドで制作されたドラゴンボールの実写映画があって、チャウ・シンチーも監督をやりたがるほど意欲を見せており、実際に製作には携わっていたんですが・・・全く意見を聞かない制作会社にぶちぎれてサジをなげちゃいました。鳥山明原作でもう1回やってくれないかな・・・チャウ・シンチー監督なら絶対観るのに。
あらすじ
心優しい青年・玄奘は妖怪の「善の心」をわらべ歌で呼び覚ます事で退治する妖怪ハンター。川で人を食い殺す化け物(後の沙悟浄)や、山奥で人を襲う豚の化け物(後の猪八戒)など凶悪な妖怪と戦う中、美人の同業者・段と出会い好かれてしまう。妖怪退治と修業に勤しむ玄奘は師匠から封印されている孫悟空に会いにいくよう命を受け、いざ五指山の麓に向かう。とうとう出会えた孫悟空、しかし久々の来訪者に喜ぶ彼の姿は伝説とかなり違ったが・・・実は?
キャスト、スタッフ
監督 – チャウ・シンチー
脚本 – チャウ・シンチー、デレク・クォック、ローラ・フオ、ワン・ユン、ファン・チーチャン、ルー・ゼンユー、リー・シェン・チン、アイビー・コン
製作 – チャウ・シンチー、アイビー・コン
玄奘 – ウェン・ジャン
段 – スー・チー
孫悟空 – ホアン・ボー
沙悟浄 – リー・ションチン
猪八戒 – チェン・ビンキャン
虎筋蟷螂 – シン・ユー
足じぃ – チャン・チャオリー
空虚王子 – ショウ・ルオ
スーメイ – クリッシー・チャウ
玄奘の師匠 – チェン・シハン
この映画は西遊記、そしてその主人公である孫悟空、その悟空を演じたホアン・ボーは要注目です。彼が出てくるシーンはゲラゲラ笑えちゃいますよ!
※ここからはネタバレもあるのでご注意ください。
感想
- 笑いとシリアスのバランスが秀逸
- 最高の笑えるスー・チーとホアン・ボーのシーン
- 雑に見えて意外としっかりしたストーリー
チャウ・シンチーらしい笑いの配置
良くも悪くも少林サッカーと変わらない、いつものチャウ・シンチー。
いや、DISってないからね?むしろ変わらずこのタイプの映画を量産してほしいというのが僕の願いだよ。
チャウ・シンチー監督はいつもファンタジックなお話を描くけど、そのファンタジーの中で生きている登場人物達にしっかりとしたリアリティを持たせてくれる。これがめちゃくちゃ大切な事で、ここをミスってる作品が俗にご都合主義的になり駄作と言われてたりすると思う。
今作品も西遊記とまさにファンタジーを描いてるんだけど、その中身は結構しっかり練りこまれていて、三蔵法師こと玄奘が孫悟空、沙悟浄、猪八戒を連れて天竺に旅立った経緯や妖怪を倒す方法、わらべ歌の本来の意味というか使い方の解釈などが丁寧に描かれており・・・なるほどなあ!と感嘆してしまった。
それと相変わらずのバランス感覚!コントみたいに描くいつもの雑でゆる~い笑いと、ストーリーの本筋になる真面目パートの程よい使い分け、実に心地良くて個人的には非常にツボだ。
実は少林サッカーやカンフーハッスルも同じフォーマット・・・というかストーリー構成はあまり変わらなかったりする。まずツカミ、そして主人公の平凡な日常を描きながらクライマックスへの布石を散りばめ始める。で、最後はアクセル全開でぶっぱなしまくって大団円という綺麗な流れ。基本的にはこの王道からずらさない。ただ、こういうコメディしか作れない人なのかというと違う、ミラクル7号ではヒューマンドラマにかなり寄せて感動作に仕上げてきたりする。
ちなみに今作品では出演してないけど自身でもよく主演していて、役者としてもコミカルからシリアスまでまあ器用に演じ分ける・・・何が言いたいのかというと、このチャウ・シンチーという人は映画のセンスが抜群という事!特に映画での笑いの取り方が上手すぎる。
僕の中ではガイ・リッチーとチャウ・シンチーが全世界で喜劇、コメディというジャンルの2TOPだと思っている。
孫悟空を演じたホアン・ボーが面白すぎる
この孫悟空はクセになるね。
今作品は最初から最後まで適度にお笑いパートが入っているけど、特にホアン・ボー演じる孫悟空が登場してからの10分間は異常なまでに面白い。特にスー・チーとのシーンはまるでNGシーンをそのまま使ったかのようなバカバカしさがあり、本当に台本があるのかと疑うレベル。
斉天大聖・孫悟空と言われ、悪の限りを尽くした極悪妖怪とは思えないラフさ・・・まるで六本木のクラブとかにいそうなチャラ男のようにスー・チーを口説くんだけど、おじさんなのに何故あんな表情と演技ができるのかw途中からスー・チーが素で笑っちゃったのをそのままOKカットにしただろ!と言いたくなるくらい自然体で、何度でも繰り返して観たくなってしまうシーンだ。
「500年前に大日如来と喧嘩してねw」
こんな面白いセリフ、そうないでしょ。それを500年ぶりに人と会った嬉しさの中、ニヤニヤしながら語る孫悟空の可愛いこと面白いこと・・・もはや上質なコントだ。にもかかわらずホアン・ボーは孫悟空らしく猿のような仕草をしているもんだから、前述したファンタジーの中のリアリティがちゃんと出ている。
特にこの孫悟空のインパクトが強いから特筆したけど、基本的に今作品に出てくる登場人物達は見事に全キャラクターがこのリアリティをまとっていて、なんというか「あ、確かに孫悟空ってこんな感じだったのかも」なんて思わせてくるんだよね。そもそも架空なのに・・・。
1度チャウ・シンチー達の企画会議に出てみたいものだよ。恐ろしい位面白いアイデアが飛び交いそうw
クライマックスは相変わらずの盛り上がり
チャウ・シンチー監督はいつも最後がうまい。
他作品でもまず失敗しないラストを用意してくる。その上手な盛り上げ方の要因の1つとしてBGMのセンスと挿入タイミングがあると思う。特に京劇の音楽をよく使う傾向があるんだけど、今作品はまさに京劇・西遊記!すっごくフィットしていて孫悟空の覚醒シーンは鳥肌モノだ。
加えて、やっぱり名作には必ずある要素・・・それは巧妙な緩急のさじ加減。特にチャウ・シンチー作品だと笑いとシリアスの使い分けんもあるけど、クライマックスの戦闘シーンはこれまでのノンビリゆる~い作風から一気に加速し、それはもうカタルシスさえ感じるほどのアクセル全開感!こんな孫悟空に勝てるわけがないと思わせる圧倒的な強さを描いておいて、さらにもう1個上を納得のいく上で持ってきた。対日如来と孫悟空の正義と悪という構図を描き、まさにラストバトルといった貫禄のある映像だった。
しかもこれを、たった20分弱でごちゃごちゃせず綺麗にまとめあげた編集力・・・素晴らしすぎるよ。
で、ラストシーンに昔の日本ドラマGメン’75のテーマソングをかけてくる小粋っぷりww日本人としてはもちろん嬉しさも感じる演出だけど、チャウ・シンチーの中で最後はこの音楽だろ!ってなったんかな・・・。マジで頭の中でどういう絵を描いてるのか見てみたいね。本当に底が知れない。
控え目に言って大衆向けの映画でここまでの完成度を誇る作品ってそう無いと思う。最高のエンターテイメントと言える超傑作だと約束するから、是非まだ観てない人はチャウ・シンチーの描く孫悟空を体感してほしいね。
評価、視聴方法
続編について
本記事を書く為、久しぶりに観ましたがやっぱバカ面白いですね!
実は今作品の続編ですが、ちゃんとありますよ。ただ・・・観ない事をオススメしますw
チャウ・シンチーは制作と脚本に携わってますが、キャストはフルチェンジ、監督もツイ・ハークとなり正直かなり別物作品みたくなってます。別にツイ・ハークも嫌いじゃないんですが・・・いやでもこの続編は失敗だったと思いますね。確かに今作品のラストって「この先どうなるのか観てみたい!」と思わせるんですけど・・・ここから先はただの西遊記ですからね。独自のストーリーを考えるのはいくらでもできる題材でしょうけど、やっぱり今作品が面白い理由ってチャウ・シンチーが監督だったからというのはもちろんですが、前日譚という要素が大きかったと思うんですよね。
この映画を観て「面白い!」と思った方は、むしろチャウ・シンチーの過去作品を観たほうが満足できると思います。
そんなチャウ・シンチーの次回作なんですが・・・実は新喜劇之王という映画を2019年2月に中国で公開しています。ただ悲しい事にあまり評判はよくないようですね。
理由は実際に観てみないと詳しく言えませんが、結構シリアスで悲しいお話との事なので、これが原因かもしれません。世間がチャウ・シンチーに求めているもの・・・それは間違いなくコメディですからね。このままだと日本公開はないかもしれません。ただ個人的にはコメディ要素を結構削ったミラクル7号だって全然良かったので新喜劇之王も観てみたいんですけども。
こういう時こそamazonプライムとか持ってきてくれないかな・・・なんて密かに願っていますw
「西遊記~はじまりのはじまり~」の視聴方法
Amazonプライムなら年間プラン4,900円(税込)または月間プラン500円(税込)で映画の他に松本人志のドキュメンタルやアニメ、primeオリジナル作品なんかも見放題なのでお得ですよ!
こういったコメディ、喜劇というジャンルは大好物なんですけど、もし僕と同じように気に入った方がいればガイ・リッチー監督のスナッチもハマるかもしれません!
では、良き映画の時間をお過ごしください。