映画「セブン」あらすじ、感想【胸糞と語り継がれる衝撃のラストシーン】

セブン

デヴィッド・フィンチャー監督の2作目。

ネットではモーガン・フリーマン黒幕説や、七つの大罪においてトレイシーの死をどう捉えるか?など色々な解釈や諸説が飛び交っているみたいですね。

実は当時の映画配給会社はラストシーンをサマセットが射殺する案を押していたそうですが、フィンチャーが断固突っぱねたそうですよ。ありがとう、フィンチャー!僕はあのラストシーンじゃなければ、ここまで語り継がれる作品になっていなかったんじゃないかと思います!

本記事ではあらすじ、キャスト情報の他に個人的な感想とラストシーンの解釈を書いています。視聴方法も最後に記しておきますね。

ジャンル:クライムサスペンス
作品時間:127分

作品情報

当時は全米1位を守り続けていて気が付けば総収益は3億2730万ドル・・・1995年の7番目となる記録をたたき出してます。ちなみにアカデミー賞では編集賞ノミネートだけっていう・・・wですが、別に映画として完成度がいまいちという事じゃないんです。むしろめちゃくちゃ完成度高いですし、現在では評価もすごい高いですからね!

このセブンという作品が映画史に残した爪痕はとてつもなく、撮影方法やスタイリッシュな映像は当時かなり衝撃的で、何人の映画監督が影響を受け模倣したかわかりません。というかフィンチャーはセブン以外にも色々な作品で斬新な事をしていて、実は結構な勢いでパクられてオマージュされています。

逆に今の若い人達の中には「別にどこにでもある映画じゃね?」と思った人もいるようですが、それはこのセブンこそがダークサスペンス映画の新しい教科書となったからです。特に韓国映画なんかはすごい影響を受けているんじゃないでしょうか?セブン的な胸糞ダークサスペンスが好きな人はハマる映画多いと思いますよ。

フィンチャー作品はどれもオススメなので、良かったらセブン以外も観てみてください!

あらすじ

雨の降り注ぐ日、定年退職まであと1週間と迫ったベテラン刑事サマセットと血気盛んな新人刑事ミルズは、ある死体発見現場に急行した。死体は信じられないほど肥満の男であり、死因は食物の大量摂取とその状態で腹部を殴打されたことによる内臓破裂・・・状況から何者かに手足を拘束され、銃で脅されながら食事を強制されていたことが判明、殺人事件と断定される。そしてサマセットは犯人が脂で書いたと思われる「GLUTTONY(暴食)」の文字と、事件の始まりを示唆するメモを現場で発見する・・・。

キャスト、スタッフ

監督 – デヴィッド・フィンチャー
脚本 – アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー

デビッド・ミルズ – ブラッド・ピット
ウィリアム・サマセット – モーガン・フリーマン
トレイシー・ミルズ – グウィネス・パルトロー
警部 – R・リー・アーメイ
マーティン・タルボット検事 – リチャード・ラウンドトゥリー
マーク・スワー弁護士 – リチャード・シフ
ジョン・ドゥ – ケヴィン・スペイシー

ブラッド・ピットはここから一気にスターダムを駆け上がりましたね。今作品でもめちゃくちゃカッコイイですよ!

ちなみに公開前、ケヴィン・スペイシーは「俺の名前をプロモーションで出すなよ」と言っていて観客を驚かそうとしていたんだけど、映画会社の人間が口をすべらしたからブチ切れたそうですw

※ここからはネタバレがあるのでご注意ください。

感想、評価

  • サマセットの図書館シーンが秀逸
  • 2人の相棒 vs 凶悪な敵という構図の完成形
  • 王道で進行し、最後は裏切ったフィンチャー

スプラッター映画のような恐怖映像をフリに使う

もう何度目の鑑賞かわからないくらい観てる。

でも何度観ても全然慣れないような結構グロい映像を序盤から大盤振る舞いしてくる今作品。まるで大失敗した1作目エイリアン3のストレスを発散してるかのようなフィンチャーの悪ふざけである。

  • GLUTTONY(暴食)
  • GREED(強欲)
  • SLOTH(怠惰)
  • LUST(肉欲)
  • PRIDE(高慢)
  • ENVY(嫉妬)
  • WRATH(憤怒)

テーマとなっている七つの大罪、これに沿って次々と起きる殺人事件をサマセット(モーガン・フリーマン)とミルズ(ブラッド・ピット)が解決していくわけだけど、まあ・・・どいつもこいつも凄惨な殺され方をしている。冒頭のスパゲティを食べる事を強制されながら殺された人のシーンなんて、まだ汚物の方がマシと言いたくなるぐらいグロテスクな映像だ。一応SLOTH(怠惰)の罪で罰せられた人は死んでなかったけど、光を見た瞬間に死ぬ体にされてしまうとか精神的なグロさが尋常ではない。しかもフィンチャーお得意の光を飛ばしたフィルム映像のようなダークな雰囲気が、心地悪い不安感をより加速させてくる。そんな視覚的にも精神的にも心をえぐるようなシーンと雰囲気が冒頭から25分も続く。

ただフィンチャーは決して観客に嫌がらせをしてるわけじゃない。何ならこの25分で不安、恐怖、絶望感を丁寧に表現して「この映画はイカれた殺人事件のお話です!」と元気に自己紹介してくれてるわけだ。

そして僕がこのセブンにおいて1番好きなシーンがこの25分後にくる。定年間近のサマセットは口ではイヤイヤ言いながらも根っからの刑事であり、今回の殺人事件も冷静に捜査していき、犯人の思想・背景を理解する為に夜の閉館した図書館へと向かう。

この図書館シーンだけ切り取ったら今作品の持つ負の雰囲気なんて全くなく、まるで別の映画を観ているかのような気がしてくる。本に囲まれた中を歩くモーガン・フリーマン、仕事をサボってポーカーを嗜む警備員たちの笑い声・・・その中で鳴り響くバッハのG線上のアリア。冒頭からの恐ろしい25分は今作品にとって悪夢のような現実だが、この夜の図書館はまるでサマセットが思い描く理想の世界、夢を描いているように美しい映像だった。

激しい映像にクラシック音楽を乗せるというミスマッチなコントラスト・・・2001年宇宙の旅キューブリックが表現した原始人が初めて道具を使うシーンなんかもそうだけど、こういうのはセンスが如実に出ちゃうよね。今ではそこら中に転がっている表現法かもしれないけど、今作品では冒頭からの25分のグロ描写がフリとして効いているから、余計図書館のシーンが際立って素晴らしかったね。

2人の相棒 vs 凶悪な敵という構図の面白さ

今作品は沢山のブロガーが記事を書いているし、レビューサイトでも沢山の人の意見がある。

そして、やっぱりどうしても七つの大罪と事件の紐づけ・・・というか論理性にだけ着目してる人が多い。確かにラストシーンの衝撃が強いし、その解釈によって大きく評価が変わるものだから気持ちはよくわかるんだけど、この2人の相棒 vs 凶悪な敵という構図も同じくらい評価されるべきだと思う。

日本ではドラマのケイゾクトリックスペックといった堤幸彦作品を思い出すと理解しやすいかも。今作セブンでは熟練と新米、白人と黒人(別に差別的な意味じゃなく)、情熱と冷静という様々なコントラストが全てうまくいっていて本当に素晴らしかった。この2対1の構図って本当の元ネタはなんなんだろね。一応、僕の中ではレオンが元祖だと思っている。あれもレオン+マチルダ vs スタンスフィールドという最高にワクワクする構図で面白かった。

少し話が脱線したけど、このサマセットとミルズのタッグも本当に良かったし、相対するジョン・ドゥという超凶悪な殺人犯・・・このキャラクターも非常に良かったと思う。どの殺人もかなり猟奇的なもんだからイカれたサイコパス殺人犯というレッテルが張られやすいけど、実はチープな人間性なんだよね。

一応、ジョン・ドゥには罪を犯している人間に対しての罰というしっかりとした動機・・・というか正義があるが、それは彼の劣等感から生まれた自己肯定の為の正義であって実はかなりもろいメッキなんだ。車内でサマセットに「もし本当にお前が何か偉大な力に選ばれたなら、何故殺人を楽しんでる?」と質問された時、ジョン・ドゥは答えられずミルズにつっかかって話を逸らすシーンがある。これこそがジョン・ドゥの底の浅さを表現しているんだけど、どうしても猟奇的な殺人の印象が強いせいか、頭の良いサイコパス殺人犯と誤解してしまう人が多く、この誤解こそラストシーンを曲解してしまう人が続出した最大の原因なんじゃないかと思う。

モーガン・フリーマン黒幕説に関しては絶対にあり得ないけど読んでいて逆に感心したよ。たかが映画1本でそこまで人に考えさせてくるフィンチャーに。

ラストシーンの解釈

映画史においてこれほど胸糞な終わり方はそうない。狂いそうになるほど救いのないラストシーンだけど、だからこそ今作品が今でも語りあいたくなるんだろうね。ただ解釈は至ってシンプルでOKだと思うよ。この映画は七つの大罪に沿って犯行が行われるわけだけど、時系列的にまとめると・・・

  • GLUTTONY(暴食)
    食欲を抑えられない肥満な男への罰として、死ぬまで食べさせ続け殺害
  • GREED(強欲)
    金の為に犯罪者を無罪放免にしてきた弁護士への罰として、1ポンド分の贅肉を自分の体から切り取るよう強要し殺害
  • SLOTH(怠惰)
    怠惰な生活をしてきた男への罰として、1年間暗い部屋でベッドに縛り付けて衰弱(死んではいないが、光を見たらショック死してしまう状態)
  • LUST(肉欲)
    娼婦への罰として、ある男を脅し男性器の形をした刃物で陰部を何度も刺し殺害
  • PRIDE(高慢)
    見かけだけで生きている美人モデルへの罰として、顔を八つ裂きにした上で睡眠薬と携帯を手に握らせて警察や病院に連絡すれば醜い顔で生き残れる状況を作りあげた挙句、自殺を選ばせるという間接的殺害

と、まあ一応ジョン・ドゥなりの正義のもと執行されている。残る2つのENVY(嫉妬)とWRATH(憤怒)はというと・・・

  • ENVY(嫉妬)
    綺麗な奥さんと幸せな家庭を築いたミルズに嫉妬した自分自身・・・つまり、ジョン・ドゥへの罰
  • WRATH(憤怒)
    奥さんを殺したジョン・ドゥに対して怒ったミルズへの罰

これもまた一応ジョン・ドゥなりには七つの大罪にハメこんでおり正義が通っているように見えるが、そうなると奥さんであるトレイシーの死、そしてトレイシーのお腹の中にいた赤ちゃんの死が説明つかないという事で、沢山の人が色々な解釈を出していた。

ただ前述したようにジョン・ドゥは車内でサマセットの質問をはぐらかしていて、そもそも殺人を楽しんでいるだけで「罪を犯してるものに罰を!」といった高尚な思考を持っているわけではない。車内で被害者たちの罪に対してミルズ達に説教ぶっていたのは、言うなれば自己洗脳の成れの果て・・・後付けの理由で自分に言い聞かせているだけなんだ。だから七つの大罪を完遂させる過程でおこる多少の矛盾(トレイシーの殺害)には目をそらす。でもだからといって今作品が稚拙になっていたり、矛盾が発生しているわけではない。

何故ならジョン・ドゥは嫉妬の罪だから。

社会全体に対して色々な劣等感をもち生きてきた彼の社会への嫉妬心・・・これこそが一連の殺人事件を引き起こした起因なのだ。

今回、本記事を書くにあたって改めて本作を鑑賞したんだけど、SNSなどで炎上してる有名人にここぞとばかり突っかかって正義を振りかざしている人達を思い出した。でも彼らをサイコパスとは思わないでしょう?ジョン・ドゥは七つの大罪の完遂の為に最後は自分も死ぬ決断をするくらい確かにイカれてはいたと思うけど。

この映画の最後のセリフであるサマセットの言葉

ヘミングウェイが書いてた「この世は素晴らしい、戦う価値がある」と。後の部分には賛成だ。

ただでさえ犯罪の日々の中、刑事という職業を務めてきて・・・とうとう定年目前のラスト7日間というタイミングにこんな凄惨な事件が起きたら、もはや神様だとか人間の本来の優しさなんか信じたくなくなるよね。

冒頭にも書いたように当時は時代背景もあって、配給会社はサマセットがジョンを射殺するストーリーでいこうと提案していたんだ。今では、あまりにも救いがない胸糞映画の筆頭とまで言われ語り継がれるセブンだけど、もし配給会社の提案を採用してたら・・・上記した七つの大罪への罰の執行は成立しなくなるし、2か月程度で誰もが忘れてた凡作になっていたかもしれないね。

デヴィッド・フィンチャーがこの秀逸なラストシーンをごり押してくれた事で生まれた傑作・・・さすがワンテイクを100回も撮り直すほどの完璧主義者だ!

まとめ、視聴方法

教科書のような構成からの裏切りはさすが

さすがミステリー・サスペンス系の王様的作品です。

今作品はブラッド・ピットグウィネス・パルトローケヴィン・スペイシーも当時は無名で知名度なんかありませんでした。加えて監督のフィンチャーもエイリアン3で大失敗した人というイメージ。それなのに爆発的に売れて評価された理由は、間違いなく映画としての完成度です。

冒頭の視覚的なグロさによるツカミから、図書館シーンやミルズ夫婦とサマセットの幸せな夕食シーンという癒しをはさみつつ、ラストのクライマックスへのギアの上げ方・・・もはや古典のように綺麗な構成でした。そこにきてラストシーンであの最高の裏切り方ですからね。最後ミルズが射殺せずに無事帰宅して、奥さんとの幸せな夕食シーンでエンドロールとかも全然ありえました。というか、そういう映画観た事あるでしょう?

初めて観た時、ミルズが射殺した瞬間は一瞬信じられなくて思考が止まりましたよ。撃っちゃうんだ・・・みたいな。でも映画館出た後に「確かに撃たないと七つの大罪が成立しないって事か・・・」なんて子供ながらに感心したのをよく覚えてますw

とにかく完成度の高い超傑作ですから1度は観る事をオススメします!

「セブン」の視聴方法

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今作品を観て面白いと思えた人は他のフィンチャー作品もハマるかも?どれも何かしら裏切って僕達をだましてきますから本当に楽しめますよ。

フィンチャー監督 x ブラッド・ピットならファイト・クラブも是非!

では、良き映画の時間をお過ごしください。