リュック・ベッソンのハリウッド初監督作品です。
当初はそこまで期待されていなかったのですが、予想を遥かに上回る高評価で、主役のジャン・レノはここから一気にハリウッド進出、そして今では大スターとなったナタリー・ポートマンのデビュー作でもあります。
リュック・ベッソン自体は、正直そこまで好きな監督ではないんですが・・・今作品はもう50回以上観てますw主役の2人もいいんですけど、個人的には何よりもゲイリー・オールドマンの演技!僕はこの映画で初めて観てからずっと大ファンでして、まるでジョーカーのような狂気と色気は凄まじいですよ。超必見です!
[ジャンル]クライム、ラブストーリー[作品時間]110分(完全版133分)
[公開日]アメリカ:1994/11/18|日本:1995/3/25
- 予告動画やキャスト情報
- ネタバレありの感想
- 評価と鑑賞方法
もくじ
作品情報
批評家からは渋い反応のようですが、正直なところ・・・少女が殺し屋に恋をする物語ですから、これを評価したと思われたくなかったんじゃないかと割とマジで思ってますw実際、当時はマチルダ(ナタリー・ポートマン)が暗殺稼業のお手伝いをする描写に対して辛口コメントも出たそうですよ。
あらすじ
イタリア系移民のレオンは、プロの殺し屋としてイタリアンマフィアのボス・トニーからの依頼を粛々とこなす日々を送っていた。ある日、レオンの住むアパートの隣室で派手な銃撃音が鳴り響く。どうやら麻薬の運び屋をしていた男がブツを横領した為、麻薬取締局が踏み込んだようだ。その男の娘であるマチルダは、その最中に買い物から帰宅・・・家族もろとも殺されている現場を目にした彼女は、とっさにレオンの家の呼び鈴を押して助けを求めた。麻薬取締局からの下手な疑いを避ける為にレオンはマチルダを保護してしまうが、果たして・・・
スタッフ・キャスト
監督・脚本 – リュック・ベッソン
主題歌 – スティング「Shape Of My Heart」
レオン・モンタナ – ジャン・レノ
マチルダ・ランドー – ナタリー・ポートマン
ノーマン・スタンスフィールド – ゲイリー・オールドマン
マルキー – ピーター・アペル
ウィリー・ブラッド – ウィリー・ワン・ブラッド
ベニー – キース・A・グラスコー
スタンスフィールドの部下 – ドン・クリーチ
ジョセフ・ランドー – マイケル・バダルコ
マージ・ランドー – エレン・グリーン
ファットマン(ジョーンズ) – フランク・センジャー
トニー – ダニー・アイエロ
主要3人がギラギラと輝く作品ですが、イタリアンマフィアのボスを演じたダニー・アイエロも良かったですね!あのレストランのシーンはどれも大好きです。
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 凸凹コンビvs凶悪という発明
- 名シーンがオンパレード!
- 良い映画観た感が強い名作
映画史上最高に観やすい構図
この構図は発明だ!
今作品の主人公レオンとマチルダの2人はどのシーンでも強いインパクトがある。それはリュック・ベッソン監督が作り上げたキャラクター自体にとてつもない魅力があったのはもちろんだけど、演じたジャン・レノとナタリー・ポートマンの圧倒的な個性がさらに底上げしたように思う。そもそも2人の主人公で物語が進むバディムービーは遥か昔からあるし、凸凹コンビというのも別に珍しくはない。でも当時は、間違いなく映画界に新しい形を提示したように感じたんだ。
何が新しい形かというと、それは2人の主人公があまりにも脆く弱かった事。
これまでのバディムービーといえば主人公は基本的に強さの象徴だ。善悪なら善、陰陽なら陽・・・ざっくり言えばヒーロー的だった。でもレオンとマチルダはどちらも不完全なキャラクターなんだよね。確かにレオンはものすごい強い殺し屋だけど、心はまるで少年・・・映画館でジーン・ケリーに見とれてる姿なんて何とも愛らしいし、一方でマチルダは一生懸命大人ぶってるけど、それが余計に少女らしさを放ってくる。
そんな2人の前にはばかる圧倒的な悪・スタンスフィールド!演じたゲイリー・オールドマンは怪演なんてもんじゃない。
ケミカルを口にいれたシーンなんか誰もが震えたはずだ。あの据わった眼光はたまんないよねw誰もが一発で「こいつは関わっちゃいけないヤツだ」とわかるし、その後の皆殺しオーケストラにはあまりの狂気に唖然としてしまう。極めつけが部屋から出てきたお婆ちゃんに対しての銃撃による恫喝wwたった数分で観てる人間全員に底知れない恐怖を感じさせた最高に狂ったシーンだった。
そんな映画史でも屈指の狂った悪人と、ガラスの様に脆い2人の主人公・・・この構図が発明だと言いたいんだ。
今作品には他にも魅力的な脇役が色々出てくるけど、レオン&マチルダvsスタンという強烈にインパクトのある3人の構図が素晴らしすぎて、気が逸れないというかストーリーを追いかけやすくなってる事がまた良い。ちなみにこの構図はその後の数多の作品に影響を与えたと思う。日本で言えば堤幸彦演出のドラマ・トリックやケイゾクなど、映画だったら少しテイストは違えどドラゴン・タトゥーの女なんかはレオンとマチルダを彷彿とさせるよね。
ちなみに何度も鑑賞していると結構びっくりするのは、スタンスフィールドの登場シーン・・・実は最初と最後くらいでそこまで頻繁に出てこないんだよね。にもかかわらず、ここまで強く印象付けた監督リュック・ベッソンと演じたゲイリー・オールドマンの功績は偉大過ぎる。
僕が知る限り、ここまで観やすい映画は他にない。
何故レオンだけずば抜けて名作なのか?
リュック・ベッソン監督は似たような作品を何本も撮っている。
好きな人には申し訳ないけど、この監督が殺し屋+少女+復讐というテーマを手に取ると、もはや焼き増しに思えてくるレベル・・・ほぼ同じような映画だ。でもこのレオンだけは歳月が経った今でも名作と語り継がれてるよね。その理由の1つは、この監督の美的センスがバッチリとハマったからだと思う。
例えば同監督のフィフス・エレメントはそのセンスが飛びぬけ過ぎてるせいか、さすがに「一体何を見せられているんだろう?」という気持ちになっちゃったけど、今作品はまるで美術館に飾られてるアートのようだった。
レオン「床より明るい色の服は着るな」
屋上でスナイパーライフルの練習をするシーンでのセリフ・・・僕は観る度に心の中で「レオン、お前はいつも目立ってるぞ」と呟いているけど、ニューヨークのビル群と太陽光、影、そしてレオンとマチルダ・・・驚くほど美しいシーンだ。街並みや部屋がどことなくセピア調で、そこに立つお洒落なレオンとマチルダはどのシーンでも映えてて、まるで芸術作品にも見えてくる。
殺し屋+少女+復讐。
このテーマが作り上げたシリアスなストーリー、あまりにも脆く不安定な2人の主人公vs凶悪なラスボス・スタンスフィールドという発明的構図・・・冷静に考えたら今作品が描いているものは結構重いんだよね。でも、この重さに対してリュック・ベッソン監督の美的センスが奇跡的な対比になっていたと僕は思う。
これがレオンを名作まで押し上げた理由の1つ・・・そして最大の理由はやっぱり例の男だ。
ゲイリー・オールドマンという最高の役者
スタンスフィールド・・・なんと恐ろしい!このキャラは長い映画史でも5本指に入る悪役だ。
というか演じたゲイリー・オールドマンが上手すぎるんだよ。ただでさえどんな役もこなしてしまう素晴らしい役者だけど、こういう狂気の悪役をやらせたらピカイチ!間違いなく群を抜いてる。特に今作品のスタンというキャラクターはこの人以外に考えられないね。
実際、他の役者がやってたら・・・誰ができると思う?
狂っていて怖くて、でも頭はキレてて且つかっこよく、ちょっとだけ可愛らしい一面があり、その上で嫌いになる位のむかつく奴じゃないとダメなんだ。例えばブラッド・ピットなんかも狂気キャラがお上手だけど、ファイト・クラブのタイラー・ダーデンみたくカリスマ性が出すぎちゃう気がするwファイト・クラブの相方で僕が1番好きなエドワード・ノートンなら出来そうな気もするけど、狂気が強く出すぎちゃいそうw
まるでヒース・レジャーのジョーカーのようなバックグラウンドの見えない怖さがあるのに、どこか現実的な一面も見え隠れするギラギラとしたエグみのある悪役・・・はっきり言ってスタンがゲイリー・オールドマンじゃなかったら、今作品はここまで名作と語られてなかったんじゃないか?とさえ思えてくる。ここまで強いインパクトのある悪役なのに、レオンとマチルダという主人公2人をギリギリ喰ってないというのもまた・・・この役者の底が見えないところだ。
スティングの「Shape Of My Heart」が流れるエンドロール・・・今作品は何故かバットエンドの映画を観た時の余韻じゃなくて、不思議とハッピーエンドの余韻なんだよね。僕はこの原因をスタンスフィールドという最凶の悪役を絶妙に演じきったゲイリー・オールドマンのおかげだと思ってるよ。
映画史に残る素晴らしい役者だ!
評価・鑑賞方法
名言や名シーンに彩られた可愛い映画
レオンは何度観ても飽きませんね。個人的には通常版の方が好きなんですが、完全版のマチルダがお酒飲んで爆笑してるシーンはいつも釣られて笑ってしまいますwあのシーンのジャン・レノもまた可愛らしくていいんですよね。今作品はそこまで凝った演出がされてるわけじゃないですが、それが逆に観やすくなっていて、映画を日頃あまり観ない方にとって映画にハマるキッカケになってくれる作品だと思います。
観てな方は是非レオンとマチルダの素敵な物語を体感してほしいですね!
「レオン」の鑑賞方法
では、良き映画の時間をお過ごしください。
(C)1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN.