SFホラーの金字塔エイリアンシリーズ3作目となる映画です。
監督は奇才デヴィッド・フィンチャー!記念すべき初監督作品となりますが、残念な事に評判はあまりよくなく、フィンチャー監督自身も黒歴史だと公言している始末w確かに粗削りだし脚本もイマイチなのは認めますが、リドリー・スコットの1作目、そしてジェームズ・キャメロンの2作目があまりにも面白かったせいで霞んでいるだけだと断言します。
本記事では、フィンチャー大好き人間の僕が、この駄作と言われている映画について正直な感想を書いていこうと思いますので宜しくお願いします!
[ジャンル]SF、サスペンス[作品時間]114分(完全版/145分)
[公開日]アメリカ:1992/5/22|日本:1992/8/22
- 予告動画やキャスト情報
- ネタバレありの感想
- 評価と鑑賞方法
もくじ
作品情報
「新たに映画を撮るくらいなら、大腸癌で死んだ方がマシだ」
これは今作品を批評家に酷評されまくったフィンチャー監督の名言ですwここから3年後・・・映画史に残る傑作セブンが世に放たれるなんて誰が予想できたでしょうか?
ちなみに主演のシガニー・ウィーバーは元々3作目に出るつもりはなかったらしいのですが、自由に意見して構わないという事を条件に出演してくれました!しかし現場に入ってみると・・・フィンチャー監督の独壇場w現場でバッチバチにぶつかったそうですよ。ちなみにシガニー・ウィーバーさん・・・事前に一切の説明がないままコオロギの幼生を大量にぶっかけられたりしたそうですw(完全版に収録されています。)
こうしたフィンチャー監督のイカれた行動に激怒したシガニー・ウィーバーは「監督こそエイリアンよ!」と仰ってますww
あらすじ
クイーンを倒し冷凍睡眠についたリプリー達を乗せるスラコ号は、謎の火災事故により脱出艇で流刑惑星フィオリーナ161(通称フューリー)に墜落する。残念な事に他の船員達は絶命しており、リプリーは悲しみに襲われる。フューリーには数十名の凶悪な男性囚人がいたが、彼らは独自の宗教観を持ち、戒律を守る事で平和な日々を過ごしていた。しかし脱出艇に潜んでいたフェイスハガーが原因で、またもエイリアンが生まれてしまう・・・。リプリーは今度こそ決着をつける為に囚人達と共に戦う事を決意するが果たして・・・?
スタッフ・キャスト
監督 – デヴィッド・フィンチャー
脚本 – デヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル、ラリー・ファーガソン
原案 – ヴィンセント・ウォード
エレン・リプリー – シガニー・ウィーバー
刑務所職員
ジョナサン・クレメンス – チャールズ・ダンス
ハロルド・アンドリュース – ブライアン・グローヴァー
フランシス・アーロン – ラルフ・ブラウン
囚人
レオナルド・ディロン – チャールズ・S・ダットン
ロバート・モース – ダニー・ウェッブ
ウォルター・ゴリック – ポール・マッギャン
ピーター・グレゴール – ピーター・ギネス
アラン・ジュード – ヴィンチェンゾ・ニコリ
デヴィッド・ポスルスウェイト – ピート・ポスルスウェイト
テッド・ジュニア・ギレス – ホルト・マッカラニー
ビショップ – ランス・ヘンリクセン
ゲーム・オブ・スローンズ等で知られるチャールズ・ダンス!悪役が似合う方ですが、今回は真面目な医者役でございますw
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 脚本はだめだけど脚本家は悪くない
- シガニー・ウィーバーの女優魂!
- なんだかんだ面白いエイリアン
駄作でも輝いたフィンチャー節
なぜ駄作と語り継がれてしまうのか?
シリーズ物は本当に大変だよね。本来はそもそも1作目が面白くなきゃシリーズになんてならないわけで、そんな面白かった1作目を超えないと駄作と呼ばれてしまう。別にバック・トゥ・ザ・フューチャーやスター・ウォーズ、今ならMCU作品みたいにシリーズ化してもずっと面白い映画もあるじゃないかって?
エイリアンはちょっと特殊なのよ。
- まず1979年、リドリー・スコット監督が世に放った1作目・・・SFホラーとかいう新しいジャンルで勝負して傑作に仕上げてしまった。とにかく雰囲気が怖いし、ストーリーの引っ張り方も秀逸、そして何よりもH・R・ギーガー氏によるメカニカルなエイリアンのデザイン・・・絶望の産声シーンは絶叫ではなく絶句を産んだよね。余すところなく面白かった。
- 次に1986年、今度はジェームズ・キャメロン監督が引き継ぎ、SFホラーからSFアクションに仕上げてきた。たった1匹のエイリアンにあれだけ苦労した1作目・・・それがウジャウジャ出てきて、まさに「今度は戦争だ!」というキャッチコピーの通りだった。あのドンパチから一転・・・クイーンの登場シーンの静けさは異常なほど怖かったよ。
つまり、シリーズ物なのに1と2でジャンルが違うんだ。その上でどちらも傑作に仕上がってしまったのがエイリアンというシリーズであり、それを超えなきゃいけなかったのが今作品というわけ。
結果はまさかのサスペンス的なエイリアン・・・僕はこの時点でデヴィッド・フィンチャー監督を評価していいと思うw今作品は1988年にあった脚本家組合のストも影響して、何人もの人間が脚本を書き直している。そのせいで確かに展開が粗雑に感じるというか、シンプルにわかりにくいんだよね。
でもフィンチャーのセンスはしっかりと輝いていた。
色合いや雰囲気、シックなキャラクターのフォルムといった視覚的な部分でもフィンチャーらしさが出ているし、中身もウィットに富んでいる。もちろんラストシーンが1番印象的だけど、例えばエイリアンが生まれるシーンでは、ニュートとヒックスを火葬するシーンを差し込んで下記のセリフを添えている。
「罪なき者たちがなぜ犠牲になる?なぜ苦しむ?」
「どんな種にも花の夢がある。」
エイリアンだって人間と同じく生き物・・・確かに人間を無慈悲に殺しまくる種だけど、それは本能に近い部分であり悪意を持ってるわけじゃない。つまりフィンチャー監督は人間の持つ道徳や美徳をかなり皮肉っているのだ。なんてシニカルな演出だろうか。
逆にこの脚本をよくここまで仕上げたよ。フィンチャーさん、これは黒歴史なんかじゃないぞ!
坊主なのに魅力的なシガニー・ウィーバー
手放しにフィンチャー監督を絶賛しすぎてる事は認めるw
そうだよ!この監督の作る作品がシンプルに好きなのよ!でもね、わかっているんだ。今作品最大の功労者はなんと言ってもシガニー・ウィーバーだという事は。
女優が坊主にするという事はたまにあるしプロモーションとしてもインパクトがあるよね。ただシガニー・ウィーバーのすごい所はインパクトだけじゃなく演技も抜群!そしてしっかりとカッコイイのよ。リプリーというキャラクターは1作目2作目と、必死に戦う姿に泥臭いかっこよさがあったけど、今回のリプリーは少し落ち着いているというか、どこか洒落てるかっこよさがあるんだ。
この落ち着きがニュートとヒックスの死によって「どうにかしてでも生き抜いてやる」という前作までの想いから、一歩下がったかのような絶妙な心情の変化・・・これが丁度よくフィットしてるように感じた。
撮影中は散々フィンチャー監督とぶつかったみたいだし、その上で駄作と語り継がれてしまって心から同情するけど、女優シガニー・ウィーバーは今作品で間違いなく素晴らしい仕事をしたと思う。
タンクトップがこんなに似合うのは彼女の演じるリプリーだけだ!
ラストシーンはあり?なし?
今作品はエイリアンが持つ最大の恐怖を殺している。
それはリプリーだけはエイリアンに殺されないというチート設定だ。これによって恐怖が削がれた部分も大きかったし駄作と言われる原因の1つかもしれない。ただ、この襲われない理由をブラックボックスにしてサスペンスに仕上げてるから僕は許せたんだけどもw
さすがフィンチャー監督と思うのは、序盤から伏線を散りばめておいて中盤でブラックボックスを開けるんだけど、今度は違うブラックボックスが出現する仕組みにしたという事だ。
それは・・・どうやってオチを付ける気なのか?という点。
1、2と観てきたら余計にこの部分は光る。リプリーはどんなに苦境に立とうとも凶悪なエイリアン達をぶっ殺してきた。最後に立っているのはいつも彼女の方なんだ。だからこそオチがわからない。この引っ張り方は初見に大きなインパクトを与えたよね。
確かにエイリアンシリーズの一部のファンを猛烈に怒らせたけど、僕は1本の映画として、そしてジャンルが常に違う異端の超人気シリーズの続編として、フィンチャー監督の提示した形はこれはこれでアリだったと思う。散々エイリアンと戦ってきたリプリーの心境を考えると、納得しちゃうラストというか・・・w
他にも色々と書きたい事があるけど、これ以上は大きなネタバレをせざるを得ないから、とにかく観た事ない人はリドリー・スコット監督の1作目からこの3作目まで鑑賞してみてほしい。全3作品とも監督ごとの色があり楽しみ方も違うけど、なんだかんだ全部面白いから!
今作品は確かにエイリアンシリーズの中では駄作と言われても仕方ないかもしれない。でも、後にセブンやファイト・クラブを世に出したデヴィッド・フィンチャーという奇才の片りんは感じる事ができるし、リプリーを演じたシガニー・ウィーバーも最高にかっこいいんだ。はっきり言って余韻だけでいうなら、この3が1番強くないか?(そうでもないかw)
とにかく僕は好きなんだ!フィンチャー、またいつか気が向いたらSF撮ってくれw
評価・鑑賞方法
デヴィッド・フィンチャー監督は世界一ぃぃ!
最後の余韻がよくない?とか言っておきながら評価は3にしました。いくら監督が好きでも贔屓しすぎると他の名作達に申し訳ないのでwそれに今作品は、厳密にいうと余韻というより演出がよかったんだと個人的には思います。
伏線の配置や、中盤でネタバラシしてから今度は違うポイントで引っ張るストーリー、これをサスペンス色の強い色合いや雰囲気のある映像で上手に隠したフィンチャー監督はやっぱり才能の塊ですよ。
- エイリアン3
- セブン
- ゲーム
- ファイト・クラブ
- パニック・ルーム
- ゾディアック
- ベンジャミン・バトン 数奇な人生
- ソーシャル・ネットワーク
- ドラゴン・タトゥーの女
- ゴーン・ガール
何なんでしょうね、この人w本当に面白い映画ばかり作ってくれる監督です。もしこのフィンチャー監督を知らない人がいたら、是非とも他の映画も観て欲しいですね。これほど外れない監督はそう何人もいませんよ!
「エイリアン3」の鑑賞方法
いきなり今作品でもいいですが、観てない方はまずリドリー・スコット監督の1作目から観る事をオススメしますw
エイリアンの1作目はこちら
では、良き映画の時間をお過ごしください。
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