構想30年・・・映画界屈指の変人テリー・ギリアム監督による14作目となる映画です。
「映画史に刻まれる呪われた企画」
テリー・ギリアム監督は19年間で9回も映画化に着手して失敗しておりますw今作品は、元々トビー役にジョニー・デップが決まっていて撮影も始まっていましたが、洪水に見舞われたり、ドン・キホーテ役のジャン・ロシュフォールがヘルニアを発症して馬に乗る事ができなくなったり、資金が底をつきたりと・・・頓挫しまくった経緯があるのです。そんな艱難辛苦を乗り越えて、やっと世に出る事となりました。
そこまでしてテリー・ギリアム監督が作り上げたかった作品・・・果たして内容はどうだったのか?失礼の無いように忖度なく書いていこうと思います!
[ジャンル]コメディ、アドベンチャー[作品時間]133分
[公開日]アメリカ:2019/3|日本:2020/1/24
- 予告動画やキャスト情報
- ネタバレありの感想
- 評価と他オススメ作品紹介
もくじ
作品情報
ロッテントマトの評価は高いと言えませんが、今作品は異常なくらい賛否両論で超傑作とスタンディングオベーションをする人もいれば「くっそつまらない!」と叫ぶ人もいます。テリー・ギリアム作品らしい評価だと思いましたねw
あらすじ
CM監督として売れっ子のトビーは、スペインでドン・キホーテを題材にしたCMを撮っていたが、いまいち納得のいかない撮影が続いた。ある夜、スタッフやスポンサーとの食事会で、トビーは手売りのジプシーから偶然自身が学生時代に制作した卒業作品「ドン・キホーテを殺した男」を売りつけられる。トビーは卒業作品のロケ現場が近くの村だった事に気付き、翌日1人で足を運んだ。そして当時ドン・キホーテ役を演じた靴職人のハビエルと再会を果たすが、彼は全くの別人になっていた。なんとハビエルは自分の事をドン・キホーテだと思い込んでいるのだ・・・どうやらトビーが制作した映画が影響を与えたというが果たして?
スタッフ・キャスト
原作 – ミゲル・デ・セルバンテス「ドン・キホーテ」
監督 – テリー・ギリアム
脚本 – トニー・グリソーニ、テリー・ギリアム
ドン・キホーテ – ジョナサン・プライス
トビー – アダム・ドライバー
アンヘリカ – ジョアナ・リベイロ
ジャッキ – オルガ・キュリレンコ
ボス – ステラン・スカルスガルド
ジプシー – オスカル・ハエナーダ
農家 – セルジ・ロペス
農家の妻 – ロッシ・デ・パルマ
ルパート – ジェイソン・ワトキンス
ラウル – ホビック・キーチケリアン
アレクセイ・ミシュキン – ジョルディ・モリャ
アダム・ドライバーは今作品のようなコメディタッチのキャラクターの方が似合う気がします!ダンスシーンは声出して笑っちゃいましたw
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 前半はケラケラ笑えるコメディ
- テリー・ギリアムの世界観に唖然
- 変な映画を作る天才
支離滅裂!理解に苦しむ映画だが・・・
今作品は一体どこから話せばいいんだろうか?
今作品を簡単に説明すると・・・イマイチうまくいかないCM撮影という現実から逃げてきたトビー、そして10年間も自身をドン・キホーテと思い込んで夢の世界に生きるハビエルの2人が、摩訶不思議な冒険をする映画である。
とりあえず要約してみたけど、正直自分で書いていても意味が解らないwただね、観始めて少しの間はクスクス笑っていたんだよ。アダム・ドライバーが演じるCM監督のトビーと、ジョナサン・プライスが演じるハビエルのコミカルなやり取りはシンプルに面白くて「テリー・ギリアムってまともな映画を作れたんだ」と変な感心をしていたくらいなんだ。でも、結論から言うと観終わった後に唖然としたよ。
一体何を見せられたんだろう?
いや確かに前半はシュールでゆる~い笑いが満載で、のんびりとしたテンポも相まって結構観やすいんだ。対比になっているトビーとドン・キホーテことハビエルの2人のコントのような会話なんか、まさにコメディ!しかも、たまに挟んでくる芸術的なシーンはとてつもなく美しくテリー・ギリアムはやっぱり素敵な映画監督だと再認識させられる。口をあんぐりと開けたままエンドロールを眺めて僕は考えてたよ。
人生って面白いなぁ・・・と。
わけがわからないよ。前半は間違いなくシンプルなコメディなんだ。でも気が付けば愛の素晴らしさ・・・いや、夢や希望の大切さ・・・いやいや、人生の尊さ!そんな事を考えさせられるようなところまで持っていかれたんだ。本当に不思議な感覚だったけど、まさにテリー・ギリアムの世界に引きずり込まれた気分・・・この人は凡人とは違う世界が見えてるんだと思う。
1つだけ確かなのは、やっぱりこの監督は変な人だという事だ。
アダム・ドライバーの不思議な魅力
スター・ウォーズのカイロ・レンは、恐ろしい速さで進化している。
監督のテリー・ギリアムも掴めない人だけど、この俳優もかなり不思議だ。超演技派というわけでもないし、顔も今風のイケメンとは違う。声もどこかモッサリしてるというか・・・正直スター・ウォーズを観た時は1人の俳優として全くピンとこなかった。マリッジ・ストーリーの夫役は良かったけど、そこまでインパクトがあったわけじゃない。
でも、なんだろう?この存在感は・・・。今ではこの人が出てると観たい衝動に駆られるようになってしまった。今作品を観て思ったのは、アダム・ドライバーという俳優がコメディ作品にすごく合うという事だ。無表情の時の雰囲気はまるで無言のツッコミをしてるかの様で、ボケの立場となるドン・キホーテのハチャメチャな言動がより引き立っていた。
特に中盤のドン・キホーテがトビーをバカにするシーンは最高だった。
トビーの事をサンチョと思い込んでいるドン・キホーテは「お前が英語で書いてある本を読めるわけないだろw」とマウントをとる。トビーを演じているアダム・ドライバーは呆れと共に愛のある同情の眼差しでドン・キホーテを見つめるんだけど、この時の表情が秀逸なのよ。
無表情に味があるからこそ、笑ったり怒ったりした時により映えるのかな?本当に不思議な魅力のある俳優さんだ。
後半から別物?余韻が素敵なラスト
今作品はヒロインのアンヘリカが出てきてから雰囲気が変貌する。
前半のゆる~いコメディから、後半はアンヘリカを助けるスペクタクル冒険活劇になっていくのだ。その落差はすさまじく、観てるこっちは脳が追い付かなかったよwその上、夢か現実かわからない中を生きるドン・キホーテの世界観が入り混じってくるから余計にわかりにくいんだ。
テリー・ギリアム監督は頭の中でどういう編集をしているんだろう・・・よく言えば作家性の強い人なんだけど、僕はこの監督の独特なセンスによく頭を抱えてしまう。一見ディスってるように感じるかもしれないけど・・・ラストシーンは素敵な余韻があったんだ。詳しくはネタバレになるからあえて書かないけど、散々意味のわからない展開と映像を見せられたはずなのに、なんていうか・・・
この映画を観て良かったと思わせるのよww
観終わってみれば、確かにミゲル・デ・セルバンテスが書いた原作ドン・キホーテをしっかり世襲したストーリーになってるし、映画館を出て飾ってあるポスターを見たらちゃんと「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」って書いてある・・・なるほどw
今作品は間違いなく理解しにくい映画に仕上がっているし「絶対にいらなかっただろ!」と胸倉を掴みたくなるような無駄なシーンもあったけど、不思議と許せてしまったんだ。なんだったらテリー・ギリアムらしい映画だったとさえ思えてくる。おかしな評価になるけど・・・映画界屈指の変人が相変わらず変な映画を作っていて安心しちゃったんだよねwこんなわけのわからない作品を30年も構想してくれて、そして合計9回も撮影に挑んでくれて心からお礼を言いたい。
ありがとう、テリー・ギリアム!ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ!!
評価・他作品紹介
名作?駄作?評価は★2だけど・・・
結果的に総合評価は低くなりましたが、決してつまらなかったわけではありません。
[観やすさ]も★1.5とかなり低いですけど、テリー・ギリアム作品の中では観やすい方だと思いますw正直そこまで好きな監督というわけではありませんが、映画史でもかなり異彩を放つ人だという事は間違いありませんし、この人の作る映画って不思議な魅力があるんです。結論としては駄作だけど面白い映画だと思いましたw
モヤモヤする評価になって申し訳ないですけど本当にそうなんですもんw胸を張ってオススメはしませんが、人生でテリー・ギリアム監督作品を1本も観ないのは絶対に勿体ないので、いつか気が向いたら観てあげて欲しいです。
ハマるかどうかは置いといて・・・他の映画では得られない何かがあるのはお約束しますw
テリー・ギリアム監督の他オススメ作品
僕は12モンキーズで初めてこの監督を知ったのですが、当時観た時は結構な衝撃が走りましたwミステリアスな雰囲気とストーリーから予想を大幅に裏切るラスト、そしてブルース・ウィルスとブラッド・ピットというアクの強い2人の絵面はとっても楽しかった覚えがあります。ブラッド・ピットの狂人っぷりは見ものですよ!
では、良き映画の時間をお過ごしください。
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