2010年公開、当時は「この映画のラストはまだ見ていない人には決して話さないでください」という謎解き要素をかなり前に出したキャッチコピーで話題を呼びました。
僕は大好きですが、このキャッチコピーのせいか賛否両論がすごい作品ではあります。
ジャンル:ミステリー
作品時間:138分
作品情報
マーティン・スコセッシ x レオナルド・ディカプリオ
名作量産タッグですね!2014年1月に日本公開されたウルフ・オブ・ウォールストリートも同じ2人による実話を基にした面白い作品。スコセッシとディカプリオはとても仲が良いので、よく一緒に映画を作ってます↓
- ギャング・オブ・ニューヨーク
- アビエイター
- ディパーテッド
- ウルフ・オブ・ウォールストリート
あらすじ
精神を病んだ犯罪者だけを収容し、四方八方を海に囲まれた「閉ざされた島(シャッター アイランド)」から1人の女が姿を消した。島全体に漂う不穏な空気、何かを隠した怪し気な職員たち、解けば解くほど深まる謎・・・。事件の捜査に訪れた連邦保安官テディがたどり着く驚愕の事実とは?
キャスト、スタッフ
監督 – マーティン・スコセッシ
脚本 – レータ・カログリディス
原作 – デニス・ルヘイン
テディ・ダニエルズ – レオナルド・ディカプリオ
チャック・オール – マーク・ラファロ
ジョン・コーリー医師 – ベン・キングスレー
ドロレス・シャナル – ミシェル・ウィリアムズ
レイチェル・ソランド – エミリー・モーティマー
ジェレミア・ナーリング医師 – マックス・フォン・シドー
ジョージ・ノイス – ジャッキー・アール・ヘイリー
アンドリュー・リーディス – イライアス・コティーズ
エセル・バートン – パトリシア・クラークソン
警備隊長 – テッド・レヴィン
エミリー・モーティマーはすごく可愛らしい人なんですが、今作品ではめちゃくちゃ怖いですよ!
ちなみにデニス・ルヘインはミスティック・リバーも書いた作家さんです。
※ここからはネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 謎解き映画として意識しすぎちゃダメ
- ラストの解釈は複数ない、1つだけ
- でもハッピーエンドと見るか、バッドエンドと見るかはあなた次第
謎解きなんて気にしないで観るべき
あなたは、上映開始から何分でこの謎が解けるか?
上記は今作品の予告で使われたキャッチコピーなんだけど、見ての通り上映前からかなり強気で煽ってきた。これは秀逸なラストをより楽しませようとしたんだと思われるが、このキャッチコピーのせいで1つ問題がおきちゃった。それはレビューでたまに見かけるこの言葉。
「早い段階で謎に気付いたからつまらなかった」
この謎というのは主人公テディ=67人目の患者アンドリュー・レディスって事なんだけど・・・気付いたからなんなのか!何故それだけでつまらないと判断するのか!これはもはや、1本の映画作品としてではなく謎解きゲームとして観ちゃった人がいたという事だ。
あーもったいない。あーくやしい。あーもどかしい。
この物語は主人公レディスが妻を殺してしまった事で心が壊れ、連邦捜査官テディ・ダニエルズになりきるという現実逃避をしており、精神病院の医者や看護師、警備員など全員がその現実逃避に合わせて演技をしている。何故このレディスの茶番に付き合っているかというと、精神異常をきたしてる彼にジョン・コーリー医師がロボトミー手術を施すのではなく、投薬による治療を進めたかった為だ。だから皆が演じている茶番の中で少しずつレディスの抱えるトラウマをつつき、彼の心に矛盾を生じさせて現実を受け止めてもらおうとする・・・そういうお話。
ちなみに昔はロボトミー手術が精神外科という正式な医学としてあり、初めて人間に施したエガス・モニスという医者はノーベル生理学・医学賞を受賞している。映画ではこのロボトミー手術を題材としたものがちらほらあるよ。有名な作品だと時計じかけのオレンジや、僕が大好きなカッコーの巣の上でもその1つ。観た事ない人は是非!
話を戻すけど、確かに今作品には謎を解く為の伏線が散りばめてあるし、レディスの妄想と現実が入り乱れているのでかなりわかりにくい内容となっているが、スコセッシ監督が一番表現したかったのは謎解きなんかじゃなく、上質なミステリーヒューマンドラマだと言いたい。
人によってはレディスが病気ではなく政府の陰謀でレディスをハメようとしているストーリーとも考えられるって唱えてたけど、そういう人達はラストシーンをどう解釈してるのか・・・どうか今一度鑑賞してほしい。
ラストシーンの解釈
スコセッシ監督はレディス=連邦捜査官テディ・ダニエルズという事をできる限り気付かせないように描いており、その謎を明確に明かすのは残り30分のところだ。それはつまりこのラスト30分がこの映画の本質なのだ。
後半レディスは正気に戻るが、今まで何度か精神異常→正常を繰り返しており精神がおかしくなると暴力的になっていたとジョン・コーリー医師と相棒のチャック=シーアン医師に告げられる。加えて二度と繰り返さない為にもしっかりと現実を受け止めてほしいとも・・・。
レディスが妻を殺してしまったのは、うつ病だった妻が自分たちの子供を殺したから・・・こんなの誰だって気が狂うよね。そんな彼にロボトミー手術を施して廃人にしてしまうなんてジョン・コーリー医師は避けたかったが、他の医者らはロボトミー手術を推進しており、今回がレディスにとって最後のチャンスだったのだ。しかし・・・レディスは全てを理解した上でわざとイカれたふりをしてロボトミー手術を受ける道を選ぶ。最後、相棒であるチャック=シーアン医師に放った言葉が何とも言えない。
どっちがマシかな?モンスターのまま生きるか、善人として死ぬか
どうもこのラストシーンの解釈が人によって違うみたいだけど、レディスは最後正常でわざとイカれたふりをしたで間違いないかと。じゃないとこの最後のセリフが破綻しちゃう。
- モンスターのまま生きる・・・妻と子供の死を抱えつつ、またいつ精神異常をきたし、はたまた正常に戻ったりを繰り返しながら生きるという事
- 善人として死ぬ・・・ロボトミー手術を受け植物人間になってしまうが、レディスとして正常な意識がある間にその選択をするという事
つまりレディスは精神上の自殺を選んだんだね。どんな理由だろうと愛していた妻を殺してしまったトラウマはえぐいほど辛かっただろうし、それを受け止めきれず狂人になってしまう自分に疲れきってしまったんだろう。
ラストシーンのディカプリオの表情は素晴らしい。スッキリしてるようでどこか哀しさや儚さも含まれており何とも言えない・・・そしてレディスが最後一瞬だけシーアン医師をチラっと見るんだけど、その目は「ありがとう」と言ってるようにさえ感じる。僕はこのシーンが一番好きだ。このラストは植物人間になると考えればバッドエンドにとれるが、逆にレディスの気持ちを考えるとハッピーエンドともとれる・・・人によるのかな。
どちらにしても謎解き要素も含めて、何とも不思議な感覚に陥らせてくれる極上のエンターテイメント、名作なのは間違いない。
評価、視聴方法
なんだかんだスコセッシは安定した名作を作ってくれる
今作品のダメ出しをするのであれば、先行予告が謎解き要素を煽りすぎな点と、中盤のレイチェル・ソランドーというキャラクターの演技が迫真すぎるという点。
レイチェル・ソランドーに関しては観客に謎を気付かせない為に仕方なかったのかなと思うけど、予告の煽りすぎ問題はどうにかならなかったのかと・・・。こういう謎解き要素がある映画は、いつも名探偵コ〇ン君が沸いてドヤ顔で謎を解きマウント取りながら本質も見ずに「つまらない」とか「こういう手法は見飽きた」とか言って去っていく。コ〇ンくんには算数のドリルでも解いててほしい。
あとそうだ、余談だけど福本漫画のアカギを思い出した人が結構いるんじゃないかな?アルツハイマーになってしまったアカギが「俺が恐れるのは、俺が俺でなくなること」と言い自殺を選ぶんだけど、この映画のレディスはすごく似てるように思う。確かに自分自身の思考回路じゃなくなってしまうというのは・・・考えたくない。
ただ死ぬ事よりも怖いと感じてしまうかもしれないよね。
「シャッター・アイランド」の視聴方法
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スコセッシ監督とディカプリオが組むと本当いい作品ができるね!興味があれば同じタッグのウルフ・オブ・ウォールストリートもいかがでしょう?
では、良き映画の時間をお過ごしください。