映画「ピンポン」あらすじ、感想【アニメだけじゃない!名言揃いの傑作】

ピンポン

2002年公開、松本大洋原作の傑作漫画を実写映画化。

原作をしっかり再現しているだけじゃなく、1本の映画としても一級品です。主演の窪塚洋介は当時大人気で若手俳優の中でも異色でしたね!
ちなみに音楽は石野卓球を筆頭にSUPERCARBOOM BOOM SATELLITESなどアニメの雰囲気を保つテクノ調の素晴らしい曲が盛りだくさんです。

漫画やアニメが原作の映画は古くからあるんですが、高いクオリティで再現される昨今のアニメ実写化の流れは今作品がパイオニアと言っても過言ではありません。最高に気持ちの良いカタルシスを味わえる超オススメの1本ですよ!

本記事ではあらすじ、キャスト情報の他に個人的感想、視聴方法なども記載しています。

ジャンル:青春スポーツ
作品時間:114分

作品情報

  • 優秀作品賞
  • 優秀監督賞 – 曽利文彦
  • 優秀脚本賞 – 宮藤官九郎
  • 優秀助演女優賞 – 夏木マリ
  • 優秀撮影賞 – 佐光朗
  • 優秀照明賞 – 渡邊孝一
  • 優秀編集賞 – 上野聡一
  • 新人俳優賞 – 中村獅童

ご覧の通り、日本アカデミー賞では最優秀を受賞できませんでしたが、個人的にはこの年の最優秀作品賞だったたそがれ清兵衛より好きですね。

あらすじ

才能にあふれ、卓球が好きで好きでたまらないペコ。子供の頃から無愛想で笑わないスマイルにとって、ペコはいつもヒーローだった。だがペコはエリート留学生チャイナに完敗・・・インターハイでも幼なじみのアクマに敗れてしまう。一方スマイルは、コーチに才能を見い出され実力をつけていく。現実の壁にぶつかったペコと強さに目覚めたスマイル。それぞれの道を歩き始めた彼らに、またインターハイの季節がやってきた・・・。

キャスト、スタッフ

原作 – 松本大洋
監督 – 曽利文彦
脚本 – 宮藤官九郎

主題歌 – SUPERCAR「YUMEGIWA LAST BOY」

星野裕(ペコ) – 窪塚洋介
月本誠(スマイル) – ARATA
風間竜一(ドラゴン) – 中村獅童
コン・ウェンガ(エリートチャイナ) – サム・リー
佐久間学(アクマ) – 大倉孝二

オババ – 夏木マリ
小泉丈(コーチ) – 竹中直人

太田(部長) – 荒川良々
ある少年 – 染谷将太

ラストに登場したARATAが教えている少年・・・染谷将太だと気づきましたか?僕はわかりませんでしたw

それと電車シーンで原作の松本大洋先生がカメオ出演していますよ!

※ここからはネタバレもあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • スタイリッシュに内包されたゴリゴリのスポ根!
  • 圧倒的な存在感と個性を放つ俳優陣
  • 嬉し泣きしてしまう最高潮のカタルシス

何気にすごい曽利文彦監督のVFX技術

まずは何よりも監督や制作陣に拍手を送りたい。

アニメの方も観てみるとわかるけど、よくこれを2時間でまとめあげたな~とその編集力に感嘆してしまう。加えて原作の持つダサかっこよさというか・・・松本大洋ならではの空気感はあまりにも個性が強く、これを実写化するというのは相当大変だったんじゃないかなと思う。

この完成度は演出、構成、そして特に音楽が相当貢献してるが、映像技術も素晴らしい。曽利文彦監督は元々ドラマの池袋ウエストゲートパークなどのタイトルバックやVFXシーンを手がけていた人・・・とはいえ、映画の監督はこれが第1作目だ。確かに今作品は原作自体が秀逸なストーリーだと思うけど、それにしたってひれ伏すレベルの名作に仕上がっている。

冒頭でペコが「ア~イキャ~ンフラ~イ!^q^」と叫びながら橋から飛び降りる映像とか当時はどうやってるんだろう!?と不思議に思ったよ。そりゃ最近の映像技術に比べたら差はあるけど、まるでドローンで撮影したような立体的なシーンは今観たってセンスしか感じない。

それと今作品の中核である卓球シーン・・・これらも全てVFXが駆使されてるんだけど、本当に卓球の試合のように違和感なく作られている。実際の卓球の試合ってどんなもんだっけ?と思い、世界戦の動画を見てみたけど映画との差は無かったよ。何ならサーブ前の顔つきさえ全員が今作品の中村獅童のような怖さがあったw

とにかく原作の再現度だけじゃなく、卓球のリアリティや映画としてエンターテイメントに昇華する為の演出、編集、そして映像技術、音楽・・・全てにおいて最高峰の完成度だと言いたい。

曽利文彦監督よ、もっともっと映画を撮ってくれー!

原作と違うからこそ良かった部分

結構原作を忠実に描いているけど、決定的に違うのはコーチ(竹中直人)と太田キャプテン(荒川良々)だ。

まずコーチは見た目が全然違う。そしてキャプテンに関してはキャラクターの性格自体違う。他のキャラクターは原作を世襲してるのに何故この2キャラを劇的に変えたのか?僕の勝手な私見だけど、このカスタマイズは必須だったと思う。

このピンポンという作品はペコが自身の才能の限界にぶつかり挫折し、そこから再起するという青春王道ストーリー。冷静に考えるとその内容は結構重くシリアスに描かれている。ただ、原作は松本大洋先生の描く独特でフワっとした絵によって軽さが出されている。しかし今作品は実写映画・・・この軽さを出す為にコーチとキャプテンのキャラクター変更になったと思われる。

ペコの抱える不安や悩み、葛藤、そして立場というのは全てが細かく描かれるわけじゃないけど、青春スポ根モノの中でも群を抜いて重く感じるよね。コーチが目をかけたのは親友のスマイル、そしてそのスマイルに完敗してしまうなんて挫折してグレるのも仕方ない。その上で橋の上でのアクマとの会話・・・ここで一気にペコが背負っているものを重く見せてくる。

「何にもしねえ現実だろ」

「凡人にしか見えねえ風景ってのがあんだよ」

「おめえに憧れたスマイルや俺が浮かばれねえ」

ちなみに大倉孝二が演じたアクマの放ったセリフ・・・めっちゃくちゃ素敵なシーンになってたね。

で、こうした原作の持つストーリー自体の重さを今作品では竹中直人と荒川良々によるコメディタッチなキャラクターと演技で綺麗に浄化していた。

漫画やアニメの実写映画には常に付きまとう原作を忠実に再現したかどうか論争・・・僕は改変肯定派だけど、今作品は監督、制作陣の素晴らしいバランス感覚による勝利だと思う。

ラスト40分からの尋常ではないカタルシス

もうずーーーーっとワクワクしてしまうよ。

この映画は前述したアクマとの橋の会話シーン以降、ジワジワと雰囲気が変わってくる。他の映画だってクライマックスに向けてギアを上げてくるものだけど今作品の上げ方は、音楽を少しかけて止めたりなど雰囲気作りが異常にうまかった。

何と言うか、ペコというヒーローが帰ってくるのを作中のキャラクター達も観てる観客も皆が求めているんだよね。クライマックスであるドラゴン風間との最終決戦までの静けさはたまんなかったよ。クリリンさながらのペコー!早くきてくれー!状態。

そしてとうとう風間と対峙したペコ、「そこんとこヨロシク」から始まる最終決戦だがそれでも風間の圧倒的な強さに勝てないペコ、足の痛みも限界に近づき「たすけて・・・くれよ・・・」と呟くペコ・・・諦めムードが漂い、風間には勝てる気しないな~と誰もが思い始めていた時、鼻歌を口ずさんでいたARATA演じるスマイルだけは信じていた。ヒーローのペコが・・・いや、星野裕が帰ってくると。

ペコにとってのヒーローはちゃんと「ヒーロー見参」と3回唱えたら現れたんだ。

そしてSUPERCARの「Free Your Soul」が流れ始めてからのペコの覚醒は、恐ろしいほど人の心を揺さぶってくるカタルシスになっている。これはもう観てない人は是非1度は体感してほしい。まるで少年時代のラストシーンのように泣くなという方が無理だ。何度観てもこのクライマックスは「ペコ良かったな~」と笑いながら泣いてしまう

文句無し。最高の原作と最高のキャスト/スタッフによる、最高の映画だよ。

評価、視聴方法

窪塚洋介の魅力

数年ぶりに今作品を観ましたが、窪塚洋介・・・やっぱりめっちゃかっこよく絵になる役者だと思いました。

窪塚洋介って決して演技が上手ではないんですけど、すごく魅力的で異常な存在感があるんですよね。特に今作品のペコというキャラクターの持つ人間的な可愛らしさは、失礼ですが少し下手な演技の彼がかなりフィットしていたんじゃないかと思います。個人的には原作よりもペコでしたw

リアルでもアイキャンフライしてからは俳優業ではなくレゲエミュージシャン(卍LINE)が本業となったので、あまり映画やドラマで見かけなくなりましたが、脇役でも出てるとつい見たくなる俳優さんの1人です。非常に残念ですが、もう主役はあまり張る気がないのかもしれませんね。

レゲエミュージシャンになってからは知名度が下がり、一時期は世間であの人は今みたいな扱いになってましたが、レゲエ大好きな僕はずっと応援してました。真面目にレゲエやってるし、良い曲も沢山だしてるので知らない人は是非聴いてみてほしいです!

「ピンポン」の視聴方法

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学生の青春モノを描いた映画だと桐島、部活やめるってよがオススメです。同じ青春モノでもスポ根系のノリが好きな人はバクマンなんかいいと思いますよ!

では、良き映画の時間をお過ごしください。