映画「バクマン。」あらすじ、感想【主題歌と共に流れる秀逸なエンドロール】

バクマン。

原作は漫画家を目指す2人が主人公で、出版業界のリアルをシリアスかつコミカルに描いた非常に面白い作品。そんな原作に対してのリスペクトはもちろん、漫画という日本の誇る文化全体にも大きな敬意を感じられる素晴らしい映画です。

監督は大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」でも演出を手掛けている大根仁、リアリティのある雰囲気を出すのが非常に上手な方ですが、今作品では躍動感のある映像も凝っていてとっても良作ですよ。

本記事ではあらすじや感想の他に「バクマン。」の視聴方法や大根仁監督の他作品情報も紹介していきます。

ジャンル:ヒューマンドラマ青春
作品時間:119分

作品情報

第39回日本アカデミー賞では以下の7部門を受賞してます。

  • 話題賞作品部門
  • 最優秀音楽賞 – サカナクション
  • 最優秀編集賞 – 大関泰幸
  • 優秀監督賞 – 大根仁
  • 優秀助演男優賞 – 染谷将太
  • 優秀美術賞 – 都築雄二
  • 優秀録音賞 – 渡辺真司

サカナクションは劇中の音楽全般と伝説的ラストシーンに流れる主題歌も手掛けています。皆大好き「新宝島」は必聴ですよ!

あらすじ

「僕たち二人で漫画家になって、ジャンプで一番を目指そうぜ」

2人の高校生が抱いた、ジャンプ漫画への壮大な夢。高い絵の才能を持つ真城最高(サイコー)。巧みな物語を書く高木秋人(シュージン)。クラスメイトの亜豆美保(アズキ)への恋心をきっかけに2人はコンビを組み、週刊少年ジャンプの頂きを目指す。編集者・服部に見いだされた最高と秋人は、次々と立ちはだかる難題を乗り越え、ジャンプ編集部や新進気鋭のライバルたちと成長していく。彼らが目指すのはジャンプでの1番人気漫画・・・つまり漫画界の頂点。果たしてその夢をかなえることができるのか・・・?

キャスト、スタッフ

原作 – 大場つぐみ小畑健
脚本・監督 – 大根仁
音楽 – サカナクション

真城最高 – 佐藤健
高木秋人 – 神木隆之介
新妻エイジ – 染谷将太
亜豆美保 – 小松菜奈
福田真太 – 桐谷健太
平丸一也 – 新井浩文
中井巧朗 – 皆川猿時
川口たろう – 宮藤官九郎
服部哲 – 山田孝之
佐々木 – リリー・フランキー

主役級レベルがゴロゴロ揃ってますが、しっかりと脇役に回ったバイプレイヤーたちもとてもよかったと思います。特に山田孝之染谷将太が脇に回っていると、なんだか贅沢な気分になりますね!

※ここからはネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • 作品全体から感じられる漫画愛
  • 染谷将太の怪演が支えた山場
  • 凝られた極上のエンドロール

大根仁監督の映像表現力

冒頭の3分が実に素晴らしい。

この映画はエンドロールが秀逸なのでオープニングはあまり話題にならないが、少年ジャンプの歴史を語りつつ作品自体の自己紹介もしっかりしてくるとか何気にすごい掴みだ。この冒頭だけでも大根監督は名監督と言っていいと思う。原作に対してのリスペクトはもちろんだけど、漫画という文化に対してのリスペクトを表現したのは素晴らしい。何故なら原作こそがまさに漫画に対して敬意を払った作品だからだ。

少し硬く書きだしたけど映画作品としてはすっごくポップ。2人の主人公が漫画家を目指すキッカケとなる亜豆美保(小松菜奈)との会話シーンは第2の掴みになっていて、開始たった10分でちゃんと「あっこれ多分面白い」と思わせてくれる。そして素晴らしい掴みの次は中盤まで漫画業界のリアルな日常を描き出す。

こういう構成のバランス感覚って本当に監督のセンス次第だと思うが、大根仁監督は本当に上手だ。

加えて今作品のこうした緩急を飽きさせずにコントロールしてるのがサカナクションの作る音。細かな部分で目立たないように秀逸なBGMが入り込んでくる・・・海街diaryの時の菅野よう子でも思ったけど、映画において音楽というのは非常に大切なファクターだ。もちろん少年時代のような曲が作品自体の代名詞になる場合もあるから一概には言えないが、目立ちすぎる音は邪魔になるし逆に目立たなすぎるなら必要がない。サカナクションの音はその丁度良さが絶妙だったように思う。

漫画原作の実写化は往々にして原作を愛する人の声が大きく、たまに的外れな批評をしたりする方がいるが、たった2時間で描かなければいけない映画というコンテンツでは端折らないといけないし、その上でどうまとめて原作の面白い部分を表現できるか?この引き算的作業だけでも大根仁監督と制作陣は評価されるべきだ。

そもそも今作品は原作自体がそうだけど、漫画家を目指す2人が主人公って冷静に考えて相当難しいよね。発想としてはそこまで突飛なモノじゃないかもしれないけど、それを実際に表現するのはかなり秀逸なコンセプトやキャラクター、そして何よりもストーリーがないと無理だろう。その上で原作が好きな人達の厳しい審査を通り、原作を読んだ事がない層にも面白かったと言わせなければならないとか・・・普通ならやってられないよ。

しかし大根監督は中盤にとても面白く素晴らしい演出をした。それは執筆シーンである。

新妻エイジという素晴らしいキャラクター

今作品で優秀助演男優賞を受賞した染谷将太、彼が演じた新妻エイジとは主人公2人に立ちはだかるラスボス的キャラクターだ。

同じ高校生にして大人気漫画家・・・まるでデスノートのL(エル)のような雰囲気を醸し出す天才肌なんだけど、染谷将太の独特な表情セリフ回しで個人的には原作よりもさらに魅力的なキャラクターになっていると感じた。そして問題の執筆シーンだが、この新妻エイジとの対峙をドラゴンボール顔負けのバトルシーンで表現してきたのだ。この執筆シーンは別に山場ってわけじゃないし、何なら原作をまさに引き算した箇所だけどシンプルに「おもしれえ」と思える映像になっている。

そんなこんなでとうとう連載を勝ち取った2人・・・彼らはぐいぐいと読者人気をあげて新妻エイジに迫るのだが、あと一歩のところで寝ずに執筆作業した事により真城最高が倒れてしまう。編集長は高校生の2人に無理させてしまった事を後悔し、彼らが高校を卒業するまで連載しないと宣告。しかし納得がいかない真城最高は病院を抜け出してまで筆を走らせる。その姿に共鳴したのはパートナーである高木秋人だけにとどまらず、ライバルでもある他の連載漫画家たちまで・・・アトリエには彼らの筆を走らせる音だけが響く。ああ、なんて素敵な青春群像。

努力友情勝利

少年ジャンプが掲げる有名な三大原則だが、まさにこれを描いたよね。そんな青春真っ只中のアトリエに天才・新妻エイジがふらっと現れるシーン、この時が今作品の最大の見せ場なんだけど染谷将太がたまらなく渋いんだ。

彼の演じる新妻エイジは人をいら立たせる飄々とした話し方と眠たそうな目で、今にも倒れそうになりながら筆を走らせていた真城最高に語り掛ける。ヒリヒリした重い空気の中で、ニヤニヤしながら真城最高の絵を「下手」だと言い放ち、しかも勝手に筆入れをし出す新妻エイジ・・・普通なら超むかつく奴だよね。でもこの時の新妻エイジを演じる染谷将太からは何とも言えない優しさを感じさせる。通常時の新妻エイジと同じ演技なはずなのにまるで別人みたいだ。

加えてこの時のセリフ回し・・・新妻エイジはそこにいたライバル達を全員「~~先生」と呼んでおり、帰り際に「待ってますから、ジャンプで」と痒くなるようなニクイ一言を呟き、何とも言えない表情で踵をかえす。漫画家を描く題材ならではなのか・・・静かなのに高揚感のある素晴らしいクライマックスシーンだった。

染谷将太が優秀助演男優賞を獲ったのは間違いなく彼の演技力なんだけど、新妻エイジというキャラクターあってこその受賞だと思う。

最後まで観たくなるエンドロール

短くも瞬間最大風速を叩き出した素晴らしいクライマックスだが、大根監督はその超えた先にもう1発花火を持ってきた。

2人はとうとう読者アンケートで人気1位を獲得するが、それ以降失速・・・連載は打ち切りとなってしまい普通の高校生として卒業式を迎える。当日、2人は式に出ず教室の席に座りながらシンミリと思い出を語り合うが、高木秋人が笑みを浮かべつつ真城最高に言う。

「実はさ、新しいやつ考えたんだけどさ」

「・・・聞かせろよ」

そこに流れだすサカナクションの「新宝島」は最高のタイミングで、そこから始まる「エンドロール」は最高の演出で漫画好きには涙が出るくらい嬉しい作りになっていた。原作だけじゃなく漫画という文化全体に対する愛とリスペクトに溢れた素晴らしいラスト・・・発想が面白いし映画好きからしてもたまんない演出だったよ。大根監督の遊び心はもっともっと評価されるべきだね。

ある映画評論家が、今作品は原作で描かれていた漫画業界のリアルな部分を端折っていたから残念だったと言っていたけど・・・本当に評論で飯食ってるのかと疑うレベルだ。全20巻の漫画作品を2時間に圧縮した場合、単純計算で1巻が6分になるわけで、ちゃんと描いたらドラマにだっておさまらない。仮にそんな長尺な映画を作ったとして、誰が面白いと感じ原作を手にするんだか。漫画原作の実写映画では毎回こうした盲目の原作信者たちが出てくるけど、どうか彼らの意見は無視してほしい。

この映画は間違いなく面白いし、漫画実写化作品では成功の部類だよ。

総評、視聴方法

大根仁監督をもっと知ってほしい

今作品にも出ていた宮藤官九郎脚本による2019年の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」で演出している大根仁さん。

僕が初めて大根作品を観たのはドラマのアキハバラ@DEEPでした。今では昼のZIPのMCになった風間俊介を主役に生田斗真、星野源、バナナマン日村、北村一輝などかなり異色のキャスティングで面白いドラマだったんですよ。正直この監督はドラマの方が輝くと思いますが、映画だと福山雅治主演の「SCOOP!」なんかはリリー・フランキーが怪演しててオススメです。良ければ他作品も観てみてくださいね!

他にはこんなドラマも

今回は総評というより補足情報になっちゃいましたね。失礼しましたw

「バクマン。」の視聴方法

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なんか個人的な好みもあって大根仁監督をプッシュしまくっちゃいましたけど、そもそもこの映画は大場つぐみ x 小畑健による原作あってこそ、漫画もオススメしますよ!久しぶりにデスノート読もうかなw

では、良き映画の時間をお過ごしください。