映画「舟を編む」あらすじ、感想【タイトルの意味は?心洗われる名作】

舟を編む

三浦しをん先生による小説が原作。

タイトルの舟を編むとは「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味からつけられていて、言葉通り辞書を作る人達を描いた作品です。

こんな説明だけでは観た事ないと「つまんなそう」と思う人も多いかもしれませんが、めっちゃくちゃ面白く日本らしい名作に仕上がってますよ!

本記事ではあらすじ、感想の他に視聴方法なんかも書いてます。

ジャンル:ラブストーリーヒューマンドラマ
作品時間:133分

作品情報

  • 最優秀作品賞
  • 最優秀監督賞 – 石井裕也
  • 最優秀主演男優賞 – 松田龍平
  • 最優秀脚本賞 – 渡辺謙作
  • 最優秀録音賞 – 加藤大和
  • 最優秀編集賞 – 普嶋信一
  • 優秀主演女優賞 – 宮﨑あおい
  • 優秀助演男優賞 – オダギリジョー
  • 優秀音楽賞 – 渡邊崇
  • 優秀撮影賞 – 藤澤順一
  • 優秀照明賞 – 長田達也
  • 優秀美術賞 – 原田満生
  • 新人俳優賞 – 黒木華

見ての通り、2014年のアカデミー賞では根こそぎ受賞しています。この他にも数多の映画賞を受賞していて、ノミネートに至りませんでしたが、本場の第86回アカデミー賞には外国語映画部門の日本代表作品として出品されました。

公開された2013年はアナと雪の女王があったので話題はもっていかれちゃったイメージがありますねw

あらすじ

出版社・玄武書房では中型国語辞典『大渡海』の刊行計画を進めていた。営業部の馬締光也は、定年を間近に控えて後継者を探していた辞書編集部のベテラン編集者・荒木に引き抜かれ、辞書編集部に異動することになる。社内で「金食い虫」と呼ばれる辞書編集部であったが、馬締は言葉への強い執着心と持ち前の粘り強さを生かして、辞書編纂者として才能を発揮してゆく。辞書編集の日々の中、林香具矢という美女と出会い、馬締は一目ぼれをしてしまうが・・・

キャスト、スタッフ

原作 – 三浦しをん
監督 – 石井裕也
脚本 – 渡辺謙作
音楽 – 渡邊崇

馬締光也 – 松田龍平
林香具矢 – 宮﨑あおい
西岡正志 – オダギリジョー
佐々木薫 – 伊佐山ひろ子
岸辺みどり – 黒木華

タケ – 渡辺美佐子
三好麗美 – 池脇千鶴
村越局長 – 鶴見辰吾

松本千恵 – 八千草薫
荒木公平 – 小林薫
松本朋佑 – 加藤剛

主演の松田龍平はコミュ障キャラが非常に似合いますねwこういうキャラクターで主人公となると演じられる役者って限られちゃうと思うんですけど、文句なしの素晴らしい演技!松田龍平ぴったりでした。

それと八千草薫小林薫加藤剛の3人がいる安堵感はすごいです。超ベテラン俳優の適度な存在感は必見ですよ。

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • 珠玉な会話シーンだらけ!これだけで楽しめる
  • 嫌な奴が一人も出てこない優しい世界
  • 人間の愛らしさが描かれたホッコリする映画

丁寧に優しく描かれた人間描写

冒頭から淡々と出版社の人間模様が描かれているだけ・・・にもかかわらず、ものすごい引き込まれてしまう映画だった。

松田龍平演じる馬締光也(まじめみつや)は名前通り、真面目一辺倒で人とコミュニケーションをとるのが苦手な独身男性、ただの日常会話でさえ緊張して目が泳いだり、言葉がつまってしまう・・・俗にいうコミュ障だ。こんな男が営業部に配属されたとか、宮崎あおい演じる林香具矢という美女と結婚したというのはあまりリアリティがないけど、作品全体の人間関係や心理描写、何よりもセリフ回しが非常にリアルなせいか観ていて全く違和感がない。

特にオダギリジョー演じるリア充な上司の西岡とコミュ障な部下・馬締のやりとりは良かったなあ。今の日本でもそこら中で溢れているありふれた会話なんだけど観ていてホッコリした。その他、会社内での色々な人達の会話も全てリアルな日常を描いていて、つい「あるあるw」と感じてしまう。それに対して馬締と香具矢のやり取りは違和感があるわけじゃないんだけど、どこか浮世離れしているというか時間の流れがゆっくりしていて、また違う良さがあった。

例えば初めて香具矢が登場するシーン、夜のベランダで自己紹介をするんだけど「私は香具矢、どうぞよろしく」と言う。どうぞよろしく・・・僕は今までの人生で言った事があっただろうかw

どちらにしても今作品の真骨頂は会話シーンだと思う。品性のある綺麗な日本語で丁寧に描いていて、少しずつ距離が縮まっていく人間関係が絶妙だった。どこまでアドリブが入ったんだろう?脚本を読んでみたくなったね。

辞書を作るという日本語を扱う人達を描いた今作品・・・セリフ回しも綺麗な日本語で心が洗われたよ。

優しい人達と優しい音楽

主人公の馬締だけじゃない、全員が真面目で良い人

子供の頃、ファンタジー映画などを観て、中の世界に行ってみたい!と誰もが1度は思った事があるよね?僕は今作品を観ていて一緒に辞書編集部で働いてみたい!と思ってしまった。それ位、登場人物たちがみんな真面目で優しく魅力的なんだ。もちろん不良やヤクザが出てくるバイオレンスな映画も好きなんだけど、こうした悪い人達が一切出てこない映画というのも良いものだね。

そして全編を通して素晴らしいのは音楽。どうも映画音楽を作る人は世間的に知名度がないけど、今作品を担当した渡邊崇は本当に素晴らしい音を作ったと思う。まるでジブリ作品を観ているかのような、でも決して前に出ず作品の邪魔になってない優しい音楽だった。特に馬締と香具矢2人の合羽橋デートでの曲は永遠に聴いていたくなる綺麗なピアノだったよ。

加えて自然音もよかったね。猫・セミ・鈴虫などの鳴き声、包丁を研ぐ音、黒電話のチーン!という音だったり、ページをめくる音など・・・時代背景の95年のノスタルジックな雰囲気をかなり演出していたと思う。中盤、言葉の語釈について試行錯誤する中でバックに流れていた波の音とか「誰が意識するんだよ!」とも思うけど、反面その丁寧な演出には石井裕也監督に「ありがとう」と言いたくなる。

海街dairy万引き家族是枝監督も自然な音楽と共に淡々と描くのが上手だけど、こうした日本らしい映画って意外に撮れる人少なくて、出会った時は嬉しさを感じてしまう。

加藤剛と八千草薫の夫婦

この映画の終盤はかなり独特なテンポだ。

俗にいうクライマックスというような大きな波はないが、とうとう大渡海という辞書の完成へのラストランが描かれていて、そこには監修者として長く携わっていた加藤剛演じる松本先生八千草薫が演じるその奥さんが、ストーリーに深く関わってくる。この2人はさすが大ベテラン俳優で作品の屋台骨をかなり安定させたように思う。

この映画は作中で12年という歳月が流れるが、加藤剛は本当にその年月過ごしたんかと言いたくなるくらい老けるwもちろん美術やメイクの賜物だけど何よりも演技力!序盤とはまるで別人のように感じる程だ。

ラスト、辞書完成披露パーティーで松本先生の手紙を読む馬締と荒木の会話シーンは珠玉で、少し安堵する馬締の後ろから「ありがとう」と笑顔で伝える八千草薫には、この映画を観て良かったと心から思わせてくれる。観てるこっちはボロボロと涙が出てしまうのに、馬締と荒木の「何か飲まれますか?」「じゃあ、ハイボール」というやりとりでホッコリとした笑いをいれてくれたのも本当に良かった。

メタな見方だけど、加藤剛と八千草薫が次世代の役者である松田龍平と宮﨑あおいにバトンを渡したようにも見えたね。

終始淡々と静かに描いているのにストーリー自体は胸の熱くなる素晴らしい作品、超オススメだよ。

評価、視聴方法

よくできたラブストーリーでもあった

中盤に馬締が香具矢に告白したシーンは松田龍平のコミュ障な演技に声を出して笑ってしまいましたwあの時に恋の語釈というものが出てきたんですが、これがウィットに富んでいて個人的に大好きです。

恋とは
ある人を好きになってしまい、寝ても覚めてもその人が頭から離れず、他のことが手につかなくなり、身もだえしたくなるような心の状態。成就すれば、天にものぼる気持ちになる。

ちなみに通常の辞書では「異性に愛情を寄せること」位しか書かれていませんが、今作品の語釈の方を全辞書で採用してほしいと思ってしまいましたw

こういう日本らしい名作ってどうしてもキングダムみたいな大衆的な作品に負けてしまいがちですが、今は映画館じゃなくても動画サイトで気軽に観る事ができますから是非1度は観て欲しいですね。何故日本アカデミー作品賞を獲ったのかがよくわかると思います。

名作というのは往々にして開始10分以内に観客を必ず引き込みますが、この作品の冒頭は特に大きなツカミなんてないのにグッと心を掴んできますよ。あるとすれば松田龍平が登場したくらい?w

本当に不思議ですが観ればわかりますので是非!

「舟を編む」の視聴方法

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ちなみに三浦しをん先生原作の映画だとWOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~も超オススメです!ウォーターボーイズスウィングガールズなどの矢口史靖監督で非常に観やすい青春ヒューマンドラマになってますよ。

では、良き映画の時間をお過ごしください。