映画「キングダム」あらすじ、感想【評価は凡作・・・原作通りに作った結果】

キングダム

2019年公開。原泰久先生による歴史スペクタクル漫画・キングダムの実写映画となります。

メガホンをとった佐藤信介監督はGANTZアイアムアヒーローいぬやしき等、漫画の実写化作品をよく手がけていらっしゃる方です。

僕は映画と歴史が大好きなんですが、実はこのキングダムという漫画から歴史にハマりました。この漫画のおかげで中国史、日本史、ヨーロッパ史、中東史、ロシア史・・・と世界中の歴史にハマってしまい、今では人生の趣味の1つにまでwですので原作者の原泰久先生には心から感謝をしております。

ちなみにキングダムというのは秦の始皇帝が天下統一する前の古代中国・春秋戦国時代を描いていますが、決して固苦しいストーリーではなく、かなり読みやすく且つ、めっちゃくちゃ面白いので読んでない方には超オススメしますよ!

本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想、視聴方法も記載しています。

ジャンル:アクション歴史モノ
作品時間:134分

作品情報

興行収入はなんと約57億円!すごすぎますねw比較として同時期公開のアベンジャーズ/エンドゲームが日本では61億だったので、全然引けを取らなかったと言ってもいいと思います。

ちなみに同時期公開の競合作品は以下

  • 名探偵コナン 紺青の拳
  • アベンジャーズ/エンドゲーム
  • 名探偵ピカチュウ
  • 映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~
  • 映画ドラえもん のび太の月面探査記

恐ろしい位GW全開でしたねwこの中で57億は大成功と言っていいと思います!これは続編作ってもらえるかな?と、思っていたら・・・映画関係者の間では「続編は決定どころか4作目まで制作予定」という声が既にあるようです!確かに原作自体が長編ですし、興行収入も良かったので期待していいのではないかと思いますね。

あらすじ

紀元前245年、世は春秋戦国時代・・・西方の国「秦」で戦災孤児の少年・信と漂は、いつしか天下の大将軍になる事を夢見て日々剣術の鍛錬を積んでいた。ある日、漂は王都の大臣・昌文君によって召し上げられ王宮へ行く事になるが、王宮では王の弟・成蟜(セイキョウ)によるクーデターが勃発・・・漂は致命傷を負いながらも何とか信の所まで逃げ帰ってきて、信にある場所を示す地図を渡して息絶えてしまう。信が怒りを胸にその場所まで向かうと・・・そこには死んだはずの漂がいた。

キャスト、スタッフ

原作 – 原泰久
監督 – 佐藤信介

信(シン) – 山崎賢人
嬴政(エイセイ)/漂(ヒョウ) – 吉沢亮
河了貂(カリョウテン) – 橋本環奈
昌文君(ショウブンクン) – 高嶋政宏
壁(ヘキ) – 阿部進之介
里典(リテン) – 六平直政

楊端和(ヨウタンワ) – 長澤まさみ
バジオウ – 阿部進之介
タジフ – 一ノ瀬ワタル

成蟜(セイキョウ) – 本郷奏多
左慈(サジ) – 坂口拓
ランカイ – 阿見201
朱凶(シュキョウ) – 深水元基
ムタ – 橋本じゅん
魏興(ギコウ) – 宇梶剛士
肆氏(シシ) – 加藤雅也
竭氏(ケツシ) – 石橋蓮司

騰(トウ) – 要潤
王騎(オウキ) – 大沢たかお

ものすごいキャスト陣ですよね・・・ちなみに大沢たかおは役作りで15キロ増量、主役の山崎賢人は逆に10キロ落としたそうですよ!

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • 原作ファンを大切に考えすぎた作品
  • 観たかったのはコレじゃない
  • 続編はガンガン作るべき!

原作通りに作るべきだったのか

まずは実写映画化、おめでとうございます!ありがとうございます!

僕は待ち望んでいた。漫画がヤングジャンプで連載スタートした時から「これは映画化するべき!」と首を長くして待っていた。原泰久先生は脚本にも参加したようで、実写化までこぎつけた制作陣含め関係者各位の努力は相当なものだったと思われるし、原作ファンとしては非常に嬉しい思いだ。

描いているのは漫画の5巻まで、つまり弟・成蟜によるクーデター編となるわけだけど、原作との違いはかなり少ない。ランカイと左慈の配置が入れ替わった・・・くらい?あとはもう原作のままと言っても過言ではない。ストーリー構成もそうだけどキャラクターの容姿や描写、セットの建物や小道具、衣装の雰囲気までかなり原作によせてきた。レビューサイトやSNSでも「面白かった!」「山崎賢人は信そのものだった!」「王騎は原作そのまま!大沢たかおすごい!」と、かなり高評価が目立つ。

でも原泰久先生には申し訳ないけど、映画としてはどうなんだろうか。少なくとも僕は面白いとは言いたくない。

まず、漫画原作の実写映画には毎回出てくる話・・・原作を忠実に再現すべきか否かという問題だけど、よくネットでは原作通りに作らないと怒る人達がいるよね。果たしてどちらが正解なんだろうか?

僕はどちらでもいい、ただし面白ければ。である。

今作品はそもそも原作がかなり面白いのは間違いない、僕も大好きだ。魅力的なキャラクターもたくさんでてくるし、ストーリーも超スペクタクル、実写化するにはもってこいの題材だと思う。にもかかわらず、僕が映画としてはイマイチと感じた理由は下記の3つだ。

  • リアリティが削がれてしまっている
  • 山場の戦闘シーンが多すぎる
  • 主題歌はこれで良かったのか

というわけで、この3つを解説していくよ。

観たかったのは漫画ではなく映画だ!

1.リアルとファンタジーの境界線

漫画はリアリティよりもキャラの見た目や世界観などが優先される事が多いと思うけど、逆に実写映画は画面に出てくるのがリアルな人間なわけで、どうしてもリアリティが求められる・・・というかこれは大前提で、ファンタジー作品だろうとリアルなディティールや理由付けは超重要だ。そこが杜撰だと観てるこっちは冷めてしまうんだから。

例えばスターウォーズのダースベイダー、旧三部作で見た目と強さが衝撃的で人気キャラクターになったよね。でもスターウォーズというのはエピソード1,2,3として後出しされただけで、ダースベイダーの前日譚を描いている新三部作は元々ストーリーができていたんだ。つまり、こうした丁寧な動機や理由付けなどのディティールが前提にあったからこそ旧三部作であるエピソード4,5,6で背景が謎でも説得力のあるキャラクターだったんじゃないかと僕は思う。

話を戻して、今作品はそもそも古代中国の春秋戦国時代にあった史実を描いており、登場人物の多くは本当に実在したし、実際に起きた出来事が交えられている。スターウォーズよりもリアリティが必要な題材というわけだ。にもかかわらず、3つに分かれた王騎のヒゲや、朱凶の人間離れした顔、ランカイの巨躯などをそのまま映像化しているよね。王騎は古代の中国において、毎朝あのヒゲを自分でセットしてるのか?朱凶は整形でもしたのか?というメタな疑問を僕は投げかけたくなってしまった。漫画ならば問題ないけど実写映画では致命的な胡散臭さじゃないか。これを「原作がそうだから」という理由で見逃すのは、納得がいかないよ。

2.中盤の戦闘とクライマックスの戦闘

主人公である信の戦闘シーンは主に4戦ある。

  1. vs朱凶
  2. vsムタ
  3. vsランカイ
  4. vs左慈

ちなみに原作ではランカイと左慈は逆だけど、プロデューサーの松橋真三氏が原泰久先生に進言し今回のようになったという。ただ正直ランカイと左慈が逆なのはどうでもよくて、それよりも朱凶やムタとの戦闘と比較して最後の左慈戦がいまいちという方が大問題だ。これは左慈というキャラクターの存在感が薄すぎた事もあるけど、そもそもハラハラする大事な主人公の戦闘という山場が4つもある事自体がまずいよね。そりゃラストバトルが薄れるよ。

3.主題歌の挿入タイミング

主題歌はONE OK ROCKの「Wasted Nights」という曲・・・この映画の為に書き下ろしたものだ。別にこの曲自体は素晴らしいと思うよ。壮大で大作感あったし。ただ、この曲がかかるタイミングと歌詞が問題だ。左慈を倒し王騎の見せ場が終わりラスト・・・信と政が未来について語り合うシーンなんだけど、いきなり出だしで「Must be something in the water~」と英語で歌い出すんだから興ざめだ。そもそも中国の話なのに日本語じゃねーか!と言われたら返す言葉はないんだけど、さすがに英語は世界観がかなりぶっこわれたと感じたよ。

読んでいてむかついた方には悪いけど、僕も僕で原作に対してリスペクトと愛情を持っているからこそ言いたいんだ。なんなら続編どころか何部作になろうと徹底的にキングダムの全てを実写化してほしいとさえ思っている。でも、だからこそ続編を作る気ならキングダムという漫画の実写化を作るのではなく、キングダムの映画を作って欲しいんだ。佐藤監督や原先生も含め制作に携わった全ての人達、そして原作に忠実だったからと手放しに絶賛した人にも言いたい。何でもかんでも原作通りに作る事=面白いじゃないだろ、と。

はっきり言って僕には贔屓目にみて及第点ギリギリだったよ。

原作ファンと制作陣は考え直すべき

原先生のインタビュー記事を読んだ。

先生は「映画化の話をいただいた時、まず原作ファンへ「映画館に行って良かった」と思わせるものにしたいという使命感がありました。」とおっしゃっていた。これはファンからしたら嬉しい言葉だし素晴らしい気持ちだと思うけど、だからと言って原作通りに作る=面白い映画になるという勘違いは捨ててほしい。

「皆キャラ通りで本当面白かった!」

「原作通りで安心した!面白かった!」

原作ファンはコレでいいのかもしれないけど、原作が面白いんだからそのまま作れば面白いんだ!なんて間違っている。他のシネフィルはどうかわからないけど、少なくとも僕からすればそんなの映画という文化をバカにしているのと同義に感じるよ。

「ミノ着せただけの橋本環奈だった、そこだけクソ。長澤まさみはよかった!」

こんな感想も目にしたけど、原作の河了貂だってミノ着てるだけじゃないかw確かに興行収入がついてこないと続編は作れないから、原作ファンに忖度したくなる気持ちもわかるけど、制作サイドはちゃんと映画の土俵で勝負してほしかったよ。そして原作ファンも映画として観てあげてほしかった。

ドラマやアニメ、週間連載されている漫画などは、次のお話を見てもらう為にストーリーが作られているよね。映画はその1本で起承転結があるんだ。原作と同じ脚本、構成でいけると思わないで欲しい。

日本には数多の素晴らしい漫画があるし、その中でもキングダムは屈指の名作・・・次作も必ず映画館で観るから頼むよ、佐藤監督!

評価、視聴方法

続編に期待!

辛辣なレビューとなりましたが、如何でしたでしょうか?

僕は上述したように原作通りでも面白ければいいんです。今回、原作ファン、制作陣の全員に読んでほしいという願いで書きました。

当たり障りない作品・・・というのが僕の率直な感想ですが、制作陣も正直思うところがあるんじゃないでしょうか。つまらなくはないですが、少なくとも名作とは言う気になれません。忖度なんてしないでいらないシーンは引き算するべきでしたし、個人的には敦煌のような雰囲気のキングダムだったら・・・なんて思いましたね。

散々率直な感想を書きましたけど、それでもキングダムの事は大好きですし、世界で勝負ができる題材だと信じているので次作も期待しております!

2はとうとう羌瘣が出てくるんでしょうか?楽しみですね!

「キングダム」の視聴方法

Amazonプライムなら年間プラン4,900円(税込)または月間プラン500円(税込)で映画の他にも松本人志のドキュメンタルアニメprimeオリジナル作品なんかも見放題なのでお得ですよ!

「キングダム」をamazonで観る

今作品の佐藤信介監督ならばアイアムアヒーローがかなりオススメです!こちらの原作漫画も僕は好きですが、主演の大泉洋が素晴らしかったし、映画としても非常に面白い傑作でしたよ。

では、良き映画の時間をお過ごしください。