映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」あらすじ、感想【現代からの復讐劇】

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

2019年8月30日公開。クエンティン・タランティーノ監督による9作目です。

ブラット・ピットレオナルド・ディカプリオ・・・映画界の2TOPと言ってもいい2人のW主演という映画史に残る衝撃的なキャスティングですね!これに加えて監督がタランティーノとか・・・映画好きな人で観ない人いないんじゃないでしょうか。

1969年におきた女優のシャロン・テート殺害事件を背景に当時のハリウッドを描いており、チャールズ・マンソンロマン・ポランスキー監督、そして彼にカンフーを教えていたブルース・リーなど実在の人物が出てきますが、決してノンフィクション映画ではありません。69年という音楽を中心にエンターテイメントが沸騰した狂気の時代を、オシャレに、そしてシニカルに描いた傑作ですよ!

本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想や作中に使われた音楽を紹介しています。

ジャンル:サスペンスヒューマンドラマ
作品時間:161

作品情報

現在公開中ですが、既にアメリカの映画評論サイトであるロッテン・トマトや、日本のフィルマークスでは、かなりの高評価を得ていました。

映画賞では美術関係や、ディカプリオの演技あたりで何かしら受賞するんじゃないかと思います。69年という事で作中に使われている名曲の数々も素晴らしかったので音楽、音響あたりも?車のエンジン音とか最高でしたよ。

タランティーノ作品一覧はこちら↓

あらすじ

ピークを過ぎたTV俳優リック・ダルトンと、彼に雇われているスタントマンのクリフ・ブース・・・親友の2人は落ち目である自身を受け入れつつ、ハリウッドでもがき暮らしていた。そんなある日、リックの隣には世界で活躍を続ける映画監督のロマン・ポランスキーと新進の女優シャロン・テート夫妻が引っ越してくる。そして1969年8月9日、映画史に残る事件の夜がきて、リックとクリフも巻き込まれるが・・・

キャスト、スタッフ

監督・脚本・ – クエンティン・タランティーノ
制作 – クエンティン・タランティーノ、デヴィッド・ハイマン、シャノン・マッキントッシュ

リック・ダルトン – レオナルド・ディカプリオ
クリフ・ブース – ブラッド・ピット

シャロン・テート – マーゴット・ロビー

プッシーキャット – マーガレット・クアリー
リネット・フロム – ダコタ・ファニング
エンジェル – ダニエル・ハリス
テックス・ワトソン – オースティン・バトラー

フランチェスカ・カプッチ – ロレンツァ・イッツォ
ロマン・ポランスキー – ラファル・ザビエルチャ
チャールズ・マンソン – デイモン・ヘリマン
スティーブ・マックイーン – ダミアン・ルイス
ブルース・リー – マイク・モー
ジョアンナ・ペティット – ルーマー・ウィリス

ジョージ・スパーン(盲目の牧場主) – ブルース・ダーン
ランディ – カート・ラッセル
ジャネット – ゾーイ・ベル
ハケット保安官 – マイケル・マドセン

マーヴィン・シュワーズ – アル・パチーノ

他にも登場人物は沢山いるんですけど、とりあえずはブラピ、ディカプリオに注目しておけばOKです。ただタランティーノ作品の常連俳優らも渋く揃っており、そこに加えてアル・パチーノですからね。もはやアベンジャーズですよこれは・・・w

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • カウンターカルチャーに対する愛と復讐
  • ディカプリオ演技うますぎw
  • すごく良い奴らを描いたお話

何がカウンターカルチャーだ!何がヒッピーだ!

タランティーノはまたもすごいものをぶった切った。

  • イングロリアス・バスターズではナチス・・・ユダヤ虐殺など極悪非道な歴史的行為は誰もが知っているんだけど、逆にナチスの持つかっこよさだったり、ヒトラーのカリスマ性なども内心どこか認めてしまっているよね。
  • ジャンゴ 繋がれざる者では黒人差別問題・・・その昔、白人は黒人を家畜以下に扱っていた時代があり、それは現代でもまだその差別意識が残っているにも関わらず、口から出てくるのは「差別はよくないから皆やめよう!」だよね。

こうした社会的にナイーブすぎて誰も触らなかったテーマを、近年のタランティーノ監督はバッサバッサと切り刻み、歴史をリブートして上質なエンターテイメントに作り替え、世間に投げつけてきている

では今作品で切り刻んだのは何なのか?

それは1969年に実際におきたシャロン・テート殺害事件の殺人実行犯やチャールズ・マンソン・・・ではなく、1960年代に巻き起こったヒッピーを中心とするカウンター・カルチャーだ。確かに69年は世界中で反権力主義、自由主義みたいな考えがウイルスのように流行し、おかげで音楽を中心とするエンタメ文化は沸騰状態にあった。

「我々は自由だ!権力者のやつらは許せない!ベトナムでは今も血が流れてるんだよ!」

作中のセリフでも1度出てきてたけど、こんな事を日々叫びながら生きていたのがヒッピーという人達・・・彼らのイメージって現代では60~70年代という激動の時代の代名詞になっているよね。でも彼らの実際の生活は薬物とSEXにまみれた怠惰な日々・・・つまり彼らは前述した沸騰していた上質なエンタメや時代なんて実は一切作っていないんだ。

にもかかわらず、やれ自由だのカウンター・カルチャーだの・・・誰が何を言ってるんだって話じゃない?では、現代にもつながる素晴らしいエンタメを本当に作っていた人達とは誰なのか?それが今作品で必死にもがき生き抜いてたリッククリフ達というわけだ。

つまり今作品はカウンターカルチャーに対してカウンターを食らわせた痛快な映画と言える。

ディカプリオの演技力がこれで認知されるはず!

ディカプリオという役者・・・世の中ではタイタニックのイメージで止まっている人が結構いる。

あまりにもイケメンすぎるが故、どこかアイドル的に見られてしまうんだろうけど、シネフィルは誰もが認める超絶演技が上手いおじさんだ。主役はもちろんだけど脇に回っても素晴らしい立ち回りをするし、悪役から善玉、ヤク中から貴族まで何でもこなす器用さと演技力は現状最高峰の俳優と言ってもいいんじゃないだろうか。

今作品はブラピとの初共演というのも影響してるのか、異常なまでの怪演・・・泣き芸に至っては、もはや上手すぎて逆に観客が我に返るレベルw演技がうまくいかず1人で発狂するシーンは映画館で1人笑ってはいけない状態だよ・・・声殺すのに疲れたわw

もちろんブラピもやばい・・・売れないスタントマンの役柄なんだけど、こちらも超自然体で演技が上手すぎるから超絶イケメンのはずなのに、どこか幸の薄さがにじみ出てくる始末・・・で、この2人が主演で映画を引っ張るもんだから、ハッキリ言って彼らの演技だけで最後まで観れちゃうよ。

ただ、今作品は途中で飽きたとか、肌に合わなかったって人も結構いたようだ。

タランティーノ作品の特徴の1つである面白無駄話がなかったからかな・・・でも最近はレザボア・ドッグスパルプ・フィクションのような無駄会話はあまり使ってないんだけどね。イメージがあるから求められちゃうのは仕方ないかもしれないけど、今作品で本当に注目すべきは69年の風景、人、音や空気の再現性だと思う。どこでもすぐにタバコに火をつける人達や荒い時代背景、車に乗れば大音量の名曲ラッシュ、渋いアメリカ的な電飾看板や旧車が当たり前に走る街並み・・・世代じゃないのに憧れてしまうかっこよさを感じなかった?僕はこの時代の音楽が好きだからたまらなかったよw

「自由だー!」とか叫びながら傷をなめあって生きていたヒッピー達じゃなく、マカロニ・ウェスタンのオファー受けた事で震えながら悔し泣きをしたディカプリオ演じるリックこそが、時代の象徴となるべき本当にかっこいい人なはずだよね。

クリフが慰めてるシーンも演技がうますぎて本当に笑えるw

シャロン・テート殺害事件当日、本当にあの2人がいたら・・・

復讐劇を描くのが大好きなタランティーノ監督。

ネタバレになるので細かく書かないけど、ラストシーンは皆スカっとした人が多いみたいだね。確かにすごかったからねwただ、今作品の復讐劇とは、別にシャロン・テートを殺したチャールズ・マンソン・ファミリーに対してではなく、正確には浅はかな思想で時代を動かしたと勘違いしていたヒッピー共に対しての復讐だろう。僕にはタランティーノ監督がブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオという現代映画の最高峰である2人を69年に送り込んだように感じたよ。

「お前らがシャロン・テートを殺そうと映画という文化は未来で死んでねえんだよ!バーカ!」

2019年にはこんなすごい俳優がいるんだぞ!と。お前らの時代に、そしてあの現場にブラピとディカプリオがいたらこうなってたんだよ!と。これこそが今作品のタランティーノ監督のメッセージじゃないかと思う。

だからこそ・・・ラストシーンで僕は泣いてしまった。リックが飲みに誘われて穏やかな足取りで屋敷に入っていく姿はたまらなかった。後日クリフも来て一緒に酒を嗜むんでしょ?そして、その飲み会にタランティーノ監督も参加したかったんでしょ?確かにこれは僕の想像だ。ただ、そう思うと監督の映画に対する愛情を感じずにはいられなかったよ。

素敵な復讐劇を、そして素晴らしい映画をありがとう、絶対次作も作ってねw

評価

作中に使われた素晴らしい音楽の数々

今作品はシャロン・テート殺害事件の事をさわりだけでも知ってから観た方がいいかもしれませんね。

じゃないと、いまいち楽しめないかもしれませんw知った上でも残念ながら琴線に触れなかった方は、前述した69年の再現性時代を超えた復讐劇の2点に注目して、是非もう1度鑑賞して欲しいです!

ところで予告でも流れていた超かっこいい曲・・・気になりませんか?

スペインのロックバンド、ロス・ブラボーズというバンドの「Bring A Little Lovin’」という曲です。作中ブラピの運転中に流れていたシーンは、めっちゃくちゃかっこよかったですね!是非これを機に60年代ミュージックにハマってみてください!というか・・・今作品のサントラがあるのでオススメしておきます。もちろんこの曲も入ってますよ!

※発売予定日は2019年9月4日

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最後にもう1度タランティーノ作品一覧も貼っておきますね。初めてタランティーノ映画を体感して面白いと思った人は全作品ハマれるかもしれませんよw

では、良き映画の時間をお過ごしください。