映画「アイリッシュマン」あらすじ、感想【Netflix制作!実話ベースの作品】

アイリッシュマン

2019年公開。マーティン・スコセッシ監督によるアメリカ史最大の謎・ジミー・ホッファ失踪の真相について描いたギャング映画です。限定的な劇場公開の後に、2019年11月27日よりNetflix作品として配信がスタートしました。

ロバート・デ・ニーロアル・パチーノの共演は見慣れたものですが、レザボア・ドッグスハーヴェイ・カイテルスナッチスティーヴン・グレアム、そして誰よりもまさかのジョー・ペシ!映画ファンにはたまらないキャスティングとなった今作品・・・しかもスコセッシのマフィア作品ですからね。必見の1本です。

本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想、視聴方法も記載しています。

ジャンル:クライムヤクザ・ギャング系
作品時間:210分

作品情報

ニューヨーク映画批評家協会賞で作品賞を受賞しました。ロッテントマトでも批評家の96%が支持評価と大絶賛です。

ちなみに今作品は、映画館チェーンが劇場公開からネット配信まで60日以上は空けろと要求してましたが、Netflix側が約4週間で公開する予定を崩しませんでした。その為、いくつかの映画館は劇場公開を拒否となった経緯があります。

あらすじ

フランク・シーランはしがない真面目なトラック運転手だったが、マフィアのラッセル・バファリーノと出会った事で人生が一変する。いつしかマフィアの殺し屋となったシーランは、ラッセルの紹介で全米トラック運転組合の指導者である時代の寵児・ジミー・ホッファと親しくなっていく。アメリカの表と裏である全米トラック運転組合とマフィアの間で生きたシーランの人生とは・・・?

キャスト、スタッフ

原作 – チャールズ・ブラント「I Heard You Paint Houses」
監督 – マーティン・スコセッシ
脚本 – スティーヴン・ザイリアン

フランク・シーラン – ロバート・デ・ニーロ
ジミー・ホッファ – アル・パチーノ
ラッセル・ブファリーノ – ジョー・ペシ

フェリックス・ディトゥリオ – ボビー・カナヴェイル
ビル・ブファリーノ – レイ・ロマーノ

アンソニー・サレルノ – ドメニク・ランバルドッツィ
チャッキー・オブライエン – ジェシー・プレモンス

キャリー・ブファリーノ – キャスリン・ナルドゥッチ
ペギー・シーラン – アンナ・パキン
アイリーン・シーラン – ステファニー・カーツバ

ロバート・ケネディ – ジャック・ヒューストン
ドン・リックルズ – ジム・ノートン

トニー・プロ – スティーヴン・グレアム

アンジェロ・ブルーノ – ハーヴェイ・カイテル

ジョー・ペシは相変わらずキュートで怖い笑顔でした!ちなみに出演交渉は相当大変だったようで50回も断られたそうですw

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • 名優たちの共演は必見!
  • アメリカの裏側が覗ける映画
  • スコセッシ映画の集大成

こんな贅沢な共演はまずない

なんとすごいメンバーを集めたものだ。

ロバート・デ・ニーロアル・パチーノの共演は見慣れたものだけど、そこに怪優ジョー・ペシが加わるというんだから、それだけで感涙ものだ。映画出演は実に9年ぶり・・・本当によく出てくれたものだよ。映画をあまり観ない人は名前自体知らないかもしれないけど、顔を見たら思い出す人も多いんじゃないかな。

なんせホーム・アローンの泥棒役ですから。

身長163cmしかないし可愛い顔してるんだけど、怖い役やらせたら群を抜いてうまいし本当に怖いwなのにコメディも軽々とこなしてしまう・・・まさに怪物的な俳優だ。

この3人が軸となるマフィア映画、しかも監督はスコセッシ・・・いやもう贅沢すぎる。Netflixが本腰いれるわけだ。その上、ブルーノ役でハーヴェイ・カイテル、トニー・プロ役にスティーヴン・グレアム・・・豪華すぎて吐きそうになる。正直、今作品の「どのシーンが良かった」とか「あの演技が良かった」なんて批評する事自体が無粋に思えてくるよ。

はっきり言って内容がつまらなくても名作と言ってしまいそうなくらいすごい事だ。学校で映画の授業なんてあれば間違いなくテストに出るレベル・・・まずはこんな大作を77歳で作ってくれた監督に感謝と尊敬を贈りたい。

サンキュー、スコセッシ。

アメリカの表と裏を見た移民の話

今作品は老いたフランク・シーランの語りから始まる。

若い頃、トラック運転手だったシーランはアイリッシュ・・・つまりアイルランド系の移民である。アイリッシュは当時アメリカで差別されていて、仕事は警察官や消防士、そしてマフィアの小間使いのような命がけの危険な仕事低賃金の肉体労働しか無かった。そんな移民のシーランはマフィアの顔役ラッセルという男と知り合う事で運転手から殺し屋へと変貌していき、国民のスターだったジミー・ホッファと仲良くなり、アメリカの表と裏を見た男だ。

シーランは戦時中に上官の言う事をただ淡々とこなし生きてきた。マフィアから頼まれる仕事も同じだというのだ。ラッセルやホッファに頼まれた事は下手な考えを持たず、とにかくやる。やり遂げる。もちろん中には暗殺など汚れ仕事も沢山あるんだけど、移民のシーランが家族を養って生きていく為には仕方のない処世術なのだ。

今作品のタイトルは「アイリッシュマン

確かにこの映画はマフィアを描いているけど、本質は移民の物語だと言える。

ケネディ大統領の訃報がテレビで流れたシーンは非常に印象的だ。シーラン含め、レストランの誰もがテレビに釘付けとなりショックで動揺する人もいる中、ジミー・ホッファだけが何とも言えない表情で席に戻る。ジョン・F・ケネディという人はアメリカ史において、選挙で選ばれた中でもっとも若い大統領であり、何よりもアイルランド系アメリカ人として初めての大統領・・・移民のアイリッシュにとってヒーローなのだ。

ちなみに、このシーンのアル・パチーノはすごかった・・・無表情なのに心が笑ってるのがわかるんだよね。何度も観直したけど口角があがってるわけでもないのに、明らかに喜んでいて「俺の時代が来るぞ!」という心の叫びが聞こえてくるような感じ・・・バイタリティに溢れ全方位にうなる姿は79歳には全く見えないw

今では様々な人種が集まるアメリカ・・・今作品は、そんな超大国を築き上げてきた偉人たちの横で全てを見てきたある移民の話だ。

スコセッシらしい秀逸なラスト

僕はこの映画を観て過去のマフィア映画ではなく、あるスコセッシ作品を思い出した。

ウルフ・オブ・ウォールストリート

元株式ブローカーであるジョーダン・ベルフォートの人生をコミカルに描いた傑作だ。この両作品はすごく似てると思う。どちらも実在の人物が語った自身の過去をスコセッシ監督が映像化しているんだけど「こんな波乱万丈な人生を歩いた人がいたんだよ!」といった雰囲気じゃなくて、どちらかというと「『俺の人生は波乱万丈だったんだよ!』と言ってる人がいたよ」という感じw

シーランは数多の大物と知り合い、金も手にして家族も養ってきた。暗殺稼業もしてきたけど、人の言う事はちゃんと聞いて真面目に生きてきたんだ。自身が主役のパーティーには沢山の人が駆けつけてくれた。でもラストシーンは老人ホームで孤独な中、神父に昔取った杵柄を語るシーランの悲しい姿・・・過去を後悔してるならまだ救いがあるけど、シーランはいまだ淡々と生きてるだけ、つまり若い頃から何も変わってないし、自身の人生がカラッポだという事に気付いていないのだ。

表情だけで表現するデ・ニーロには圧巻だよ。

ジョーダン・ベルフォートもそうだけど、フランク・シーランは自身の人生が映画化した事を喜んでいるだろう。77歳のスコセッシ監督はあんなに悲しい老後を、一体どういう気持ちで撮影していたんだろうか・・・皮肉が効きすぎてるよw

デ・ニーロパチーノジョー・ペシという映画史の中でも最高峰のメンツが揃った奇跡の1本、内容も素晴らしかったし、絶対に観るべき映画だと言いたい。

評価、視聴方法

3時間半という長編映画

大変面白い映画でしたが・・・ちょっと長いですねw

別に観ていて退屈になる事はないですし、むしろかじりつくように観てしまったんですが、スコセッシ監督ならもっと削れたんじゃないかと思います。正直いらなかったと思うシーンもちらほらありましたし。ただ、それを差し引いても映画史に残る1本なのは間違いありません。

MCU全盛で体感型映画館なんかも増えている中で、コッテコテのマフィア映画というのは時代遅れで古臭いと感じてしまう人もいるかもしれません。でも、だからこそスコセッシ監督は後世に残しておきたかったんじゃないかなと思いました。

そんなスコセッシ監督ですが、早速次作に取り掛かってますwなんと次作はディカプリオデ・ニーロを起用するとの事!MCU作品をテーマパークだと言って炎上してましたが、どうかこの映画好きすぎお爺さんを嫌いにならず、他作品も観てあげてください。

シャッターアイランドなんか超オススメですよ!

「アイリッシュマン」の視聴方法

Netflixは映画の他にもドキュメンタリー、ドラマ、アニメや受賞歴のあるオリジナル作品などが月額800円(税抜)から楽しめます。追加料金がかかる事はないので安心のVODサービスですよ!

「アイリッシュマン」をNetflixで観る

ジョー・ペシが気になったなら同じくスコセッシ監督によるグッドフェローズはいかがでしょう?ロバート・デ・ニーロも出ています。ただ個人的にはコメディのジョー・ペシの方が好きなのでホーム・アローンをオススメしますw

では、良き映画の時間をお過ごしください。