映画「カッコーの巣の上で」あらすじ、感想【不朽の名作!ラストを解説】

カッコーの巣の上で

今は亡きミロス・フォアマン監督による不朽の名作です。

精神病院を舞台とした感動ヒューマンドラマで、原作はケン・キージーのベストセラー小説、主演はジャック・ニコルソンが務めました。初めて観た時は何とも言えない感情でいっぱいになり涙が止まらなかったのを覚えています。僕にとってオールタイムベストですね!

[ジャンル]ヒューマンドラマ
[作品時間]133分
[公開日]アメリカ:1975年11月19日 / 日本:1976年4月3日

本記事の内容
  1. 予告動画やキャスト情報
  2. ネタバレありの感想
  3. ネットで鑑賞する方法

作品情報

映画批評サイト『ロッテントマト』の評価 (批評家:93%/一般:96%)

カッコーの巣の上で評価
引用元:https://www.rottentomatoes.com/

  • 作品賞[受賞]
  • 監督賞 – ミロシュ・フォアマン[受賞]
  • 主演男優賞 – ジャック・ニコルソン[受賞]
  • 主演女優賞 – ルイーズ・フレッチャー[受賞]
  • 脚色賞 – ボー・ゴールドマン、ローレンス・ホーベン[受賞]
  • 助演男優賞 – ブラッド・ドゥーリフ
  • 作曲賞 – ジャック・ニッチェ
  • 撮影賞 – ビル・バトラー、ハスケル・ウェクスラー
  • 編集賞 – リチャード・チュウ、シェルドン・カーン、リンジー・クリングマン

アカデミー賞9部門ノミネート、そして主要5部門を受賞・・・まさに完勝!僕が産まれる前ですが、リアルタイムで体感してみたかったですね・・・本当に素晴らしい映画だと思います。

ちなみに今作品の映画化権はカーク・ダグラスが持っていて自身が主役をやる気満々だったんですが、周囲から「歳くいすぎだろww」と言われ渋々断念、権利を譲渡された息子のマイケル・ダグラスソウル・ゼインツと映画化したという経緯がありますw

あらすじ

刑務所から逃れる為に詐病を使って精神病院に入院してきたマクマーフィー・・・彼はセラピーなどやめてテレビで野球を観ようと提案したり、薬を飲んだふりして吐き捨てたりと、病棟のルールを全く守らずやりたい放題だった。最初は戸惑っていた他の患者達も、共に過ごす内に少しずつ彼に惹かれ賛同し始める。その状況を観察していた病院側はマクマーフィーを病気ではなく危険な人物だと判断するが果たして・・・

スタッフ・キャスト

原作 – ケン・キージー「カッコウの巣の上で」
製作 – ソウル・ゼインツ、マイケル・ダグラス
監督 – ミロス・フォアマン
脚本 – ローレンス・ホーベン、ボー・ゴールドマン
音楽 – ジャック・ニッチェ

ランドル・パトリック・マクマーフィー – ジャック・ニコルソン

チーフ・ブロムデン – ウィル・サンプソン
エリス – マイケル・ベリーマン
ハーディング – ウィリアム・レッドフィールド
ビリー・ビビット – ブラッド・ドゥーリフ
テイバー – クリストファー・ロイド
マティーニ – ダニー・デヴィート
フレドリクソン – ヴィンセント・スキャヴェリ
チャーリー・チェズウィック – シドニー・ラシック
マターソン – ピーター・ブロッコ

タークル – スキャットマン・クローザース
キャンディ – マーヤ・スモール
看護婦長ラチェッド – ルイーズ・フレッチャー


ロード・オブ・ザ・リングの蛇の舌ことグリマを演じたブラッド・ドゥーリフ、バック・トゥ・ザ・フューチャーのドクで有名なクリストファー・ロイド、そしてジュマンジ/ネクスト・レベルのエディ・ギルピン(お爺ちゃんw)であるダニー・デヴィート・・・この3人はこれが映画デビュー作となります!

ジャック・ニコルソンスキャットマン・クローザースは今作品から5年後・・・キューブリックシャイニングでまた共演していますね。こちらも傑作でオススメですよ!

映画「シャイニング」あらすじ、感想【続編も決定した傑作ホラー】

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

感想

「カッコーの巣の上で」アイキャッチ画像1

  • 笑えて泣けて、少し考えさせられる
  • 人間の尊厳と人生の素晴らしさ
  • ジャック・ニコルソンという怪優

タイトルの意味は?問われる人間の尊厳

今作品は感動作ではあるんだけど、そんな単純な感想では終われない。

主人公のマクマーフィーは人を小馬鹿にしたような振る舞いをした、まるでふざけてばかりいる子供の様な男だ。登場から好き放題に生きてきたと一発でわかるジャック・ニコルソンの当たり前のようにこなす名演技には感服するよw

一方、精神病院にいる人達は知的障害や精神障害など様々な病を持っているんだけど、今と違い「一般的じゃない人」として雑に括っている。このあたりは時代背景があるから仕方ないんだけど、決まった時間に起きて、決まった時間に渡された薬を飲み、決まった時間に寝るという完全に統制された日々を過ごしてる彼らはどうしても異様に見えてしまうよね。

今作品の原題は「One Flew Over the Cuckoo’s Nest」

意味を直訳すれば「一羽がカッコーの巣の上を飛んで行った」となる。カッコーの巣というのが精神病院の隠語なので、意訳すると「精神病院から1人が脱走した」お話というわけだ。でも観た人はこんな状況説明みたいな意味でしっくりくるだろうか?少なくとも僕は嫌だw

今作品は、主人公マクマーフィーと触れ合う事で、人生の素晴らしさを実感していく精神病院の患者達を描いている。病院の決めたルールに従ってルーチン化した日々を過ごす事・・・それは果たして生きていると言えるんだろうか?もっと言えば、抑圧されている事さえも気づかず、それが当たり前になってしまったら・・・こんなに悲しい不幸は無いんだよ。

恐ろしい事に今作品のこうしたテーマ、メッセージは現代の普通の人々にも突き刺さってしまうよね・・・。

再確認させてくれる人生の素晴らしさ

今作品はコメディのように笑わせてくれる。

マクマーフィーを中心に皆でブラックジャックで遊ぶシーン・・・ルールを理解してないダニー・デヴィートが演じるマティーニが「Hit me!Hit me!(カードを1枚くれ!)」と連呼して、イライラしたマクマーフィーがキレるんだけど、もう声出して笑ってしまうw

他にも皆で抜け出して釣りをしたり、映ってないテレビを見ながら騒いだり、バスケで盛り上がったり・・・段々と患者達がマクマーフィーに心を開きはじめ共に笑い合う姿は、観てるこっちも楽しくなってくる。これは抑圧されていた患者達がマクマーフィーによって解放されていってるわけで、つまりは患者達が自然と人生の素晴らしさに気付き始めてるという事・・・病院内の世界しか知らなかった彼らが「生きるのって面白いじゃんか!」と理解していくから、なんというか多幸感があるんだよね。

「今作品の1番の名シーンを教えてください!」と言われたら本当に困る。

いや、確かにやっぱりラストシーンはグッとくるんだけど、どこを切り取っても本当に素晴らしいのだ。パッケージや予告動画からはスローテンポのヒューマンドラマに感じるだろうけど、実際に観るとテンポの良さにびっくりすると思うよ。これからどうなっていくのか?と中盤までストーリーラインがいまいち見えてこないのに、ここまで楽しめる映画って結構稀だと思う。

ただ、こうした丁寧な幸せの積み重ねが、クライマックスに向けたフリになっている・・・。そこに今作品の真髄ともいうべきテーマとメッセージがあるんだ。

なぜ?ラストシーンのチーフの行動

今作品は原作では主人公がマクマーフィーではなくチーフというキャラクターになっている。

チーフはインディアンの血をひいている大男で、耳が聞こえず話す事も出来ない。ある日、マクマーフィーが彼に「お前も食うか?」とガムを渡すと耳が聞こえないはずのチーフは「ありがとう」とお礼を言う。「お前本当は聞こえるのかよ!」と嬉しそうに跳ね上がるマクマーフィーは、続けてここから一緒に脱走しようと提案するが、チーフは「俺はやめておく」と断る。

アメリカ史をひも解くと白人によるインディアンや黒人に対してのジェノサイドはあまりにもひどい。別に映画内で描かれるわけじゃないけど、インディアンの血を引くチーフにとって外の世界というのは差別にまみれた地獄だったんだと僕は思う。だからこそ分け隔てなく誰とでも接するマクマーフィーに好感を抱き、本当は耳も聞こえ話せるという事を打ち明けたんだろう。

そしてラスト・・・チーフはある出来事の後に、やっぱりマクマーフィーと共に脱走する事を決意する。しかしロボトミー手術で廃人と化した彼を目の当たりにし「こんなおまえを置いてはいけない、一緒に連れていくよ。」と言い自身の手でマクマーフィーを殺した後に1人で脱走する。

なぜ!?と思う人が結構いるようだけど、今作品が描いているものは人間の尊厳人生の素晴らしさだ。様々な物事に触れて色々と感じたり考えるのが人間であり、家族や友達と楽しさ、嬉しさ、時には悲しさや辛さなどを共有して生きる事が人生の素晴らしさなんだ。その全てを奪われたマクマーフィーは果たして人間と言えるんだろうか?今後の人生を楽しめるんだろうか?

チーフはマクマーフィーの魂を素晴らしい外の世界に連れて行ってくれたんだと僕は解釈したよ。

前述したように今作品は確かに「精神病院から1人が脱走した」お話だ。ただタイトルの本当の意味は「1人の男が人生を楽しむ事を決意した」お話だと僕は思う。ただ感動できるだけじゃない、笑えて泣けて少し考えさせてくれる・・・本記事を書く上で久しぶりに観直したけど、やっぱりこの映画はすごい。

言葉を失う程のラストシーンを持つ素晴らしい名作だよ。

評価・鑑賞方法

「カッコーの巣の上で」アイキャッチ画像2

万人にオススメできる名作中の名作

今作品の評価
物語・テーマ
(5.0)
配役・演技
(5.0)
演出(音楽/映像/etc)
(4.5)
観やすさ
(5.0)
余韻
(5.0)
総合評価
(5.0)

やっぱり誰が何と言おうと僕のオールタイムベストです!俳優陣の演技は絶品な上に、わかりやすいストーリーと構成で非常に観やすいんですよ。1975年の映画ですので映像は少し古臭く感じちゃうかもしれませんが気にしないで欲しいですw重いテーマであるロボトミーを描いているのに希望に満ちたラストになっているという、何とも不思議な感動を体験できると思いますので是非1度はご覧になってみてください!超オススメの1本です。

ちなみに同じくロボトミーを描いた映画なら時計じかけのオレンジも面白いですよ!感動とはかけ離れた作品ですがw

映画「時計じかけのオレンジ」あらすじ、感想【タイトルの意味と正解の解釈】

「カッコーの巣の上で」をネットで観るには?

YouTubeで観る(750円)

Google Playで観る(750円)

現在は上の2サイトで観る事ができます。(※2020/2/5現在)

ただ、どちらもレンタルはなく購入のみ・・・というわけで僕は金額的にそこまで変わらなかったのでAmazonで中古のブルーレイ(900円)を購入しました。画質も素晴らしく大満足ですね!今作品が大好きという人は是が非でもブルーレイ購入をオススメします^q^

では、良き映画の時間をお過ごしください。


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