1980年5月に起きた韓国の光州事件を描いている作品です。
チャン・フン監督が実話を基に秀逸なヒューマンドラマへと再構成しており、出る作品全てを名作にしてしまう韓国の至宝ソン・ガンホ、脇もユ・ヘジンやリュ・ジュンヨルと安定の名優が固めました。
コメディタッチに展開する前半からシリアスで考えさせられるクライマックス、そして最後は目頭が少し熱くなってしまうというオールジャンル・エンターテインメントは、もはや韓国映画の十八番と言ってもいいですよねw
かなりシリアスな史実を描いているんですが、信じられないくらい観やすい1本に仕上がっているので、あまり映画を観ない人でも十分に楽しめると思います!
[ジャンル]歴史映画、ヒューマンドラマ[作品時間]137分
[公開日]韓:2017/8/2|日:2018/4/21
- キャスト情報が知りたい!
- どんな映画なのか知りたい!
- 視聴方法を知りたい!
もくじ
作品情報
ものすごく評価が高いですね!オーディエンス評が少ないので世界ではそこまで知られていないかもしれませんが、もっと広めるべき名作だと思います。
受賞歴
- 最優秀作品賞 – チャン・フン[受賞]
- 男優主演賞 – ソン・ガンホ[受賞]
- 撮影賞 – ゴ・ナクソン
- 音楽賞 – チョ・ヨンウク
- 美術賞 – チョ・ファソン、チョン・イジン
- 釜日読者審査団賞[受賞]
- 最優秀作品賞 – チャン・フン[受賞]
- 監督賞 – チャン・フン
- 男優主演賞 – ソン・ガンホ
- 脚本賞 – オム・ユナ
- 音楽賞 – チョ・ヨンウク
- 美術賞 – チョ・ファソン、チョン・イジン
- 衣装賞 – チョ・サンギュン
- 撮影賞 – ゴ・ナクソン
- 編集賞 – キム・サンボム、キム・ジェボム
- 技術賞
- 企画賞[受賞]
あらすじ
スタッフ・キャスト
[製作] パク・ウンキョン、チェ・ キソプ
[監督] チャン・フン
[脚本] オム・ユナ
[音楽] チョ・ヨンウク
[キム・マンソプ] ソン・ガンホ
[ユルゲン・ヒンツペーター(ピーター)] トーマス・クレッチマン
[ファン・テスル] ユ・ヘジン
[ク・ジェシク] リュ・ジュンヨル
[チェ記者] パク・ヒョックォン
[デイビッド・ジョン] ダニエル・ジョーイ・オルブライト
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- ソン・ガンホという怪物俳優
- 普遍的な日常と残酷な現実の対比
- 後世に遺すべき歴史映画
底知れない韓国の至宝!ソン・ガンホ
どこを切り取ってもソン・ガンホの素晴らしい演技が光った。
今作品の前半は、娘と2人で暮らすあるタクシー運転手の日常をコメディタッチに描いてくる。貧乏だけど明るくて憎めない父親役・・・こんなもんソン・ガンホという怪物には朝飯前だ。もはや冒頭の下手な歌を口ずさみながら運転する姿の時点で「この映画はこけない」と確信を持てたほど。
1980年の韓国は民主化を求める学生を中心とした人達がデモを起こし、ソウルでもちらほら警察とぶつかっていた様子・・・そんなデモを呆れた目で見るキム・マンソプ。しがないタクシー運転手の彼にとっては民主化だのデモだの至極どうでもいい話で、それよりも娘との生活の方が大切なのだ。
「ったく、あいつらは何の為に大学に入ったんだ」
そう愚痴るマンソプを演じるソン・ガンホの姿はもはや演技とは思えない。一体どこの誰をモデルにして役作りしたんだろうか・・・あまりにもリアルで等身大すぎるその風貌と喋り方は、まさに韓国の一市民そのままだったよ。
大家の息子に殴られた娘を見て大家さんのところへ怒鳴り込んだのに、滞納している家賃の話をふられてシュンとなったり、その後の夕食の席で娘には「いつか大家の家を俺が買い取る」とイキってみたりw
とにかく今作品の前半はキャッチーな笑いとテンポで描いてくれて、実に観やすく楽しい時間を提供してくれる。正直、この頼りない父親マンソプの日常だけでも今作品は十分に名作になっていたんじゃないか?
その後にトーマス・クレッチマンが演じるユルゲン・ヒンツペーター(ピーター)を乗せて、いざメイン舞台となる光州へ向かう。
しかし道中もまだシリアスな空気は無く、軽めのロードムービーが展開される。光州に到着したらさすがに雰囲気変わると思いきや、まだまだゆるいw街並はディストピアのような荒廃した風景となっているのに、それでもまだコメディのノリでソン・ガンホはつき進むのだ。
しかし、あるシーンを皮切りにこの映画とソン・ガンホは一気にハンドルを切る。
なんて前振りだ・・・気付いた時には遅かったよ、完全にチャン・フン監督とソン・ガンホの罠にハマっちゃったw
普遍的な日常と、残酷な現実
今作品が描いているのは1980年に韓国で実際に起きた悲劇・・・光州事件。
民主化を求める国民を軍部がジェノサイドしたというあまりにも辛い韓国の史実で、作中でも無慈悲に撃ち殺される人達をしっかり描いている。しかし当時はテレビや新聞ではフェイクニュースが流れ、道も兵士達のバリケードによって光州に行く事ができない状況だった。
そんな凄惨たる真実を世界に公表する為に、主人公キム・マンソプとドイツ記者のユルゲン・ヒンツペーター(ピーター)が光州へ潜入するのを描いたのが今作品・・・ちなみにマンソプとピーターは実在した人物であり、恐ろしい事にこの2人がいなければ韓国という国は民主化できてなかったかもしれないのだ。
上述した通り、この映画の前半はかなりゆるくて観やすい作りになっている。それが後半になると全く別物とも言えるほどシリアスな展開になっていくのに、観ていて全く違和感がなかった事には驚いた。もちろんソン・ガンホを筆頭に俳優陣の自然なる演技も素晴らしいけど、チャン・フン監督の手腕もすごすぎる。
もっとやばいのは、前半のコメディと後半のシリアス・・・これが当時の韓国にそのまま当てはまり、しっかり対比になっているという点だ。フェイクニュースで事実を知らない光州以外の人間は、何事も無かったかのように普遍的な日常を過ごしているんだけど、光州の人間は毎日が死と隣り合わせの内戦状態・・・あまりにも残酷な現実を生きている。
娘と自身の事しか頭に無かったキム・マンソプが、この天国と地獄を行き来した事で国を想い行動するようになるんだけど、その姿と表情はあまりにもリアルで、こんな難しい役はソン・ガンホにしかできないと思わせるレベルだった。
ここまで秀逸な対比は滅多にお目にかかれないと思う・・・1本の映画として恐ろしい完成度だよ。
光州事件という忘れてはいけない史実
映画にはファンタジーからノンフィクションまで様々なジャンルがある。
加えて映画には何かしら得られるものがあって、特に喜怒哀楽という感情を刺激してくれたり、時には新しい考え方や知識まで教えてくれる。
「映画館の料金って高くない?」
こんな意見をたまに聞くけど、現行最高峰の音響と映像で、ここまで感受性を高めてくれるエンタメなんて他にあるかな?僕からしたら、たった2,000円でこんな上質な何かを提供してくれるとか感謝しかない。
少し話がそれたけど、今作品はこうした価値のあるモノがかなり詰まっていたよ。
もちろん完全なるノンフィクションではないけど、少なくとも光州事件を知る良いキッカケになってくれたのは間違いないし、それだけでも大きな価値のある映画じゃないだろうか。
ソン・ガンホだけじゃなく、ユ・ヘジンやリュ・ジュンヨルなど脇を固めた俳優陣も最高だったし、光州の街並みやタクシーを運転するソン・ガンホの表情を映した画角はどれもこれも素晴らしかった。
今作品は歴史映画として触れにくい史実を真正面から描いた重みがあり、それでいて非常に観やすいエンタメになっている。韓国が嫌いな人って多いかもしれないけど、そういう人ほど観て欲しいね。これを観たらどういう人が反日ムーブを扇動してるのかわかるかも?
それくらい韓国史の闇を正直に描いていたと思うし、同時に後世に遺すべき名作だと感じたよ。
評価・視聴方法
主人公のモデルはキム・サボク
今作品の主人公キム・マンソプのモデルとなったのはキム・サボクという方です。
映画では何も知らないマンソプが、10万ウォンを稼ぐ為にピーターを光州まで乗せていくというストーリーですが、実際のキム・サボクは光州の現実を知っていた上でピーターと行動を共にしていたそうです。というか、そうじゃなきゃ戒厳令の中で光州に潜入なんてできないですよねw
僕は歴史が大好きなんですが、韓国史はあまり詳しくなかったので勉強になりましたし、韓国を知る良いキッカケになりましたね。ちなみにソン・ガンホの演じたキム・マンソプというキャラクターを何も知らない設定にしたのは、当時本当に何も知らなかった等身大の韓国人として描きたかったんだと思います。
映画には風刺を盛り込んで社会に訴える作品がありますが、本来ならあまり見たくない現実をしっかり描いてくれる歴史映画もまた大切だと再認識した1本でした。
控え目に言ってかなりオススメです!
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