映画「犬鳴村」あらすじ、感想【清水崇 x 日本最恐の心霊スポット】

犬鳴村

今作品は呪怨清水崇監督による心霊スポットをベースにしたホラー映画です。

モデルは福岡県の旧犬鳴トンネルで、様々な噂が飛び交う日本最凶の心霊スポットと言われています。僕は行った事ありませんが、ここは実際に犬鳴ダムの建設により水没した過去があり、トンネルの入り口も本当にコンクリートのブロックで覆われているそうです!こうした都市伝説を映画化するというアイデアは素晴らしいと思うんですが、1本の作品としてはつっこみたい点がいくつかありましたねw本記事では忖度なく書いていこうと思います。

[ジャンル]ホラー
[作品時間]108分
[公開日]2020年2月7日

本記事の内容
  1. 予告動画やキャスト情報
  2. ネタバレありの感想
  3. 評価とサントラ紹介

作品情報

犬鳴村1

韓国のパラサイト 半地下の家族がアカデミー作品賞でオスカーを受賞した事で「それに比べて日本映画は・・・」と落胆した人も多いようですが、今作品の清水監督だって日本人初のハリウッドデビューをした監督ですし、加えて全米興行成績No.1を獲得した初の実写映画はTHE JUON/呪怨ですから!

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あらすじ

深夜2時・・・森田悠真と恋人の西田明菜は、有名な心霊スポット・犬鳴トンネルで肝試しを楽しんでいたところ、何者かに襲われてしまう。何とか逃げ延びた2人だが、明菜だけは奇妙な民謡を口ずさむようになり悲惨な死を遂げてしまう。やりきれない悠馬は再度トンネルに向かうも失踪・・・霊感のある妹・森田奏は、真相を確かめるべく犬鳴村へ向かうが、果たして・・・

スタッフ・キャスト

原案・監督 – 清水崇
脚本 – 保坂大輔、清水崇
音楽 – 海田庄吾、滝澤俊輔

森田奏 – 三吉彩花
森田悠真 – 坂東龍汰
森田康太 – 海津陽

西田明菜 – 大谷凜香

成宮健司 – 古川毅
籠井摩耶 – 宮野陽名

優子 – 奥菜恵
圭祐 – 須賀貴匡
遼太郎 – 笹本旭

山野辺 – 寺田農
中村隼人 – 石橋蓮司
森田晃 – 高嶋政伸
森田綾乃 – 高島礼子


呪怨で主人公だった奥菜恵ですが今回は脇に回りました。他にも田中健が出演してるらしいんですが、僕は気づきませんでしたw

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

感想

犬鳴村2

  • Jホラーらしい雰囲気作りは◎
  • どうしても温度差があった後半
  • これからが楽しみに感じた1本

まさにJホラー!たたみかけてくる前半

日本のホラー映画は音と映像で徹底的にトラウマを植え付けてくる。

ジェイソンフレディなど外国のホラーだって面白いし怖いんだけど、Jホラーというジャンルはここに現実でもあり得そうなリアリティを乗せてくるのだ。中でもリング呪怨という2大レジェンド・・・正直なところ僕は大の苦手で呪怨なんて映画館で観た時に、心から後悔した。怖かったどころじゃない、怖すぎて本当に腹がたったよw今作品はその呪怨を作った清水崇監督がメガホンをとっているというんだから、そりゃ期待したよ。

というわけでリベンジの気持ちを胸に構えて映画館へ行ってみたら、冒頭から早速背筋を凍らせてきた。POV手法だ・・・。このPOVとは、手持ちカメラで撮影されたような主観映像ね。これがホラーとは本当に相性がよく、ざっくり言えばリアルな素人感が出るのだ。有名どころだとブレア・ウィッチ・プロジェクトクローバーフィールドなど。

「はーい!今回は犬鳴村にやってきました!」

主人公の兄・悠真と恋人の明菜は、有名な心霊スポットである犬鳴トンネルでyoutubeの撮影をしている。都市伝説では、このトンネルの先に犬鳴村があると言われているらしい。しかし村に行く為にはトンネル近くにある公衆電話、ここで深夜2時になるとかかってくる電話に出る必要があるというのだ。

もちろん電話はかかってくるし、もちろん2人は出るw

というわけで、もうメインの犬鳴村が登場する。村に入った2人は肝試しデートをワーキャー楽しんでいるんだけど明らかに雰囲気はやばい。気が付けばPOV手法ではなくなっている事に気付き、少し感心しつつも見入っていると・・・2人はやっぱり人あらず者に遭遇!恐怖に怯えながらも何とか逃げ帰る悠真と明菜!

逃げ帰れるんかい!

内心つっこみを入れるも束の間、奇妙な民謡を口ずさみながら不気味な絵を描くようになってしまった明菜は、精神が崩壊したのか呪われてしまったのか・・・とうとう自殺してしまうのだ。生きた心地がしないくらい怖い・・・清水監督は引き出しを全部開ける気なのか?こんなノリが最後まで続くのか?今作品は出し惜しみなく初っ端から全力で怖がらせてくるのだ。

このトーンでエンディングまでやられたら、僕はチビりながら歩いて帰るところだったよ。

観たいのは、こういうのじゃないんだよ・・・

冒頭からJホラー全開の前半は本当に怖かった。

それは間違いない。ふんだんに仕込まれた怖がらせる演出の数々は既視感はあれど十分に楽しめた。でも今作品は後半から雰囲気がガラっと変わってしまう・・・はっきり言ってどんどん怖くなくなるし、真相が見えてくればくるほど失速してしまった。

その最たる原因は脚本だったと僕は思う。今作品は犬鳴村が地図から消えてしまった理由や、主人公の霊感の強い理由など、実に丁寧にバックグラウンドを描いている。にもかかわらずディティールに甘いところがあり、結果いくつかツッコミポイントが出来てしまっているのだ。

本来、ホラーというジャンルは「細かい事言いっこ無し」なんだから、怖さに特化してくれればもっと観やすかったと思う。極端な事を言えば丁寧に描くべきじゃなかった。どうして犬鳴村に呪いがあるのか?という話が後半の本筋となってくるんだけど、これは別にいいのよ。

問題はその理由に見合った理不尽な悪意が犬鳴村にない事・・・引き合いに出すと同監督の呪怨がわかりやすいと思うんだけど、そもそも呪怨が怖い理由とは、呪われた家に入った時点で誰でも呪い殺されるというルール・・・これこそが理不尽な悪意だよね。

でも、この映画は冒頭で1人逃げ帰ってきてるのよ。

悠真が呪い殺されなかった理由は主人公・奏が霊感を持っている理由にも通ずる部分だし、一応理解はできる。けどそれが逆に興ざめしてしまった。だってつまりは奏も呪い殺される事はないとわかってしまうじゃないか。今作品の後半はホラーではなくヒューマンドラマの側面が強くなっていくんだけど、ディティールの詰めが甘いせいで、そのドラマにもいまいちピンとこない。

こういうのじゃないんだよ、観たかったのは!

清水崇監督はJホラーの希望だ

今作品はすごく惜しいと思う。

他にもラストシーンへの布石が雑だったり、過剰な演出やセリフで説明しすぎ問題といったように、正直言いたい事は他にもある。でもアイデアは悪くなかったと思うんだ。

邦画は人気漫画アニメを原作とした作品がよく作られるよね。というかメインコンテンツになっている。原作ファンがたくさんいるから、興行収入も跳ね上がって映画界を盛り上げてくれるのは本当にありがたい。ただ作り手側が彼らからの駄作認定を恐れて、原作を忠実にトレースするだけの映画がそこら中に溢れてしまった。

僕はこの流れが大嫌いだ。

映画化するなら何があっても映画サイズにカスタマイズすべきだし、もっと言えばプロットだけ引っ張ってきて別物作るくらいの気概が必要だと思う。今作品は確かにダメ出しする点がたくさんあったかもしれないけど、実際に存在する心霊スポット・犬鳴村というプロットに対して、清水崇監督や制作陣がちゃんと考えて肉付けしたのは間違いないんだ。言ってしまえば僕の好みに合わなかっただけ。

本記事では忖度せずにつっこんでるけど、僕は今作品のような心霊スポットの映画化は今後も続けるべきだとも思ったよ。清水監督は間違いなく怖い映像を撮れる人だし、秀逸な脚本さえできればヒューマンドラマに仕上げても面白いホラー映画を量産できるはずなんだ。

ある地方に伝わるちょっと怖い話・・・

ITミストスティーブン・キングは、こうしたプロットで何十年も人気作家の地位に君臨しているよね?でも冷静に考えて欲しいのよ。こうした地方に伝わる怖い話を、この日本という国はいくつ持ってると思ってるんだ。

今作品で清水崇監督がやった事は間違ってない。次作楽しみにしてるよ!

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評価・サントラ紹介

犬鳴村3

ホラー映画をもっと観るべき理由

今作品の評価
物語・テーマ
(2.0)
配役・演技
(3.0)
演出(音楽/映像/etc)
(2.0)
観やすさ
(2.5)
余韻
(2.0)
総合評価
(2.5)

ホラー映画ってどうしても低予算B級作品ってイメージが強いかもしれませんけど、だからこそ大作ではできない様々な手法や演出を生み出してきたジャンルなんです。今作品でも冒頭に使われているPOVなんかまさにですが、他にもスプラッター描写など、とにかく人を怖がらせる努力をし続けてきたのがホラーというジャンルなんですよねw今ではこうしたホラー的手法や演出は、他ジャンルにも飛び火して大作でも当たり前のように見かけるようになりました。

今作品は個人的に残念な内容でしたが、前述したように邦画の未来を感じさせてくれましたし、Jホラーという世界に自慢できるジャンルの点取り屋は間違いなく清水崇監督だと思っています!

感想を忖度せずに書いてごめんなさい^q^

「犬鳴村」の音楽を聴いてみる


ホラーならではの不協和音満載なので音楽のサンプリングとかにいいかもしれませんね!ちなみに作中に出てくる民謡「ふたしちゃろ~」も収録されていますよw

では、良き映画の時間をお過ごしください。

(C)2020『犬鳴村』製作委員会