滝田洋二郎監督による感涙必至の時代劇。
ドラマや舞台、漫画にもなっている今作品ですが、原作は浅田次郎の小説です。歴史にあまり興味がない人が観ても感動できる素晴らしいヒューマンドラマとなっているのでオススメの一作ですね。名シーンが連発する至極の邦画なので観て損はありません!
本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想、視聴方法を記載しています。
もくじ
作品情報
2003年公開。優秀新人賞を上戸彩や長澤まさみ、オダギリジョーが受賞した時代。監督・滝田洋二郎は2008年におくりびとでまたも最優秀作品賞を受賞しました。
- 最優秀作品賞
- 最優秀主演男優賞 – 中井貴一
- 最優秀助演男優賞 – 佐藤浩市
- 優秀監督賞 – 滝田洋二郎
- 優秀助演男優賞 – 三宅裕司
- 優秀助演女優賞 – 中谷美紀
あらすじ
盛岡藩、南部地方の脱藩浪士・吉村貫一郎・・・彼は守銭奴と呼ばれながらも盛岡に残してきた妻子の為に、新選組の隊士の1人として人を斬っていた。しかし時代の流れには逆らえず、新選組は鳥羽伏見の戦いで敗走。隊士達が散り散りとなる中、深手を負った貫一郎は故郷への帰藩を請うべく大坂の南部藩蔵屋敷へと向かい、旧友であった大野次郎右衛門と再会するが・・・。
スタッフ・キャスト
原作 – 浅田次郎
監督 – 滝田洋二郎
音楽 – 久石譲
吉村貫一郎 – 中井貴一
斎藤一 – 佐藤浩市
しづ・大野みつ – 夏川結衣
ぬい – 中谷美紀
佐助 – 山田辰夫
大野次郎右衛門 – 三宅裕司
近藤勇 – 塩見三省
土方歳三 – 野村祐人
沖田総司 – 堺雅人
伊東甲子太郎 – 斎藤歩
永倉新八 – 比留間由哲
谷三十郎 – 神田山陽
他にも伊藤英明や加瀬亮、堀部圭亮などがちょこっと出ています。大河ドラマの新選組なみに豪華ですねw
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想・評価
- 吉村貫一郎が本当に守りたかったもの
- 2時間過ぎた先にある本当の山場
- 佐藤浩市の演技には感涙必至!
守銭奴・吉村貫一郎、史実ではどうなのか?
まずは主人公の吉村貫一郎について
新選組というと近藤勇、土方歳三、沖田総司など、主要メンバーの印象が強いので他の隊士にはあまりフォーカスがあたらないが、実は面白い人が沢山いるのだ。その中でも吉村貫一郎はかなり不思議な存在である。まず本物の吉村は奥州出身という事以外、あまり情報が残っていない。これは新選組内部を見張る監察方という役職だったのも影響しているかもしれない。
ちなみに次男だったので生涯結婚はしてないんじゃないかと思われる。それでも不思議な存在と言えるのは、バックボーンが何もないのに新選組において沖田総司や斎藤一、永倉新八と肩を並べる撃剣師範という役職も兼任していた事や、重要な席にも顔を連ねていた事。この事から相当な剣術の腕前はもちろん、頭もきれる人だったんじゃないかと思われる。
というわけで、映画とは少し違う人物だったと言えるだろう。
斎藤一は吉村をどう見ていたのか?
さて、本題である映画の吉村貫一郎はどんな人物かというと、いつもヘラヘラした田舎侍で、お金の為ならいくらでも頭を下げる・・・侍とは思えないその姿から守銭奴と呼ばれた男である。ただ、これ程までお金を欲していた理由は、田舎に残してきた家族に送金する為・・・要は出稼ぎお父さんなのよね。
こうして書くと主人公にする程の人物だったのか?という疑問を持つ人もいるかもしれないけど、当時は激動の幕末・・・新選組だけじゃなく坂本龍馬を筆頭に薩摩、長州など沢山の武士が国の存亡を考え右往左往していた時代・・・。どこにいったって「この国の未来は俺たちにかかっているのだ!」と声があがるような意識の高い土壌があり、その中で田舎の家族の為に金を稼ぐという本音を隠さずに生きた侍というのは、かなり珍しかったと言えるだろう。
ただ、この映画は「家族の為に頑張っているお父さんどうっすか?」という安直な感動の安売りではなく、「本当の侍とは何か?」というテーマを描いた名作だと僕は思う。確かに吉村が本当に守りたかったのは、国よりも家族だったのは間違いないが、命を賭して国と侍の矜持を守ったのも間違いないのだ。
斎藤一から見た吉村貫一郎という男は、恥も知らない守銭奴の田舎侍であり、それが家族の為だと知っていても下品でダサいやつだった。しかし、錦の御旗を掲げる官軍に「天皇様に弓引くつもりはあらねども、拙者の義の為に戦はせねばなりもうさぬ」と叫び特攻するという、めちゃくちゃカッコイイ侍としての姿も見ているのだ。
斎藤一にとっては、かけがえのない戦友であると同時に、もっとも嫉妬し憧れた存在だったのだろう。
名作の王道をいく構成に+αされた本当の山場
名作には方程式がある。
僕は当ブログでもよく書くけど、映画とは大体2時間という限られた枠で展開されるエンターテイメントであり、名作と言われる作品には共通点が多い。まず開始10分程度でフックと呼ばれるつかみがあり、40分前後で話の転機、ラスト30分~40分でクライマックスという山場を作る。今作品もまさにこの方程式にそって話が進み、2時間手前あたりで中井貴一による圧巻の一人語りシーンがある。ただ、僕が驚いたのはその後だった。
ラスト15分・・・ある1人の人間にフォーカスがあたる。それは吉村の娘・みつだ。彼女は小さい頃から父や兄との別れを経験し辛い思いをしてきたが、何とか吉村の仕送りで生きてきた。そんな吉村の残した娘・みつに佐藤浩市演じる斎藤一が初めて会った時の心情にこそ今作品の神髄があると言いたい。
新選組・・・彼らはお国の為に死力を尽くしてきたけど、時代の流れに巻き込まれて最後は国賊として敗走したよね。斎藤一という人間はそこまで愛国の思想があるわけではないし、ざっくり言えば命を惜しまない生き方に憧れていた人だ。その憧れの生き方を通した吉村は斎藤にとってかなり特別な存在だった。その吉村が守銭奴とバカにされても守り抜いた愛娘・みつと会った時の斎藤はどれほど嬉しかっただろうか。どれほど悔しかっただろうか。そして、どれほど救われただろうか。
「おもさげなござんした、吉村先生。」
たった一言のセリフ・・・このラストの佐藤浩市の演技だけで超名作と言っていい。僕が1番好きなシーン・・・何回観ても泣けてしまうよ。
まとめ・視聴方法
素晴らしい演技と素晴らしい音楽
中井貴一と佐藤浩市がメインですが、他の役者陣も素晴らしかったです。
堺雅人や中谷美紀、特に三宅裕司は本当に見応えのある名演技だったと思います。佐藤浩市はたまに「父親である三國連太郎を超えられない」と言われてますが、そんな事は断じてありません!そんな事を言う人にこそ、是非みつとのラストシーンを観てほしいですね。間違いなく日本が誇る役者の1人であると断言します。
それと今作品は久石譲の音楽もまた良かったですね!海街diaryの菅野よう子もそうなんですけど、作品の雰囲気にあった目立たない音楽って映画では大切だと思います。北野武映画やジブリなど、心にジーンとくる久石譲の音は個人的に超大好きです。
歴史も好きな僕としては、もっと沢山こういう骨太時代劇を作ってほしいですね。邦画界の皆様に期待しております!
というわけで、最後まで読んでくださっておもさげながんす
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ちなみに佐藤浩市のお父さんである三國連太郎が怪演しているも復讐するは我にありもオススメですよ!
では、良き映画の時間をお過ごしください。