手塚悟監督の長編1作目となる恋愛映画です。
公開当時はまさにミニシアター系で新宿のK’s cinemaと大阪の第七藝術劇場でのみの限定公開でしたが、口コミやリピーターによって少しずつ広まり、全国のミニシアターで実に1年半というロングラン上映となりました!すごすぎますねw
肝心の内容ですが・・・素敵な余韻があり、めっちゃくちゃ泣けますよ!
[ジャンル]ラブストーリー、ファンタジー[作品時間]95分
[公開日]2016/7/23
- 予告動画やキャスト情報
- ネタバレありの感想
- 評価と鑑賞方法
もくじ
作品情報
元々は音楽を手掛けているharuka nakamuraの「every day」という曲からインスパイアを受けた冨士原直也がmixiで短編シナリオを発表、それを映画化となりました。ちなみに手塚悟監督は撮影後に脳梗塞になり、後遺症で同名半盲も発症・・・それらを乗り越えた上で今作品を完成させたそうです!
あらすじ
ある月曜の朝・・・晴之が目を覚ますと交通事故で昏睡状態にあるはずの恋人・咲がそこにいた。「時間をもらったのね、1週間。」咲はそう言い、いつものように弁当を差し出した。夢か現実か・・・晴之はまだ状況を飲み込めないが、仕事に行き、いつもと変わらぬ日常を過ごす。しかし1週間という期限を迎えた時、咲はどうなってしまうのか?当たり前だった2人の生活は終わってしまうのか?時間は刻々と進み、とうとう7日目となる日曜日を迎えるが果たして・・・
スタッフ・キャスト
原作 – 冨士原直也
監督・脚本・編集 – 手塚悟
音楽 – haruka nakamura
三井晴之 – 永野宗典
辻村咲 – 山本真由美
菊池 – 倉田大輔
きなこ – こいけけいこ
津嶋 – 牛水里美
遠藤 – 土屋壮
佐藤主任 – 朝真裕稀(零式)
鈴木マネージャー – 藤谷みき
吉田 – 谷川昭一朗
辻村芳雄 – 山内健司
有名どころは1人も出てないかもしれませんが、だからこそリアリティがありましたし、演技も素晴らしかったと思います。ちなみに永野宗典は闇金ウシジマくんでスロット打ってたあの人ですw
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 邦画はこれでいい!
- わかっているのに泣けてしまう
- 最高の演出と演技で〆るラスト
冒頭でネタバレ?最高の始まり方
これは素晴らしい映画だった。
ありふれた日常風景と、心が洗われるようなピアノの旋律・・・主人公の晴之は恋人の咲の明るい声で起こされる。寝ぼけてる晴之は「なんでここにいるの!?」みたいな表情で咲を見る。そんな晴之にお弁当を手渡し、2人は食卓に着く。
朝ごはんを食べながら話す他愛もない2人の会話は、なんていうか良い意味で全く映画的じゃない。冒頭のフックだというのに奇をてらった事をするわけでもなく、インパクトのある映像も無し・・・にも関わらず「あ、これ名作かも」と思わせる素晴らしいシーンだった。というのも、その他愛もない会話の中で晴之は昨晩どうやらすごい怖い夢を見たという。
晴之「咲ちゃんが交通事故に遭っちゃうんだよ!」
咲「わたしが?w」
晴之はそのまま救急車に同乗し、病院で芳雄さん(咲のお父さん)と2人きりになって気まずくなったといった話をする。ちなみに演じてるのは永野宗典と山本真由美・・・どちらも有名な役者とは言えないけど、それがまた余計リアルで良かった。
晴之「これも夢だといいんだけど」
目覚ましのなった携帯を見た晴之は、芳雄さんから何度もかかってきてる着信履歴と留守番電話に気付いてつぶやく。留守番電話を聞いてみると芳雄さんからで「昨日は遅くまでありがとう・・・明日は先生から話がある・・・休める時はしっかり休みなさい・・・」
咲「時間を貰ったのね、1週間」
ありふれた日常の中でほんの少しだけずれた反応、表情、会話・・・ああああ!!薄々わかってはいたんだけど、ここで一気に惹き込まれてしまった。つまり今作品は冒頭の数分で結末を教えてくるのだ。
結末がわかってる映画ってどうなんだ?
もちろん作品によるだろうけど、この映画はめっちゃくちゃ泣いたよ。極上の名作だったよ。
ありふれた日常の幸せを描いた名作
今作品は最初から最後まで、まさにありふれた日常を描いている。
朝起きて仕事して、たまにさぼって、友達と飲みいって・・・別に壮大な夢を持っているわけでも毎日が特段楽しいってわけでもない。こうした普遍的な生活だとしても、愛する人が横にいたら話は変わってくるよね。他愛もない日々が格別で貴重な時間になる。でも晴之と咲に残された時間はあと1週間なのだ。
言ってしまえば余命宣告された人と、その時間を描くストーリーというわけで、つまり今作品はそれこそありふれたプロットなのだ。でも有名俳優勢ぞろい!大手資本!そんな大作映画では、まず見る事ができないものがあった。例えば晴之と咲はそのまま付き合っていても、いつか別れるかもしれないと思わせる脆さを持っていたり、主役の2人以外の登場人物にも「こういう人いるいる」と感じられる点など・・・圧倒的なリアリティが表現されていて、それが心地よいエモさに繋がっていた。
映画で描かれるラブストーリーって、どこまで言ってもファンタジーの域に達しちゃうというか、やっぱりドラマチックなストーリー求めちゃうよね・・・だって映画なんだもの。でも今作品はその真逆をいっているわけで、どのシーンを切り取ってもありふれすぎている現実なのよ。
そこに幽霊なのか、晴之の妄想なのかわからないけど、病院で危篤状態にあるはずの咲がいるという唯一の非現実・・・明らかにファンタジーなはずなのに、観てるこっちはそれさえもリアルに感じてしまう。むしろリアルに感じたいとまで思わせてくる。
頼むから咲が現実であってくれと・・・。
今作品はありふれた日常の尊さ、小さくとも当たり前に存在する幸せ・・・それらを居るはずのない咲というたった一点の非現実だけで対比して狂おしいほど浮き上がらせてくる。
こんな儚い2人を見せ続けられた上で、あのラストは・・・かなり心に突き刺さっちゃったよw
結末がわかっていても号泣するラスト
僕は言いたいよ。今作品を観て泣くのを我慢できる奴がいるのか?と。
咲のお父さんである芳雄さんと晴之が病院で語り合うシーン・・・途中から咲に話しかけるように晴之がタメ語になっていくという演出はすごく素敵だった。何となく芳雄さんもわかっているのだろうと感じさせる余白もまた素晴らしい。ただこんな極上のシーンをさらに超えてきたクライマックス・・・もうだめだった。電話が鳴ってからずっと涙が止まらなかったね。全ての結末がわかっているというのに見続けなければいけない辛さ・・・なんだったらエンドロールまで見えていたレベルだ。
「ただいま」
「おかえり」
最後まで、いつものように明るく気丈に振る舞う咲の姿はあまりにもきつい。晴之も頑張ってるけど、所詮こうした土壇場じゃ男は女に勝てないというのも悲しいかな、現実だよねw晴之に対して「耐えろ!頑張れ!」と応援したくとも、彼が崩れ落ちてしまうのがわかってしまう。
今までダラダラと咲に甘えて生きてきた甲斐性なしの晴之には「おかえり」が言えない。もう二度と言えない事を理解している彼にとって、どれ程重く辛い言葉か・・・。その気持ちが観てるこっちに嫌になるほど伝わってきてしまう。
「ちゃんと言ってね!私も言ったんだから」
誰もがわかってしまうラストは、その予想通りとなってしまう。あまりにも悲しく寂しさが滲む最後だけど、その現実を受け止めた上で強く生きていかなきゃいけない晴之・・・そして彼がその事を一番理解しているとしっかり伝わってくる素晴らしい終幕と余韻だった。多分晴之はこれからの人生で、たまに咲を思い出しては酒を飲みすぎてリビングで寝ちゃったりするんだろうねwで、またしょっぱくて下手くそな卵焼きを作って会社に行くんだろう。
大手の映画制作会社さんは今作品を絶対観るべき。
邦画はこういうのでいいんだよ。むしろこれがいいのよ。いや、これこそが名作だよ。
評価・鑑賞方法
ミニシアター系をなめるな!最上級の名作
本当に素晴らしい映画でした。他にも定年になったおじさんが言うセリフの全てが神様の視点だったり、晴之モテすぎ問題、あと綺麗なピアノが奏でる珠玉の名曲たちなど・・・色々と話したくなる要素はあるんですけど、兎にも角にも本筋のストーリーとラストシーンの演出が秀逸だったと思います。キャストは有名な人がいなくて正解でしたし、全員演技も素晴らしかったです!
永野宗典の不器用そうな雰囲気は相変わらず面白いし、山本真由美の品格とキュートの絶妙なバランスも超良いですよ!
ミニシアター系というと、どうしてもフォーカスがあたりにくいですが、誇張抜きで邦画屈指のラブストーリーだと思いました。カメラを止めるな!もそうですけど、映画は低予算でも名作が普通に出てくるから面白いですよねw
「Every Day」の鑑賞方法
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もしかしたら新宿と大阪で2週間しか観る事ができなかったかもしれない今作品ですが、こうしてネットで観る事ができるというのは本当に嬉しい限りですね!
では、良き映画の時間をお過ごしください。
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