ヘレディタリー/継承のアリ・アスター監督によるスウェーデンとアメリカの合作映画です。
天才と謳われるアリ・アスター監督の2作目は「美しいのに恐ろしい」という、またも奇抜なホラー映画となりました。予告動画を見てみると白が基調となった明るい映像なのに、どこか不安な気持ちにさせてきますよねw確かにこれは世界的に話題性が高いのも頷けます。
ただ・・・残念ながら僕の好みではありませんでした!というわけで忖度なく書きますので、作品が好きな方は気分を害するかもしれませんが・・・ご了承ください。
[ジャンル]ホラー、ミステリー[作品時間]148分
[公開日]アメリカ:2019/7/3|日本:2020/1/17
- 予告動画やキャスト情報
- ネタバレありの感想
- 評価と他オススメ作品
もくじ
作品情報
批評家からは熱狂的な支持がされているようです。まとめると「野心的で見事に作り込まれており、観客の心を大いに揺さぶってくる。」といった見解がなされているとか。確かに明るいホラーという今までにない試みをしている点はアイデアとして面白いと思いますが・・・見事に作りこまれてるとは到底言い難いと思いますw
あらすじ
精神疾患を抱えていた大学生のダニーは、妹が両親を巻き添えに無理心中をしてしまった事で、さらに闇を抱えてしまう。そんなある日・・・彼女は恋人や大学の友人らと一緒に、スウェーデンの奥地で開かれる「90年に一度開かれる9日間の祝祭」を訪れる事にする。到着すると、そこは美しい景色と優しい人達に囲まれた楽園のような場所だった。しかし、少しずつ異様な雰囲気が漂い始め、とうとうダニー達は想像を絶する悪夢を体験する事になるのだが果たして・・・?
スタッフ・キャスト
監督・脚本 – アリ・アスター
製作 – ラース・クヌーセン、パトリック・アンデション
ダニー・アルドール – フローレンス・ピュー
クリスチャン・ヒューズ – ジャック・レイナー
ジョシュ – ウィリアム・ジャクソン・ハーパー
マーク – ウィル・ポールター
ペレ – ヴィルヘルム・ブロングレン
マジャ – イザベル・グリル
サイモン – アーチー・マデクウィ
コニー – エローラ・トルキア
インガ – ジュリア・ラグナルソン
ダン – ビョルン・アンドレセン
フローレンス・ピューはストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語でアカデミー助演女優賞にノミネートされた女優さんです。MCUのブラック・ウィドウにも出演しているので要注目ですね!
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 自己満足の伏線は意味がない
- ミスリードしすぎた代償
- 結局スプラッター頼り・・・
伏線の意味は?ルーン文字、ヴァイキング文化・・・
果たしてあなたはアリ・アスター監督の仕掛けた伏線に気付けただろうか?
今作品はたくさんの伏線が散りばめられている。確かにストーリーは真相がわからない状態で進むミステリー要素の強いものとなっているから、色々な人が考察レビューをしているようだ。
まずはルーン文字・・・これはブルートゥースのロゴにも使われてる記号みたいなやつだね。その昔ゲルマン民族がゲルマン諸語の表記に用いた古代文字・・・簡単に言えば昔のヨーロッパの言葉なわけだけど、そんなルーン文字が作中でそこかしこに登場しストーリーの展開や謎を示唆していた。
次に登場人物達の様々な死に方・・・これはまあまあのグロ描写で観客を驚かせてきて確かにエグかったね。なんと、この死に方というのがルーン文字を使っていたヴァイキング(海賊)達の実際の拷問・処刑方法だったそうだ!
そうだったのか!!!
ってなるわけないだろwまずわからないんだよ、ルーン文字の意味が。映画を観ていて「なるほど、ここでその文字を出してくるか・・・!」となる人が世界中で何人いるというんだ。ヴァイキングの処刑方法も同じで「この殺し方をしたという事は・・・つまり!!」とはならないんだよ。もっと言えば、観終わった後に調べて知ったとしても「そうだったのか!!」ってなった?それで何かしらストーリーの根幹部分に納得のいく事があった?
結局のところ、これらはあくまでも世界観の演出でしかなく伏線といえるレベルの高尚な役割など一切果たしていない。アリ・アスター監督もそれは重々承知でやってると思うけど、僕にはこれがあまりにも安直に感じてしまったよ。
ただ今作品最大のマイナスポイントはこの伏線云々ではなく、ストーリー自体が破綻している事だ。
やりすぎたミスリードと破綻してる物語
冒頭、主人公ダニーの家族が謎の死を遂げて物語は始まる。
夜の寝静まった街を映し、突然なる電話の音・・・とてつもなくオーソドックスなホラー的演出とはいえ、効果的に驚かせてきた良いスタートだった。妹による無理心中という事だが、何故無理心中したのかまでは不明・・・愛する家族の突然の死でさらに心の闇を広げたダニーが、恋人や友達らと一緒に謎の夏至祭へ行く事になる・・・。
なるほど!家族の死の真相を解く物語ってわけだな?
アリ・アスター監督?どうしてそういうストーリーにしなかった?家族の死は絶望に追いやられ孤独になった主人公を演出する為だけだったというの?そんな主人公ダニーに同情と共感をしろってか??確かに突然家族が死んでしまった事はダニーにとって辛すぎる現実だろうよ。でもスウェーデンまで旅行に行くって事は金銭的に問題ない生活ができてるわけで、一緒に旅する友達も恋人もいるわけで・・・。映画のフックとしてあまりにも杜撰だ。甘いどころじゃない。観客をなめてるのか知らないけど、はっきり言って雑過ぎて腹が立つ。
百歩譲って見逃そう。この家族の死によって孤独になった主人公が夏至祭を通して孤独じゃなくなるわけだから、ストーリーに関係ないとは言えないし。
問題はそのストーリーなのよ。この夏至祭ってさ、近親相姦による障害児が生まれる事を危惧して外の世界から集落外の人間を連れてくるのが目的なのよね。だからペレはSEXを餌にクリスチャンやジョシュ、マークを連れていく計画だったんだよね。
元々ダニーは行く予定じゃなかったよね???
メイクイーン(女王)!!じゃねーですよ。超偶然の産物じゃないか。この雑な脚本がより物語から家族の死の描写を遠ざける・・・。中盤までずっと僕は信じてたんだよ。(これは偶然じゃない・・・ペレが巧妙に仕組んだ罠で、もっと言えば家族の死もペレが・・・うわああ!!)って1人でワクワクしてたんだよ。
返してくれよ、あの不毛な時間を。
90年に一度開かれるのは嘘・・・?
今作品の舞台、90年に一度開かれるという夏至祭・・・
スウェーデンの奥地でひっそりと続く集落の伝統で、そこには独特な文化風習がある。特に衝撃なのは集落の老人2人が、皆の見守る中で崖から身投げして死ぬというイベントだ。ただこれは悲しい事ではなく、生命というのはサイクルするものだから、年老いた体で辛い老後を過ごすのではなく生まれ変わる為だから嬉しい事なんだとさ。
一方、作中ではペレが「自身の両親は焼死した」と言う。これはクライマックスから考えれば、ペレの父親も誰かに連れてこられ集落の女とSEXをして最期は燃やされたと考えていいよね?というか、そうじゃないと何の為に言わせたセリフなんだとなるし。加えて集落の人間が着ている白い服・・・これは「夏至と冬至の時だけ着る」というセリフまで出てくる。つまり90年に一度開かれているんじゃなく、年に二度開かれてるんでしょ?アリ・アスター監督よ・・・この本丸の謎を示唆する為に、皆の寝床で毎晩赤ちゃんの夜泣き演出をしたんだよね?
なら・・・毎年夏と冬に老人が身投げしてるのか?
それとも本当に90年に一度と言い張るなら、老人の身投げイベントは定期的にやってるだけで、今回たまたま夏至祭とタイミングが合ったの?あと年齢の設定は忘れたけど、人生は季節なんだよね?若い頃は春で働き盛りは夏、中年は秋で老後が冬だっけ?人生の素晴らしさを理解した人間達の集落って事だよね。
お前ら、春ど真ん中の若者をヴァイキングの処刑方法で殺してたけど、あれどういう意味?
ふたを開けたら陳腐で稚拙なカルトだったという事かい?どっちにしてもストーリーが破綻してんだよ!で、ホラー映画としての怖さはどうだというと・・・確かにグロいしインパクトはあるんだけど、結局スプラッター描写ばっかりで、もはやホラー映画では見飽きたレベル。
主人公ダニーの家族の死が夏至祭に関係があり、ダニーがそれに気づき何とか脱出か解決に向けて奮闘し、その上でハッピーエンドorバットエンドだとか、実は毎年やっていて次の生贄を探しにペレが不敵な笑みを浮かべながらエンドロールだとか・・・このアイデアはもっといくらでもやれたでしょ。てかやれよ!
ルーン文字の伏線だとか、奇をてらった明るいホラーだとか・・・安直にそんな事を考えてる暇があるなら、もう少しまともな脚本を書いてほしい。この程度でホラーという映画でも屈指の激ムズジャンルに足を踏み込んできた事自体がむかついたよ。
アリ・アスター監督、予告に負ける本編なんか二度と作らないでくれ。
評価・まとめ
オズの魔法使いをオマージュしてる?
言いたい放題でしたので気を悪くした方がいたらすみませんでした。でも本当に映画とも言えない程のクソなら僕は記事を書きません。アリ・アスター監督の撮る映像センスや世界観、アイデアは確かに素晴らしいと思うのです。だからこそ次作への期待を胸に書きなぐってやりましたw
ちなみに主人公ダニー達が夏至祭に会場入りする前の序盤など、オズの魔法使いのかかしの写真やぬいぐるみが出てくるそうです。僕は気が付かなかったですが、もし気付いたとしてもどうでしょうねw正直な気持ち、そんなオマージュよりも、ちゃんとした脚本を望んでしまいます。
アリ・アスター監督には、是非1度ホラー以外の作品を出してみて欲しいと思いましたね。
ミッドサマーが好きな人にオススメするなら?
ホラー映画という事で金字塔作品とその続編を紹介します。
今作品と同じく謎に包まれたミステリー的ストーリーな上に、尋常じゃなく怖いシャイニングと、40年の時を経て作られた続編ドクター・スリープ・・・どちらもめちゃくちゃ面白いホラー映画ですよ!この2作品は是非続けて観てもらいたいものです^q^
では、良き映画の時間をお過ごしください。
(C)2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.