コメディアンのジョーダン・ピール監督によるホラー映画です。
製作費450万ドルで、興行収入は2億5000万ドル超えの大ヒット!しかもアカデミー賞では脚本賞を受賞!何よりも驚くのは・・・なんとジョーダン・ピールにとって、これが初監督作品という・・・すごすぎます!ちなみにホラーと言ってますが、コメディやミステリーの要素も入っていて非常に観やすいキャッチーな映画だと思います。かなりオススメですよ!
[ジャンル]ホラー、ミステリー[作品時間]103分
[公開日]アメリカ:2017/2/24|日本:2017/10/27
- 予告動画やキャスト情報
- ネタバレありの感想
- 評価と鑑賞方法
もくじ
作品情報
- 脚本賞 – ジョーダン・ピール[受賞]
- 作品賞 – ショーン・マッキトリック、ジェイソン・ブラム、エドワード・H・ハム・Jr.、ジョーダン・ピール
- 監督賞 – ジョーダン・ピール
- 主演男優賞 – ダニエル・カルーヤ
アカデミー賞では4部門ノミネートし、脚本賞を受賞しております。批評家の方々がかなりの高評価ですが、確かに初監督作品とは思えないクオリティでした。どことなくシャマラン監督を彷彿とさせる雰囲気がありましたねw
あらすじ
アフリカ系アメリカ人の写真家クリス・ワシントンは、白人の彼女ローズ・アーミテージの実家に挨拶へ行く事となった。黒人の自分が受け入れられないのでは?と不安なクリスだったが、アーミテージ家は過剰なほど歓迎ムードで迎え入れてくれた。その夜、クリスは催眠術が得意だというローズの母親と話す事で不気味な体験をする。黒人だらけの使用人や、パーティーに来た奇妙な白人達の言動など、何かがおかしいと気付いたクリスだが果たして・・・?
スタッフ・キャスト
監督・脚本 – ジョーダン・ピール
製作 – ジェイソン・ブラム、ショーン・マッキトリック、エドワード・H・ハム・Jr.、ジョーダン・ピール
クリス・ワシントン – ダニエル・カルーヤ
(幼少期 – ザイランド・アダムス)
ローズ・アーミテージ – アリソン・ウィリアムズ
ミッシー・アーミテージ – キャサリン・キーナー
ディーン・アーミテージ – ブラッドリー・ウィットフォード
ジェレミー・アーミテージ – ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
アンドリュー・ローガン・キング – キース・スタンフィールド
ジョージナ – ベティ・ガブリエル
ウォルター – マーカス・ヘンダーソン
ジム・ハドソン – スティーヴン・ルート
ロッド・ウィリアムス – リル・レル・ハウリー
かなり独特なキャスティングでした!特にベティ・ガブリエルやキース・スタンフィールドの不気味さはすごかったですねw
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 小気味良いテンポと伏線の配置
- 2度の鑑賞をオススメします!
- シニカルに描いた社会風刺
素晴らしい伏線とテンポ
ジョーダン・ピール監督・・・本当に初作品なの?
全く信じられない。冒頭のフックからラストシーンまでよくできてたし本当に面白かった!今作品は一応ジャンルがホラーだけど、内容はミステリー要素の方が強い。物語がどう転がっていくのか?どういうラストになるのか?と、正直かなり引き込まれてしまった。
中でも特筆すべきは脚本だ。
ある黒人が何者かに拉致されてしまうという衝撃の冒頭・・・もうこの時点で今作品は主導権を握っていたように思う。そんな不穏なシーンからスタートされたら、その後に続く幸せそうなクリスとローズのイチャイチャ会話だって、やっぱり疑って観ちゃうよね。でもこれが全く違和感を感じさせないもんだから完全に油断してたところに鹿の登場w
こうした緩急も良かったし、後々できづく事になるけど伏線の配置も素晴らしかった。セリフ内に数多と仕込まれているんだけど初見じゃまずわからない。かなり自然な流れで物語に混ぜ込んでたよ。ちなみに僕はVODで鑑賞したんだけど、観終わった後にすぐ2回目の鑑賞を開始したんだ。
そしたら2回目の方が面白いんだよ、これw
ストーリーを把握した上で観てみたら、なんと上質な脚本か。よくもまあここまで散りばめたものだ。もうね、ほぼ全てのセリフが伏線に感じるほどで自身に呆れるレベル・・・これを全て見逃していたのかとwでは、何故この伏線の乱射撃に気付かなかったのか?
テンポがいいのよw
個人的にはリル・レル・ハウリーが演じる親友ロッド・ウィリアムスを登場させるタイミングが、かなり秀逸だったと思う。この人のコミカルで小気味の良い言い回しが、ホラーやミステリーの要素を相殺してくれているというか・・・いや、完全にのまれた。
ジョーダン・ピール監督は脚本を書く才能も高いのか。
タイトル「ゲット・アウト」の意味とは
中盤に差し掛かると、ある重要人物が重要なセリフを叫ぶ。
「出ていけ」
Get out・・・今作品のタイトルだ。確かに色々な映画で「ゲラゥ!」って聞くよねwこのセリフが叫ばれてからは物語の中核が本性を現してくる。明確に気付く事は難しくても主人公クリスがここにいたらまずいという事は誰でもわかるようになっているのだ。この「何だかわからないけどやばそうな感じ」を引きずったまま直後のオークションシーンを見せられた時、全員が心で叫ぶはずだ。
「逃げ出せ」
これこそがGet outという言葉の持つ別の意味であり、タイトルの真意といえると思う。加えて今作品は白人が黒人に対して持つ潜在的差別意識という社会風刺を内包している。これは完全に僕の勝手な推論だけど、こうした目に見えない差別からは距離を置け、逃げ出せ・・・というメッセージにも感じた。
今作品のブルーレイ・DVDではバットエンドとなる違うバージョンのラストシーンを観る事ができる。ジョーダン・ピール監督は「黒人差別はまだなくなっていない」という事を伝えたかったそうだ。でもあまりにも救いがないと思ってやめたらしい。どちらが良かったのかと問われると難しいし、もちろん人によって意見は様々だろうけど・・・
バットエンドのバージョンの方がより映画史に残ったんじゃないかなと僕は思う。
社会風刺をうまく表現した名作
今作品は黒人差別というアンタッチャブルな問題にかなり踏み込んでいた。
特に印象に残ったのはテレビを通してスティーヴン・ルート演じる盲目の画廊ジム・ハドソンとクリスが話すシーンだ。この時に衝撃の真実を知ったクリスは怒るんじゃなく、呆れるような悲しい顔をする。
「またか・・・」
黒人に対する白人の感情や潜在的な差別意識だったり、黒人を人間と思っていない狂気性など・・・気持ちの悪い白人至上主義にもはや慣れてしまっているクリスがいるのだ。ラストシーンでもクリスはただ疲れただけじゃなく、こうした差別に辟易したような表情を浮かべる。その時に親友ロッド・ウィリアムスが「(俺は)困難に立ち向かう」と言ったのはジョーダン・ピール監督からの差別などに負けないという強いメッセージと言えるだろう。
それにしてもホラー、ミステリー、コメディという様々な要素を盛り込んでいて且つ、エンタメ性に溢れたわかりやすいストーリーとテンポの良い展開で仕上げている上に社会までぶった切ってくるとか・・・改めて思うけど、これが初監督作品ってすごすぎるね。カメラワークも面白かったし、今後も間違いなく要チェックな人だ。ちなみに製作に名を連ねるジェイソン・ブラムはパラノーマル・アクティビティやセッションも製作した名プロデューサーなんだけど、今作品でもまた良い仕事をしたようだ。
最後にチクリとつっこむとすれば、若干ストーリーに強引な部分があったくらい?ただ、こんなトンデモ設定をここまで観やすく作ったのはすごい事だし、むしろ評価に値するかw散々「伏線が~」とか「社会風刺が~」と書いたけど、決して難しくないし気軽に楽しめるからオススメの作品だよ!
評価・鑑賞方法
2作目「アス」も好評!要注目の監督だ
別にダメ出しするようなところじゃないですが、ラストがブルーレイ・DVDのバットエンドバージョンだとしたらもう少し余韻が強く残ったように思いましたね。2作目「アス」も2019年に公開されて大好評のジョーダン・ピール監督・・・今後も映画好きはマストでチェックすべき監督だという事は間違いなさそうです!
「ゲット・アウト」の鑑賞方法
とりあえず上記どちらかで観て、気に入ったらブルーレイやDVDで別エンディングを観るのがいいかもしれませんね!
では、良き映画の時間をお過ごしください。
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