映画「レヴェナント」あらすじ、感想【最後のカメラ目線の意味とは?】

レヴェナント:蘇えりし者

2016年公開。長編映画としては6作目となるアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の映画です。

今作品はアメリカ西部開拓時代を生きた実在の罠猟師ヒュー・グラスの実体験に基づいて描かれていて、実際にグラスがクマに襲われた現場には記念碑が立っています。アドベンチャー、アクション、サスペンス、そして人間ドラマと、様々な要素が詰め込まれた見応えのある作品なので、かなりオススメですよ!

本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想、視聴方法も記載しています。

ジャンル:アクションヒューマンドラマ
作品時間:156分

作品情報

  • 監督賞 – レハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ[受賞]
  • 主演男優賞 – レオナルド・ディカプリオ[受賞]
  • 撮影賞 – エマニュエル・ルベツキ[受賞]
  • 作品賞
  • 助演男優賞 – トム・ハーディ
  • 衣装デザイン賞 – ジャクリーン・ウェスト
  • 編集賞 – スティーヴン・ミリオン
  • メイクアップ&ヘアスタイリング賞 – シアン・グリッグ、ダンカン・ジャーマン、ロバート・パンディーニ
  • 美術賞 – ジャック・フィスク、ハミッシュ・パーディ
  • 音響編集賞 – マーティン・ヘルナンデス
  • 録音賞 – ジョン・テイラー、フランク・A・モンタノ、ランディ・トム、クリス・デュースターディーク
  • 視覚効果賞 – リッチ・マクブライド

アカデミー賞12部門ノミネートはすごすぎますが、ノミネートどころか、もっと受賞してもおかしくなかったレベルだったと思います!ちなみに他の映画賞も根こそぎかっさらってました。

あらすじ

1823年、アメリカ北西部の極寒地帯・・・毛皮ハンターの一団は先住民の襲撃を受け命からがら山中に逃げた。ヒュー・グラスは息子のホークと共にガイドとして同行していたが、途中で熊に襲われ重傷を負ってしまう。隊長のアンドリュー・ヘンリーは瀕死のグラスを見捨てて出発を決断・・・彼の最期を看取る者として息子のホーク、グラスを慕うブリッジャー、そしてグラス親子をよく思わないフィッツジェラルドの3人が残る事になったが果たして・・・。

キャスト、スタッフ

原作 – マイケル・パンク「蘇った亡霊:ある復讐の物語」
監督 – アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本 – マーク・L・スミス、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

撮影 – エマニュエル・ルベツキ
音楽 – 坂本龍一、アルヴァ・ノト

ヒュー・グラス – レオナルド・ディカプリオ
ジョン・フィッツジェラルド – トム・ハーディ

アンドリュー・ヘンリー – ドーナル・グリーソン
ジム・ブリッジャー – ウィル・ポールター

ホーク – フォレスト・グッドラック

アンダーソン – ポール・アンダーソン
マーフィー – クリストッフェル・ヨーネル
スタビー・ビル – ジョシュア・バーグ
エルク・ドッグ – ドウェイン・ハワード
ジョーンズ – ルーカス・ハース
フライマン – ブレンダン・フレッチャー

ディカプリオとトム・ハーディはどちらも素晴らしい演技でしたが、ウィル・ポールターも良い味が出ていたと思います!

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • 圧巻のリアルすぎる描写
  • 説明なくても理解できる映像美
  • 見応え抜群の長回しは必見!

冒頭から熊・・・エグイ緊張感は圧巻!

これこそ映画でしかできない表現だ。

なんだ、この圧倒的にリアルな映像は・・・今作品は俗っぽい演出を一切せず、ただ絶景と壮絶なグラスの生き様を完璧に描いている。状況の説明や登場人物の紹介が少ないから、ストーリーの理解に苦しんだ人もいるかもしれないけど、そんな人でも心にズシっと残る重い余韻があったんじゃないだろうか。

冒頭、水の流れる音と銃撃音だけでいきなり極上の緊張感を漂わせてきた。そこから一気にインディアンと白人たちの戦闘が始まるんだけど、出てくる登場人物が誰なのか、ここはどこなのか、何故戦っているのか・・・全くわからない。そんな名もなき男たちが殺し合うアクションシーンは他の映画と全く違う・・・最高のカメラワークも相まって恐ろしいほど惹き込まれてしまう。そんなカオス状態の中である男が馬を一頭撃ち殺すシーンがあるんだけど、ここで我に返るんだ。

これ映画だった、と。

誇張なんか全然してなくて、本当にすごい引力を持ったフックなんだよ。まさに息を飲む緊張感だった。さて、ここから丁寧な登場人物の紹介でも始まるのかな?と思ったら、そんなものは自然なセリフ回しだけでさらっとやってのけやがった。そこらのエンタメ映画が赤面するかのようなリアルさだ。

そして今作品屈指のシーンとなる熊vsグラス・・・恐ろしく狂暴なグリズリーにグラスがボコボコにされるんだけど、あまりにもリアルすぎる痛々しさに「本物の熊なのかな・・・」と疑うレベルw一体どうやってあの映像が出来たんだ・・・熊が本物じゃないのは冷静に考えればわかるけど、それなら熊に振り回されてたディカプリオの1人演技はなんなんだ!?本当に死にそうになってたぞ!メタに見ても衝撃的なシーンだよ。

待ってくれ、これは心がもたないよ。緊張感がすごすぎて観てるこっちの脳が追い付かないわ!しかも恐ろしい事に冒頭からこの熊のシーンまで30分しか経ってないのだ。

イニャリトゥ監督よ、何故これでアカデミー作品賞とれなかったんだよw

壮絶なサバイバルと絶景の対比

今作品は冒頭から30分だけでも観る価値のある映画だ。

ストーリーは至極シンプルで、主人公グラスが息子を殺したフィッツジェラルドに復讐するというだけ・・・でも見所は山ほどある。3年連続アカデミー撮影賞を受賞したエマニュエル・ルベツキのカメラワークは見応え抜群だし、演じたディカプリオトム・ハーディもキレッキレ、そこに坂本龍一の緩急のある音楽が乗ってくる。その上、自然光のみを使用した映像はえげつない程美しいシーンを作り出していたし、息でカメラのレンズが白く曇ったり血が付いたりした映像を、そのまま使ったイニャリトゥ監督の発想とセンスには脱帽して崇めるレベルだよ。

前述したように今作品は冒頭から息を飲む緊張感がある。この緊張感は最後までしっかり継続していて、本来ならあまりの痛々しさに観ていられないくらい衝撃映像の連続・・・主人公グラスの生死を賭けた壮絶なサバイバルが軸となって描かれているんだけど、特に大きなうねりのあるストーリーではないのに中だるみもなく見応え抜群だ。

特に素晴らしかったのは、グラスの壮絶なサバイバルと絶景が対比になっている点・・・なんというか、この世のものとは思えない壮大な大自然が天国のように感じるんだ。でもそこで這いつくばって生にしがみつくグラスの姿は地獄そのもの・・・驚いたどころじゃない、こんな対比は観た事ないよ。こうしたズルや手抜き一切無しの芯を食った素晴らしい映像が続く中で、自然音だけのシーンと重くて上品な坂本龍一の音楽が流れるシーンが交差する。

映像音楽、そして静寂

完璧すぎる。いや、この映画を評するには完璧のもう1つ上の表現が必要だ。セリフや説明がなくても映像、音楽、俳優の演技が上質すぎると、これほどまでに説得力が出るものなのか・・・恐ろしい傑作だよ。

ラストシーンのカメラ目線

2時間半にも及ぶ密度の濃い今作品・・・最後までしっかりとやばかったよ。

クライマックスはグラスフィッツジェラルドの戦いになるんだけど、ここも変に色気づいた演出などせずに、渋い緊張感を持続しながら淡々と描いていく。そしてラストシーンでディカプリオ演じるグラスは死んだ奥さんの姿を目にして、表情が少し穏やかになったところでカメラ目線になりエンドロール・・・。このラストシーンは解釈がかなりわかれるだろうし正解なんてないだろう。

「生きろ。」

糸井重里が考えたもののけ姫のキャッチコピーだけど、僕は今作品の方が似合うように思えた。熊に襲われ生死を彷徨い、息子を殺した男への復讐も遂げた。家族が全てだったグラスにはもはや生きる意味なんて無いし、天国にいる奥さんの幻影まで見たのに、最後の目には生きる力がみなぎっていたんだよねw

この映画は冒頭である言葉がナレーションされる。

「諦めてはいけない、息が続く限り戦うのだ。

息をしろ、息をし続けろ。」

これを踏まえてラストカットである生き生きとしたグラスのカメラ目線、そこからフェードアウトしてエンドロールで坂本龍一の音楽が流れる手前・・・真っ暗な画面で鳴り響いていたのはグラスの息遣いの音だった。

こんなやべえ映画を観てなかった自分を悔いたよ。イニャリトゥ監督ごめんなさい。もうあなたの作品は見逃さないわ。

評価、視聴方法

イニャリトゥ監督ってどんな人?

今後も目が離せない映画界の最重要人物の1人だと思います。

この方はメキシコ人で、元々はラジオ局のディスクジョッキーや、テレビ番組、コンサートのプロデューサーなどをしていたそうです。2000年にアモーレス・ペロスで長編映画デビューしてからは、新作出す度に称賛されていて映画賞には引っ張りだこ・・・どうやら映画製作に対して超ストイックなようで「撮影を終えた瞬間、出来上がった作品が駄作に見える」との事w確かに作品を重ねるごとに進化していってるようにも思えます。

今作品も間違いなく大傑作なんですが、全編ほぼ1カットで撮られたかのような映像を実現させたバードマンも凄まじかったですよ。元々は今作品で1カット映像をやろうとしたそうなんですが、これくらいで丁度よかったように思いますね。もしこのレヴェナントでそんな事されてたら、僕は泡吹いて倒れちゃってたかもしれませんw

とにかく、今後も新作が出たら絶対にチェックすべき監督の1人だという事は間違いありません!

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「レヴェナント:蘇えりし者」の視聴方法

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レオナルド・ディカプリオの怪演はどれも素晴らしいですが、中でもワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドは超オススメですよ!ブラッド・ピットとのW主演でどちらもめちゃくちゃかっこいいです!

では、良き映画の時間をお過ごしください。