リドリー・スコット監督作品。
松田優作さんは撮影中に自身が癌に侵されている事を知りましたが、延命治療を拒否し撮影を続けた事で癌が腰に転移・・・今作品の公開から1か月後に他界してしまいました。享年40歳・・・つまり遺作となるわけですが、映画と共に心中したとも言われる今作品では相当イカれた狂気の演技をしています。
1本の映画としては少々粗削りではありますが、やっぱり日米の名優の共演に心が躍りますし普通に楽しめますよ!
本記事ではあらすじ、キャスト情報の他に個人的な感想や視聴方法を記載しています。
作品情報
佐藤役のオーディションでは萩原健一、根津甚八、小林薫、世良公則、田代まさし、遠藤憲一などが参加していたそうですよ!しかも実際に演じた松田優作は書類選考の段階で1度落ちたそうですが、日本のスタッフが「そんなレベルの役者じゃない!」と説得した事で実現したそうです。結果的に主役を食ったような怪演になりましたね!
ちなみに作中にある工場の作業員たちが自転車で出勤するシーン、リドリー・スコット監督は日本と中国を混同してるんじゃないかと言われてますが、あれは自転車群をかき分けて追いつけない苛立ちを演出したかった為・・・だそうです。(後付けの可能性はありますがw)
リドリー・スコット監督とは、あのエイリアンを作った人ですよ!たまに大コケする波の荒いところがありますが、個人的には結構好きな監督です。
あらすじ
ニューヨーク市警察本部捜査課の刑事ニック・コンクリンと同僚のチャーリー・ビンセントは、ある日レストランで日本のヤクザの抗争に偶然出くわしてしまう。逃げたヤクザ・佐藤浩史を追跡し何とか逮捕したものの、上層部の判断により日本に強制送還となる。ニックとチャーリーは伊丹空港まで佐藤を護送し日本の警察に身柄を引き渡したが、実は警察を装った佐藤の手下たちだった。そこで大阪府警察の松本正博警部補と共に佐藤の足取りを追うが・・・。
キャスト、スタッフ
監督 – リドリー・スコット
撮影監督 – ヤン・デ・ボン
音楽 – ハンス・ジマー
ニック・コンクリン – マイケル・ダグラス
チャーリー・ビンセント – アンディ・ガルシア
松本正博警部補 – 高倉健
大橋警視 – 神山繁
佐藤浩史 – 松田優作
吉本 – 國村隼
梨田 – 内田裕也
片山 – ガッツ石松
オリヴァー – ジョン・スペンサー
ジョイス – ケイト・キャプショー
菅井国雄 – 若山富三郎
菅井の用心棒 – 安岡力也
菅井の用心棒 – プロフェッサー・タナカ
菅井の子分 – 島木譲二
國村隼?内田裕也??どこに出てるんだよ!と思った方、お気持ちよくわかります。僕もはじめ気づきませんでしたw
ちなみに撮影監督のヤン・デ・ボンはキアヌ・リーヴスの出世作スピードの監督さんですよ!
※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。
感想
- 松田優作が怖すぎる!
- 高倉健がかっこよすぎる!
- ストーリーよりも役者を観る映画
本当に人を殺しそうな眼力
この映画は1にも2にも松田優作だ。
僕もドンピシャのリアルタイム世代ではないんだけど、今では若い世代だと知らない人も増えてきたのかな?太陽にほえろ!のジーパン刑事と言えばわかる?腹を撃たれて「なんじゃこりゃ~!」と叫んだ人wあと松田龍平(長男)と松田翔太(次男)のお父様ね。そんな松田優作がどんな俳優だったのか知りたければ、とりあえずこのブラック・レインを観ればわかると言ってもいい程、今作品ではギラッギラに輝いている。
特に初登場のレストランのシーンは観てるこっちが「あ・・・殺されるかも」と思ってしまうほど恐ろしい。飄々としているのに尋常ではない狂気をまとっていて、どこか人間的じゃない表情・・・今でいうサイコパス感、目的の為なら何でもしそうな超ハードボイルド極悪ヤクザ・・・佐藤。角刈りのツーブロックとかいう、もはや笑いを取りにきてるような髪型なのに、それさえもかっこよく感じてしまう。ダークナイトのジョーカーに匹敵する位、最高のヒールっぷりだ。
誤解してほしくないのはマイケル・ダグラスやアンディ・ガルシアだって全然良かったんだよ。かっこいいし演技も素敵、何の問題もなかった。それに日本の役者だからと贔屓しているわけでもない。ただただ松田優作がやばすぎたんだ。この人がずるいのは演技の他に声もいい。ドスの効いたハスキーボイスで重みがあり、それなのに色気もあるんだよね。今作品の佐藤はこの声がかなりハマっている。
極端な事言うと、今作品は当たり障りない役者が佐藤を演じてたら駄作認定してもいいくらいストーリーが乱雑なんだけど、松田優作の怪演のおかげで最後までハラハラする面白い作品となっている。
松田優作はこの時、体は癌でボロボロ・・・でも映像を見ればわかるよ、そんな弱さは微塵も感じないから。
もう1人のハードボイルド・高倉健
松本正博警部補・通称マサは日本人を絵に描いたようなキャラクターだ。
主人公のニックや相棒のチャーリーがコッテコテのニューヨーカーとして描かれているので、わかりやすい対比となっている。しかしこのマサもまた高倉健じゃない誰かが演じていたら・・・うーん、下手したらゾッとするくらいつまらない映画だったかもしれない。
というのもマサは寡黙で真面目、礼節を重んじるお堅いキャラなのに、しっかりとハードボイルド感がにじみ出ているのだ。何故かと言われたら非常に困る・・・もはや高倉健が演じたからとしか言いようがない。中盤からはマイケル・ダグラス演じるニックと長年相棒を組んできたかのような雰囲気さえ出てくる。
洋画あるあるだけど、昔のハリウッド映画って特に日本や日本人に対してSAMURAI~NINJA~といった変なイメージが先行してるせいか、どうしても少しずれた演出がなされてしまうよね。今作品も少なからず変な描写があるんだけど、マサがちゃんと違和感のない日本人になっているおかげで、しっかりと作品を安定させていたと思う。さすが往年の俳優、高倉健だ。
個人的にはやっぱりラストシーンの笑顔が印象的だったかな~高倉健の笑顔って普段笑うイメージがあまりないからなんかホッコリするんだよねw
2014年に惜しくも他界してしまったけど、リドリー・スコット監督は後にこんな言葉を残してくれたよ。
「お互いにクリスマスカードを送ったり毎年連絡を取りあう仲だった。ブラック・レインの撮影終わりに、彼から貰った編み細工の美しい籠(かご)は今でも大事にとってあるよ。それを見るたびに“ケン・タカクラ”を思い出すんだ。彼はとても優しくて寛大な人だった。撮影で大阪に滞在していた時、右も左も分からなかった僕たちにいつも親切で気持ちよく接してくれた事は今でも忘れられない。懐が深い人で、俳優としてもとても素晴らしい人だった」
粗雑なストーリーはもはやコメディ
日本が誇る2人のレジェンド俳優を紹介したけど、肝心のストーリーはというと・・・
途中いくつか雑な進め方があるのは否めない。例えば冒頭に持ってきた主人公ニックの家庭事情の描写なんか必須ではなかったと思うし、1番イラッとしたのは後半ニックとマサが佐藤の足取りを追うキッカケとなったスパンコールだ。
ニックとマサは佐藤のアジトで見つけたスパンコールから佐藤が関わっているであろうクラブに行き、キャストの姉ちゃんの1人を尾行し始める・・・佐藤発見!
いやいや・・・wいくらなんでもご都合主義すぎる。さすがにリドリー・スコット監督も「これは無理があるか」と感じたのか、ニックとマサのやり取りにこんなセリフを入れている。
マサ「スパンコールドレスを着ている女は他にも大勢いるぞ」
ニック「勘が正しい事もある」
雑すぎるでしょwwさすがにこのセリフだけでは薄まらない。脚本家がこんな脚本持ってきたら破り捨てて蹴りとばしていいと思うよ。さらにクライマックスの銃撃戦もかなり粗雑で、B級感が一気に増してきて萎えるというより笑えてくるレベル。
と、まあストーリーや演出は悲しくなるようなチープさがあるから、どうか期待しないでほしい。ただ・・・それでも面白いのがこの映画なんだよね。その理由は前述した通り、役者が素晴らしいから。
マイケル・ダグラスとアンディ・ガルシアの事はほとんど触れなかったけど・・・2人も本当に良かったよ。(お世辞じゃないよw)
ただ松田優作と高倉健という日本の至宝がヤバすぎただけさ。
評価、視聴方法
松田優作という役者
リドリー・スコット監督は松田優作という役者に驚いたんじゃないかと思います。
今作品のラストシーンはニックが佐藤を殺すエンディングも撮影されていました。しかし「こんな魅力的なキャラクターを殺すのは惜しい」というリドリー・スコット監督の想いから、もう一方の逮捕するシナリオが選ばれたそうですよ。それ程、強烈な演技をした松田優作・・・40歳は若すぎますよね。どうしてもif…もし生きていたらと考えてしまいます。
ちなみ昔は一重瞼で整形して二重にしたそうなんですが、お金があまりない時代に手術した事で抜糸の時はまた高額なお金が必要だと思い、自分で鏡を見て抜糸したそうですw(実際は抜糸までが手術費用に含まれていたらしく、相当後悔したとの事。)
松田優作は今作品の制作中で既に演技の評判が広まっていたので、次回作としてロバート・デ・ニーロ出演予定の作品のオファーがきていたそうです!もし実現していたらどんな映画になったんでしょうね。まさか公開1か月後に他界してしまうなんて・・・この映画がもとで親交を深めたアンディ・ガルシアも彼の死を悼んだと言われています。
松田優作だけじゃなく、今では高倉健も若山富三郎も安岡力也も天国に行っちゃいましたが、是非これを機に往年のスター達の演技を体感してみてはいかがでしょうか?ストーリーはだめな部分があると書きましたが、彼らの演技を見るだけで楽しめる事は約束しますよ!
「ブラック・レイン」の視聴方法
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松田優作の息子さんである松田龍平主演の舟を編むも超オススメの1本です!
では、良き映画の時間をお過ごしください。