映画「桐島、部活やめるってよ」あらすじ、感想【主題歌も秀逸!心に突き刺さる超名作】

桐島、部活やめるってよ

2012年公開。吉田大八監督による青春群像劇です。

今作品は高校生を描いていますが、年齢関係なく全ての人の心に突き刺さってしまう痛烈なメッセージを持っており、人によっては鑑賞後に恐ろしく強い余韻が残ります。ネットでも十人十色の様々な批評が飛び交ってますが、賛でも否でも誰かに感想を話したくなる映画№1ではないでしょうか。

本記事ではあらすじ、キャスト・スタッフ情報の他に、個人的な感想、視聴方法も記載しています。

ジャンル:青春ヒューマンドラマ
作品時間:103分

作品情報

  • 最優秀作品賞[受賞]
  • 最優秀監督賞 – 吉田大八[受賞]
  • 最優秀編集賞 – 日下部元孝[受賞]
  • 優秀脚本賞 – 吉田大八、喜安浩平
  • 新人俳優賞優秀賞 – 橋本愛、東出昌大
  • 話題賞/作品部門

アカデミー賞は納得の3部門受賞、この完成度で作品賞と監督賞をとれなかったらクレーム入れるレベルだと思いますw他にも様々な映画祭や媒体で高い評価を受けました。

あらすじ

学生達が個々の時間を過ごすある高校の放課後、彼らにとって衝撃的なニュースが校内を駆け巡った。何日も休んでいた学校のスター・桐島がバレー部をやめたというのだ。たったそれだけの事で右往左往する学生達の人間関係は、少しずつズレが生じ始めていく。人生の岐路に立つ彼らは、果たしてどこに向かっていくのか・・・?

キャスト、スタッフ

監督 – 吉田大八
脚本 – 喜安浩平、吉田大八
原作 – 朝井リョウ

主題歌 – 高橋優陽はまた昇る

▼映画部
前田涼也 – 神木隆之介
武文 – 前野朋哉

▼帰宅部
菊池宏樹 – 東出昌大
寺島竜汰 – 落合モトキ
友弘 – 浅香航大

▼カースト上位の女子4人組
東原かすみ – 橋本愛
飯田梨紗 – 山本美月
野崎沙奈 – 松岡茉優
宮部実果 – 清水くるみ

▼バレー部
久保孝介 – 鈴木伸之
小泉風助 – 太賀

▼テナーサックス女子
沢島 亜矢 – 大後寿々花

▼野球部
キャプテン – 高橋周平

エンドロールのクレジットでは、あるキャラクターに仕掛けがあります。この映画の中核とも言えるのですが、是非探してみてください。

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

 

 

感想

  • 全ての人に突き刺さる劇薬映画
  • 圧巻のリアリティで描く人間模様
  • とどめを刺してくる高橋優の声

ただの青春群像劇ではない

この超名作は恐ろしいほど静かに始まる。

インパクトのあるフックなど無く、冒頭からありふれた高校の日常と、学生達の他愛もない会話をただ淡々と映してくる。

個性溢れる様々なキャラクターが出てくるけど、中核をなすのは2人・・・神木隆之介が演じる映画部部長・前田東出昌大演じる桐島の親友・宏樹だ。ざっくり言えば前田はクラスで目立たない陰キャで、宏樹はスクールカースト最上位の陽キャである。放課後、前田は親友の武文や映画部の後輩達と自主制作映画の撮影をしながら過ごす。一方、宏樹はいつものメンツとバレー部である桐島の練習が終わるまで、バスケをしながら過ごしている。いつしか学校に来なくなっていた桐島が、久しぶりに登校したと噂が流れた。しかもバレー部をやめたというのだ。

それがどうした!

まだこの映画を観ていない人はそう思うかもしれないw確かにこうして書いてみると何の変哲もないストーリーだ。別にカリスマ性のある不良が出てくるわけじゃないし、煌びやかな恋愛を描いているわけでもない。ただただリアルな高校生を描いている。

じゃあリアルに描いた事が名作と言われる理由なのか?

もちろんそれも1つと言えるけど、今作品の本当に素晴らしい点は別にある。まず超リアルに描いた事で、観た人それぞれに青春の日々を思い出させてくれる。作中の誰かと自身を重ね合わせて、観る人に「自分もこんな感じだったなー」と共感させてくれるんだ。例えば友達と遊んだ楽しい日々を思い出す人もいれば、告白してふられたむず痒い瞬間を思い出す人もいるだろう・・・または部活の毎日だった人、バイトに励んだ人、友達はいなかったけど壮大な夢に向かって頑張った人などなど・・・まさに十人十色の青春だ。

そして、この共感こそが今作品最大の仕掛けになっていると僕は思う。

決して共感できたから良いというわけじゃない。中には自身と重なるキャラクターがいなかった人もいるだろうし、そもそも高校に行かなかった人だっているだろう。でもこの映画はそんな人達も見逃さない・・・しっかりと全ての人の心にナイフを突き刺してくる。青春群像劇の化けの皮を被ってるけど、そんな生ぬるいもんじゃない。

この映画は劇薬だ。

誰の心にも突き刺さってしまう理由

今作品は特殊なキャラクターが2人いる。

まず映画部部長の前田、そしてもう1人は宏樹・・・ではなく野球部のキャプテンだ。前田とキャプテンは2人とも周りの目や意見なんかでは全くぶれない。自分の好きな事を全力で楽しんでいる。映画部の連中も、前田の引き立て役の立ち位置だからあまり気にしなくていいけど、この2人と同じ類だ。

一方、他のキャラクター達はというと、明確な夢や目標を持っていない・・・もっと言えばそんな自分自身の状況に気付いてもいない。一見仲良さそうなスクールカースト上位の女子4人組は彼氏持ちというアイデンティティにしがみついてる梨紗沙奈、そんな2人に嫌われないように過ごす実果かすみ、バレーに打ち込んでるように見えるけど、桐島という巨大なカリスマの影に振り回されている久保風助、宏樹に恋をしてサックスに集中できない亜矢・・・帰宅部の宏樹竜汰友弘は言うまでもない。

確かに彼らも彼らなりの青春を謳歌している。ただ、それは好きなものに打ち込んでいる前田やキャプテンの放つ光に気付かないから謳歌できているんだ。今作品が恐ろしいのは、これが別に高校生だけじゃなく全ての人に当てはまってしまう点だと思う。高校に行かなかった人だろうが歳を重ねて社会的地位を得ていようが関係ない。

「君はどのキャラクターに似てる?」

冒頭から淡々とリアルな高校生を描き、こんな問いかけをしてるように見せかけて・・・実のところは全く違う。

「君は夢や目標を持って生きた事ある?」

まるで笑顔でぶん殴られた気分だ。終盤、前田にレンズ越しで見られた宏樹はまさにこの問いかけをされてしまったのだ。最後、宏樹が桐島に電話をかけようとするシーンなんか見てられない・・・頼むから携帯を捨てて目の前のグラウンドに走っていってくれよ!と。こんなえげつないラストからエンドロールに流れた高橋優の曲はさらに追い打ちをかけてきた。

唄い出しの歌詞は「自分だけが置いてきぼりを食らってるような気がする

圧巻のラスト!まさにこの映画を唄った主題歌

クライマックスの屋上シーンは素晴らしい。

映画って積み木に似てると僕は思う。少しずつ丁寧に積み重ねて何かを形成していき、クライマックスでその完成形を見せてくれる感じ。その完成した姿が作品によってイマイチだったり美しかったりする。でも好みがあるから映画の感想は人それぞれになるんだろう。何にしても、その完成形が観ている人の求めていた形になっていた時、カタルシスを感じた!なんて表現したりするんじゃないかなと思う。

屋上のシーンはまさにカタルシスを感じる事ができる。カースト最下層の前田が上位のクラスメイトを次々と倒していく。中身がカラッポの彼らでは、壮大な夢や目標を持つ前田の放つ光に耐えられない。中にはその光で少しだけ我に返る者もいたけど、殆どは光に気付きもしない。「ざまあみろ!」と思った人も多いんじゃないかな。まさにカタルシス・・・実に映画らしく素晴らしいクライマックスだった。でもこれで終わってたら僕も超名作とまでは言わない。

今作品がどうして超名作なのか?何故観た人に大きな余韻を残すのか・・・

それは、この最高のカタルシスを感じるクライマックスの後・・・気持ちよくなっている観客に、吉田監督はラストシーンでジレンマという爆弾を投げつけてきたんだ。でも、この爆弾は宏樹の涙を理解できなかった人には爆発しない仕掛けになっている。恐ろしいのは、夢や目標を持ち本気で打ち込んでる前田やキャプテンみたいな人はマイノリティだという事・・・つまり大多数の人は宏樹と同じく爆弾を投げつけられた事を理解しても何もできない。

「君は夢や目標を持って生きた事ある?」

僕は「やめてくれ!」と叫びたくなったねw呆然自失の中で聴かされた高橋優の「陽はまた昇る」は、えげつないくらい心に突き刺さったよ。そこらのバッドエンド映画では相手にならない。吉田監督はなんて恐ろしい映画を作ってくれたんだ。

むかつくけど、超面白かったよ。

評価

もう1度頑張ろうと思える名作

この完成度は邦画最高峰と言っていいと思います!

あまりにも内容が濃密な映画なので感想には書きませんでしたけど、特に俳優陣のきめ細やかな演技はリアリティがあるどころではありませんでした。ちなみに東出昌大は600人のオーディションを勝ち抜いて、今作品が映画デビュー作となったそうです。彼は決して演技が上手とは言えませんが、そのあどけなさが今作品の宏樹というキャラクターにピッタリでしたし、ラストシーンは最高でした!あと桐島というキャラクターで最後まで引っ張るというのも、すごすぎますwいつ出てくるんだろう?という期待が最後まで継続しますもんね。

この映画は前述したように沢山の人の心を抉ると思います。ですが、1度は観る事をオススメしますよ!これまでの人生を振り返るのは辛い時もありますけど「これからはもう少しだけ頑張ろう」と思わせてくれる素敵な映画である事はお約束します。ちなみに僕は感情移入できるキャラクターはいませんでしたが、めっちゃくちゃ心にぶっ刺さりましたw

間違いなく観て良かったと思っていますし、またいつか観たいですね。

「桐島、部活やめるってよ」の視聴方法

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同じく高校生の青春を切り取った作品ならセトウツミなんてどうですか?今作品とは真逆で頭カラッポにして楽しめる面白いコメディですよ!吉田大八監督が気になったなら紙の月もオススメです。

では、良き映画の時間をお過ごしください。