映画「キル・ビルVol.1」あらすじ、感想【栗山千明も大暴れ?オマージュ満載の復讐劇】

キル・ビル

クエンティン・タランティーノ監督の4作目となる作品。

キル・ビルは2部作となっており、Vol.1公開から約半年後にVol.2が公開されました。

日本公開版だとオープニングで「この映画を偉大なる監督、深作欣二に捧ぐ」とテロップが入っており、エンドロールでは深作欣二勝新太郎の名前もあります。

ちなみに日本で一番興行収入が良かったタランティーノ作品でして、公開当時はルーシー・リューの「ヤッチマイナァ!」という名台詞が日本で話題になりました。

今回、久しぶりに鑑賞したので感想を交えつつ今作品を紹介していきます!

[ジャンル]クライムアクション
[作品時間]113分
[公開日]米:2003/10/10,日本:2003/10/25

作品情報

予告動画

あらすじ

妊娠を機に殺し屋稼業から足を洗ったザ・ブライドは結婚式のリハーサルの最中、属していた組織のボスであるビルとその配下である4人の殺し屋から襲撃を受ける。婚約者である夫と参列者たちが殺され、妊娠していた彼女も凄惨なリンチにより、4年間の昏睡状態に陥るほどの重傷を負わされ、胎内の子を奪われる。昏睡から目覚めたザ・ブライドは、ビルと4人の殺し屋への復讐に向けて動き始める。(引用:wikipedia)

スタッフ・キャスト

スタッフ

[監督・脚本] クエンティン・タランティーノ

[美術] 種田陽平、デビッド・ワスコ

[音楽] RZA ラーズ・ウルリッヒ

[剣術指導] 千葉真一

[武術指導] ユエン・ウーピン

[殺陣] 島口哲朗

[アニメーション] プロダクションI.G

[アニメパート/監督] 中澤一登

キャスト

[ザ・ブライド] ユマ・サーマン

[ビル] デビッド・キャラダイン

[オーレン・イシイ] ルーシー・リュー

[ヴァニータ・グリーン] ヴィヴィカ・A・フォックス

[服部半蔵] 千葉真一

[シロー/半蔵の弟子] 大葉健二

[GOGO夕張] 栗山千明

[ジョニー・モー] ゴードン・ラウ

[ソフィ・ファタール] ジュリー・ドレフュス

[田中親分] 國村隼

[小澤親分] 麿赤児

[弁田親分] 菅田俊

[本田親分] 大門伍朗

[小路親分] 北村一輝

[クレイジー88] 田中要次、真瀬樹里、高橋一生、北村一輝、クエンティン・タランティーノなど

[エル・ドライバー] ダリル・ハンナ

[バド] マイケル・マドセン

[アール・マクグロウ] マイケル・パークス

※ここからは若干ネタバレがあるのでご注意ください。

感想

キル・ビル2

あえて外すタランティーノの遊び心

これはタランティーノ監督が作った馬鹿馬鹿しいB級映画だ。

主役は青い瞳に金髪をなびかせるユマ・サーマン様。そんな絶世の美女にブルース・リーのコスプレをさせて、日本刀片手に片言の日本語を叫ばせるとか一体どういうつもりなのか。それでも絵になるんだからすごいけども。

レジェンド・千葉真一なんか沖縄でまずい寿司を握らされてる・・・「はーい、らっしゃい!」じゃねえんだよ!何がサムライソードだ、ふざけやがって。栗山千明に至っては女子高生の恰好して鉄球ぶん回してたぞ。

製作費30億円・・・。

悪ふざけも大概にしろよw飛行機内のシーンではどいつもこいつも日本刀持ってるし、プッシーワゴンとかいうくっそ下品な車の中でユマ・サーマンの生足をドアップで撮影・・・しかもあの車はタランティーノの自前だっていうじゃないか!!

他にもオキナワとプリントされたTシャツや、バイクに乗って新宿を疾走するブライド、部下を引き連れたルーシー・リューの和服姿に、眼帯つけたナース服のダリル・ハンナ・・・3次会の泥酔状態で考え付いたような馬鹿馬鹿しいシーンの連続なのに、どれもこれも脳に焼き付いて仕方ない。

キル・ビル6

よくもまあ、ここまでツッコミどころ満載の映画を作ったもんだ。おかげでクライマックスの舞台となった西麻布の和食レストレン・権八なんか、ファンが今でも世界中から聖地巡礼しにくる始末。

何が面白いの?タランティーノ作品っていうから観たのに全然つまらなかった。

わかるよ・・・こき下ろしたくなる人の気持ち、よくわかるよ。期待を胸に鑑賞した結果、あまりのB級っぷりにつまらないを通り越して苛立ちを覚えた人も少なくないと思う。でもね・・・腹立つ事に何度か観ているとジワジワ笑いがこみあげてくるのよ。5回目くらいには爆笑しちゃうのよ。

レザボア・ドッグスパルプ・フィクションジャッキー・ブラウン・・・

この監督の初期3作品はいずれも映画史に残る傑作揃い。映画の文法を知り尽くしているクエンティン・タランティーノ監督だからこそ作れたと言っても過言じゃない。そんな知識と技術とセンス、そして映画愛に溢れた天才が30億円もかけて本気でB級に仕上げたのが今作品なのだ。

しかもそこらのB級映画と違って、しっかりと記憶に残る作品に仕上がってるのがまた腹立つ。

気が付けば虜だよ。なんて腹立たしく魅力的な映画なんだ。

実験したとしか思えない音楽の使い方

タランティーノ作品の魅力の一つに音楽がある。

いつもお洒落で独特な選曲をするけど、今作品はかなり実験的に感じた。特にクライマックスのアクションシーンに至っては、様々な曲を乗っけてやりたい放題だ。

タラ「次はこの曲のせてみてよ!」

編集「こんなん合うわけないでしょww」

さぞ選曲してる最中は楽しかっただろうよwもちろん僕の妄想だけど、あながち外してない気もする。それにしてもガレージロックから演歌まで・・・ルーシー・リューとの最終決戦なんか手拍子が始まったと思ったら、まさかの70’sディスコが飛び出してきた。

恐ろしいのは何故か合ってるというか・・・どのシーンもめっちゃくちゃかっこいいのよね。中には「ふざけるな!」とつっこみたくなる選曲もあるんだけど、それらも含めて昔の香港映画のような渋さと愛らしさが滲み出てくる。

キル・ビル5

布袋寅泰さんのテーマ曲もまたいいね。今聴いても全然色褪せないしイントロのギターのミュート音とかたまんない。ちなみに作中ではルーシー・リューがクレイジー88のメンバーを引き連れて歩いてくるシーンで使われてるんだけど、その雑魚キャラの中に高橋一生さんもいるからファンの人は探してみてね。

The 5.6.7.8’sWoo Hooなんかも中毒性あるしノリも最高に好き。この曲は今作品以降、様々なテレビ番組で使われる事が増えたし今でも耳にする事がある。ちなみにタランティーノ監督が来日した際に偶然生演奏を見た事がキッカケで起用となったらしい。

どんだけアンテナ立ててるんだろ・・・感服するわ。

オマージュの元ネタを漁る事のススメ

今作品では様々な映画のオマージュが見られる。

もはやタランティーノ作品全てに言える事だけど、このキル・ビルはほとんどのシーンがオマージュと言えるほど濃厚なシーンの連続・・・タランティーノの好きなもので満ち溢れてる状態。我らが日本の映画やドラマもたくさん詰め込まれているよ。

「元ネタの映画とか全然知らないんだけど・・・」

そんな人も気にしないで楽しめるように作ってくれてるのがタランティーノさん。ただ、元ネタを実際に観てみたり、その時代の関連作品をさらに漁ってみると本当に楽しいよ。例えば昔の香港映画なんかはタランティーノ監督の好みをかなり強く感じる事ができると思う。

今作品でも一番はじめに「SHAW SCOPE」と書いてある真ん中に「SB」という文字が出てくるんだけど、あれはショウブラザーズという香港で黄金時代を築いた映画製作会社のロゴ。ちなみにSHAW SCOPE(ショウスコープ)というのはショウブラザーズが開発した横長のスクリーンの事。

ちなみにクレイジー88のリーダーでスキンヘッドのジョニー・モーという役を演じてるゴードン・ラウさん。日本ではリュー・チャーフィーという名前の方が有名な俳優で、この人が主役を演じた少林寺三十六房という映画はタランティーノ監督が「カンフー映画史上最高の3本に入る」とまで評価してるんだけど、これを作ったのがショウブラザーズなんだ。昔のカンフー映画でしょ?なんて舐めてたら面白すぎて度肝抜かれると思うよ!僕も大好きだ。

キル・ビル3

オマージュは実写映画だけじゃない。

今作品には途中アニメーションパートがあるけど、作っているのはProduction I.Gなんだ。タランティーノ監督は日本のアニメであるBLOOD THE LAST VAMPIRE攻殻機動隊のファンだから、どうしてもProduction I.Gに作って欲しかったらしく・・・国分寺にある事務所にアポなしで直談判しに行ったんだって!

あと今作品のオープニングでも名前が出てくるけど、我らが日本の巨匠・深作欣二監督のファンでもあるタランティーノさん。過去には深作さんを自宅に招いて、深作作品である柳生一族の陰謀を一緒に観たらしい。

もはや痛いファンの代表みたいな事ばかりしてるよねw

ただ世界的な監督であるクエンティン・タランティーノが、日本映画をこんなに愛してくれてるってだけで素直に嬉しいと思うのは僕だけじゃないはず。

奇しくも今作品の公開直前に亡くなってしまった深作欣二さん・・・でも天国で「ばかじゃねーのw」って笑いながらこの映画を観たと思う。あの人もたまに馬鹿馬鹿しいのに面白い映画を作る人だったしw

チープな映像なのに大真面目な俳優陣、大味なのに夢中になる物語・・・まさに昔の香港映画や日本映画が持つ異様で魅力的な一面だ。その雰囲気をここまで忠実に再現しながらも、しっかりとタランティーノ色に染めているのは心から驚嘆する。

というわけで、はじめに書いた通り今作品は間違いなくB級映画だ。でもタランティーノ監督が自分の好きな映画への愛とリスペクトを込めて、本気で作ったという事も同時にわかって欲しい。

今では今作品をオマージュしたかのような演出が、世界中に溢れているというのも改めてすごすぎるよ。

評価・視聴方法

キル・ビル4

タランティーノの好みが一番詰まってる映画

今作品の評価
物語・テーマ
(3.0)
配役・演技
(4.0)
演出(音楽/映像/etc)
(3.5)
観やすさ
(3.0)
余韻
(3.0)
総合評価
(3.0)

タランティーノ作品の中でもかなり尖った映画ですね。スプラッター映画は今作品から始まったと言われるほどエグい描写もあるので、間違いなく好みは別れると思います。ただタランティーノの好みが高濃度で反映された作品なので一度は観る事をおすすめしますよ!

ちなみにUSバージョンと日本バージョンだと音楽が少し違いますが、ストーリーやオチが違うという事はないのでご安心ください。

タランティーノ作品のランキング記事はこちら↓

タランティーノ監督おすすめ映画 ファンが選ぶタランティーノ映画おすすめランキング【最新作含む全10作】

「キル・ビル」の視聴方法

残念ながら現在VODサービスで視聴する方法はないので、DVD・ブルーレイの購入もしくはレンタルをオススメします。(※2021/4/15調べ)

キル・ビルはVol.1、Vol.2と繋がっている物語なので、まだ観た事が無い方は二作品続けて観て欲しいですね。Vol.2はまた違う魅力が詰まっていますよ!

では、良き映画の時間をお過ごしください。


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